数学3 定積分・面積 問題 266 解説

方針・初手
(1)は定積分における置換積分法と、積分区間の対称性を利用する典型的な証明問題である。被積分関数 $f(x-2)$ の変数を置換し、与えられた条件式 $f(x)+f(-x) \geqq 2f(0)$ を活用できる形へ変形する。 (2)は(1)の結果をうまく利用する。積分 $\int_1^3 \frac{1}{x} dx$ を(1)の左辺 $\int_1^3 f(x-2) dx$ の形と見立てて $f(x)$ を決定し、その関数が(1)の条件を満たすことを確認する。最後に定積分の性質と $e$ の定義を用いて不等式を導く。
解法1
(1)
与えられた定積分 $\int_{1}^{3} f(x-2) dx$ について、$t = x-2$ とおく。 $x$ と $t$ の対応は以下のようになる。 $x : 1 \to 3$ $t : -1 \to 1$
また、$dt = dx$ であるから、置換積分法により以下が成り立つ。
$$\int_{1}^{3} f(x-2) dx = \int_{-1}^{1} f(t) dt$$
右辺の積分区間を分割する。
$$\int_{-1}^{1} f(t) dt = \int_{-1}^{0} f(t) dt + \int_{0}^{1} f(t) dt$$
第1項 $\int_{-1}^{0} f(t) dt$ について、$u = -t$ とおくと、$du = -dt$ であり、積分区間は $t : -1 \to 0$ から $u : 1 \to 0$ へと変わる。
$$\int_{-1}^{0} f(t) dt = \int_{1}^{0} f(-u) (-du) = \int_{0}^{1} f(-u) du$$
積分変数を $t$ に書き直すと、
$$\int_{-1}^{0} f(t) dt = \int_{0}^{1} f(-t) dt$$
したがって、元の定積分は次のように変形できる。
$$\begin{aligned} \int_{1}^{3} f(x-2) dx &= \int_{0}^{1} f(-t) dt + \int_{0}^{1} f(t) dt \\ &= \int_{0}^{1} \{ f(t) + f(-t) \} dt \end{aligned}$$
ここで、問題の条件より $-1 \leqq t \leqq 1$ の範囲で $f(t) + f(-t) \geqq 2f(0)$ が成り立つ。当然、積分区間である $0 \leqq t \leqq 1$ においてもこの不等式は成り立つ。両辺を $0$ から $1$ まで定積分すると、
$$\int_{0}^{1} \{ f(t) + f(-t) \} dt \geqq \int_{0}^{1} 2f(0) dt$$
右辺を計算する。
$$\int_{0}^{1} 2f(0) dt = \left[ 2f(0)t \right]_{0}^{1} = 2f(0)$$
よって、次が示された。
$$\int_{1}^{3} f(x-2) dx \geqq 2f(0)$$
(2)
(1)の不等式において、$\int_{1}^{3} f(x-2) dx$ が $\int_{1}^{3} \frac{1}{x} dx$ に一致するように $f(x)$ を定める。
$$f(x-2) = \frac{1}{x}$$
$t = x-2$ とおくと $x = t+2$ であるから、
$$f(t) = \frac{1}{t+2}$$
とする。この関数 $f(x) = \frac{1}{x+2}$ が(1)の条件を満たすか確認する。 $-1 \leqq x \leqq 1$ において、$x+2 > 0$ であるから $f(x)$ は連続関数である。 また、
$$\begin{aligned} f(x) + f(-x) &= \frac{1}{x+2} + \frac{1}{-x+2} \\ &= \frac{(2-x) + (x+2)}{(2+x)(2-x)} \\ &= \frac{4}{4-x^2} \end{aligned}$$
ここで $-1 \leqq x \leqq 1$ より $0 \leqq x^2 \leqq 1$ であるから、分母は $3 \leqq 4-x^2 \leqq 4$ となる。 したがって、$\frac{4}{4-x^2} \geqq \frac{4}{4} = 1$ が成り立つ。 一方、
$$2f(0) = 2 \cdot \frac{1}{0+2} = 1$$
であるから、$-1 \leqq x \leqq 1$ の範囲で $f(x) + f(-x) \geqq 2f(0)$ を満たしている。 よって(1)の結果が適用でき、
$$\int_{1}^{3} \frac{1}{x} dx \geqq 1$$
が成り立つ。 ここで、$e$ の定義から $\int_{1}^{e} \frac{1}{x} dx = 1$ であるため、
$$\int_{1}^{3} \frac{1}{x} dx \geqq \int_{1}^{e} \frac{1}{x} dx$$
$$\int_{1}^{3} \frac{1}{x} dx - \int_{1}^{e} \frac{1}{x} dx \geqq 0$$
$$\int_{e}^{3} \frac{1}{x} dx \geqq 0$$
$x > 0$ において被積分関数 $\frac{1}{x} > 0$ であるから、定積分の値が $0$ 以上になるためには、積分区間の下限が上限以下でなければならない。 ゆえに、
$$e \leqq 3$$
が示された。
解説
本問は自然対数の底 $e$ が $3$ より小さいことを積分を用いて証明する有名なテーマである。(1)の抽象的な関数の不等式証明は、区間 $[-a, a]$ における積分の有名性質 $\int_{-a}^{a} f(x) dx = \int_{0}^{a} \{f(x) + f(-x)\} dx$ を背景としている。関数の偶奇性などに着目する際にもよく現れる変形である。 (2)では「(1)の結果をいかに利用するか」が問われている。求める式に含まれる積分 $\int_{1}^{e} \frac{1}{x} dx = 1$ と、(1)の左辺 $\int_{1}^{3} f(x-2) dx$ の形を見比べ、積分区間 $[1, 3]$ を揃えるために被積分関数を同一視して $f(x)$ を設定する発想が鍵となる。関数が定まった後は、それが(1)の前提条件を満たしていることを忘れずに確認する必要がある。
答え
(1) 置換積分と積分区間の分割により、$\int_{1}^{3} f(x-2) dx = \int_{0}^{1} \{ f(t) + f(-t) \} dt$ へと変形でき、与えられた不等式条件から題意の不等式が成り立つことが示された。
(2) $f(x) = \frac{1}{x+2}$ とおくと(1)の条件を満たすことが確認でき、(1)を適用することで $\int_{1}^{3} \frac{1}{x} dx \geqq 1$ を得る。$e$ の定義式と比較することで、$e \leqq 3$ が示された。
自分の記録
誤りを報告
問題文の写しミス、解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。





