数学3 定積分・面積 問題 250 解説

方針・初手
与えられた連立不等式の表す領域を図示し、その面積を $t$ の関数として定式化する。
$t=0$ のとき、連立不等式は $x^2+y^2 \leqq 1$ かつ $x^2+y^2 \geqq 1$ となり、これを満たす領域は円周上の点のみで面積は $0$ となる。 $t=1$ のとき、$(x-1)^2+y^2 \leqq 0$ かつ $x^2+y^2 \geqq 1$ となり、点 $(1,0)$ のみで面積は $0$ となる。 したがって、面積が最大になる $t$ は $0 < t < 1$ の範囲にあるとしてよい。
以下、$0 < t < 1$ とし、領域を構成する2つの不等式を次のように定める。
$$\begin{cases} C_1 : (x-t)^2 + y^2 \leqq 1-t^2 \\ C_2 : x^2 + y^2 \geqq 1 \end{cases}$$
$C_1$ は中心 $(t,0)$、半径 $\sqrt{1-t^2}$ の円の内部および周を表し、$C_2$ は中心 $(0,0)$、半径 $1$ の円の外部および周を表す。まずはこれら2つの境界線の交点を求め、領域の形状を正確に把握する。
解法1
$C_1$ の境界となる円 $(x-t)^2 + y^2 = 1-t^2$ と、$C_2$ の境界となる円 $x^2 + y^2 = 1$ の交点を求める。 第2式から $y^2 = 1 - x^2$ とし、これを第1式に代入する。
$$(x-t)^2 + 1 - x^2 = 1-t^2$$
展開して整理すると、
$$x^2 - 2tx + t^2 + 1 - x^2 = 1 - t^2$$
$$-2tx = -2t^2$$
$t \neq 0$ より、$x = t$ を得る。 これを $y^2 = 1 - x^2$ に代入すると、$y = \pm\sqrt{1-t^2}$ となる。 したがって、2円の交点は $(t, \sqrt{1-t^2})$ と $(t, -\sqrt{1-t^2})$ である。
直線 $x=t$ は $C_1$ の中心を通るため、$C_1$ の領域を左半円 ($x \leqq t$) と右半円 ($x \geqq t$) に二等分する。 領域 $C_1$ 内の点について、$x \leqq t$ のとき、
$$\begin{aligned} x^2 + y^2 &= (x-t)^2 + y^2 + 2tx - t^2 \\ &\leqq (1-t^2) + 2tx - t^2 \\ &= 1 + 2t(x-t) \end{aligned}$$
$t > 0$ かつ $x \leqq t$ であるから $2t(x-t) \leqq 0$ となり、$x^2+y^2 \leqq 1$ が成り立つ。 これは $C_1$ の左半円が完全に $C_2$ の境界円の内部に含まれることを意味し、条件 $x^2+y^2 \geqq 1$ を満たさない。
次に $x \geqq t$ の範囲を考える。 $C_1$ の右半円の境界は $x = t + \sqrt{1-t^2-y^2}$、円 $x^2+y^2=1$ の右側の境界は $x = \sqrt{1-y^2}$ と表される。 両者の大小を比較するため、平方の差をとる。
$$\begin{aligned} (t + \sqrt{1-t^2-y^2})^2 - (\sqrt{1-y^2})^2 &= t^2 + 2t\sqrt{1-t^2-y^2} + (1-t^2-y^2) - (1-y^2) \\ &= 2t\sqrt{1-t^2-y^2} \geqq 0 \end{aligned}$$
よって $t + \sqrt{1-t^2-y^2} \geqq \sqrt{1-y^2}$ が成り立つ。 これは、$C_1$ の右半円が、直線 $x=t$ と円 $x^2+y^2=1$ で囲まれる弓形を完全に含むことを示している。
以上の考察から、求める領域は「$C_1$ の右半円」から「直線 $x=t$ と円 $x^2+y^2=1$ で囲まれる右側の弓形」を取り除いた部分となる。 領域の面積を $S(t)$ とすると、$C_1$ の半径は $\sqrt{1-t^2}$ であるから、
$$S(t) = \frac{\pi}{2}(1-t^2) - \int_{t}^{1} 2\sqrt{1-x^2} dx$$
と表せる。$S(t)$ を $t$ で微分する。微積分学の基本定理より $\frac{d}{dt} \int_{t}^{1} 2\sqrt{1-x^2} dx = -2\sqrt{1-t^2}$ であるから、
$$S'(t) = -\pi t + 2\sqrt{1-t^2}$$
$S'(t) = 0$ とすると、
$$\pi t = 2\sqrt{1-t^2}$$
両辺は正であるから、2乗して整理する。
$$\pi^2 t^2 = 4(1-t^2)$$
$$(\pi^2 + 4)t^2 = 4$$
$t > 0$ より、$t = \frac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$ を得る。 $0 < t < 1$ における $S(t)$ の増減表は次のようになる。
| $t$ | $0$ | $\cdots$ | $\frac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$ | $\cdots$ | $1$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $S'(t)$ | $+$ | $0$ | $-$ | ||
| $S(t)$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
したがって、$S(t)$ は $t = \frac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$ のとき最大となる。
解法2
領域の形状を特定し、面積 $S$ を求める段階までは解法1と同様である。 ここでは、弓形の面積を積分ではなく扇形の面積を用いて幾何的に求め、置換積分のように角度を変数として微分する。
原点を $\mathrm{O}$、2円の交点を $\mathrm{P}(t, \sqrt{1-t^2})$、$\mathrm{Q}(t, -\sqrt{1-t^2})$ とする。 線分 $\mathrm{OP}$ が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\theta$ とおく。 交点は $x^2+y^2=1$ 上にあるため、$\cos\theta = t$、$\sin\theta = \sqrt{1-t^2}$ である。 $0 < t < 1$ に対応して、$0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ である。
扇形 $\mathrm{O}-\mathrm{PQ}$ の中心角は $2\theta$ であり、その面積は $\frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot 2\theta = \theta$ である。 二等辺三角形 $\mathrm{OPQ}$ の面積は $\frac{1}{2} \cdot 2\sqrt{1-t^2} \cdot t = t\sqrt{1-t^2} = \cos\theta\sin\theta$ である。 したがって、取り除くべき弓形の面積は $\theta - \cos\theta\sin\theta$ と表せる。
$C_1$ の右半円の面積は $\frac{\pi}{2}(1-t^2) = \frac{\pi}{2}\sin^2\theta$ であるから、領域の面積 $S$ は $\theta$ の関数として次のように表せる。
$$S(\theta) = \frac{\pi}{2}\sin^2\theta - (\theta - \cos\theta\sin\theta)$$
$S(\theta)$ を $\theta$ で微分する。
$$\begin{aligned} S'(\theta) &= \pi\sin\theta\cos\theta - 1 + (\cos^2\theta - \sin^2\theta) \\ &= \pi\sin\theta\cos\theta - 1 + (1 - 2\sin^2\theta) \\ &= \pi\sin\theta\cos\theta - 2\sin^2\theta \\ &= \sin\theta(\pi\cos\theta - 2\sin\theta) \end{aligned}$$
$0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ において $\sin\theta > 0$ であるから、$S'(\theta) = 0$ となるのは $\pi\cos\theta - 2\sin\theta = 0$ のときである。 すなわち $\tan\theta = \frac{\pi}{2}$ のときである。 このとき $\theta$ の前後で $S'(\theta)$ は正から負へと符号を変えるため、$S(\theta)$ は極大かつ最大となる。
$\tan\theta = \frac{\pi}{2}$ を満たすとき、$t = \cos\theta$ を求める。 $1 + \tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}$ より、
$$\frac{1}{\cos^2\theta} = 1 + \left(\frac{\pi}{2}\right)^2 = \frac{\pi^2+4}{4}$$
$$\cos^2\theta = \frac{4}{\pi^2+4}$$
$0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ より $\cos\theta > 0$ であるから、$t = \cos\theta = \frac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$ を得る。
解説
図形と方程式、および微積分の融合問題である。 最初に関係式から領域を正しく図示できるかが最大の鍵となる。交点を求めた後、「$C_1$ の左半円が $C_2$ に含まれること」「$C_1$ の右半円が $C_2$ の弓形を包含すること」を式で論証できると、数学的に穴のない解答になる。 面積の式を立てた後の微分計算については、解法1のように積分表示のまま微積分学の基本定理を用いる手法が簡潔で計算ミスを防ぎやすい。一方、解法2のように角度 $\theta$ を用いて立式する手法は、円の面積計算における典型的な処理であり、図形的意味を見失いにくいという利点がある。
答え
$t = \frac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$
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