京都大学 1997年 文系 第4問 解説

方針・初手
- 右辺の積分 $\int_0^1 (ax+b)^2 dx$ を計算して、$a$ と $b$ の式で表します。
- 左辺の最大値 $M(a,b)$ を求めます。関数 $y = (ax+b)^2$ は下に凸のグラフ($a=0$ のときは直線)であるため、閉区間における最大値は必ず端点でとることに着目します。
- 与えられた不等式が「任意の $a, b$ に対して成り立つ」条件を、$(a, b) \neq (0,0)$ のもとで $m \geqq \frac{M(a,b)}{\int_0^1 (ax+b)^2 dx}$ の形に変形し、右辺の最大値を求める問題に帰着させます。
- 右辺は $a, b$ についての0次同次式(分母分子ともに2次式)になるため、$t = \frac{a}{b}$ とおいて1変数の関数に帰着させて最大値を求めます。
解法1
不等式 $(*)$ の右辺の定積分を計算する。
$$ \int_0^1 (ax+b)^2 dx = \int_0^1 (a^2 x^2 + 2abx + b^2) dx = \left[ \frac{a^2}{3}x^3 + abx^2 + b^2x \right]_0^1 = \frac{a^2}{3} + ab + b^2 $$
次に、不等式の左辺の $M(a,b)$ を求める。 関数 $y = (ax+b)^2$ のグラフは下に凸の放物線($a=0$ のときは水平な直線)であるから、閉区間 $0 \leqq x \leqq 1$ における最大値は、区間の両端 $x=0$ または $x=1$ のいずれかでとる。 $x=0$ のとき $y = b^2$ であり、$x=1$ のとき $y = (a+b)^2$ である。 したがって、最大値 $M(a,b)$ は
$$ M(a,b) = \max\{b^2, (a+b)^2\} $$
と表せる。 以上より、不等式 $(*)$ は次のように書き換えられる。
$$ \max\{b^2, (a+b)^2\} \leqq m \left( \frac{a^2}{3} + ab + b^2 \right) \quad \cdots (1) $$
$(a,b) = (0,0)$ のとき、(1)式は $0 \leqq m \cdot 0$ となり、任意の実数 $m$ について成り立つ。 $(a,b) \neq (0,0)$ のとき、右辺の括弧内は
$$ \frac{a^2}{3} + ab + b^2 = \frac{1}{3} \left( a + \frac{3}{2}b \right)^2 + \frac{1}{4}b^2 > 0 $$
となるため、(1)式は次のように変形できる。
$$ m \geqq \frac{\max\{b^2, (a+b)^2\}}{\frac{a^2}{3} + ab + b^2} $$
不等式 $(*)$ が任意の $a, b$ について成り立つための実数 $m$ の最小値は、$(a,b) \neq (0,0)$ における右辺の関数の最大値に等しい。これを求める。
$b=0$ のとき、$a \neq 0$ であり、
$$ \frac{\max\{0, a^2\}}{\frac{a^2}{3}} = \frac{a^2}{\frac{a^2}{3}} = 3 $$
となる。
$b \neq 0$ のとき、分母分子を $b^2 (>0)$ で割り、$t = \frac{a}{b}$ とおくと、
$$ f(t) = \frac{\max\{1, (t+1)^2\}}{\frac{1}{3}t^2 + t + 1} = \frac{3 \max\{1, (t+1)^2\}}{t^2 + 3t + 3} $$
となる。$t$ は任意の実数をとりうる。この $f(t)$ の最大値を場合分けして調べる。
(i) $(t+1)^2 \leqq 1$ すなわち $-2 \leqq t \leqq 0$ のとき $\max\{1, (t+1)^2\} = 1$ であるから、
$$ f(t) = \frac{3}{t^2 + 3t + 3} = \frac{3}{\left( t + \frac{3}{2} \right)^2 + \frac{3}{4}} $$
分母は $t = -\frac{3}{2}$ のとき最小値 $\frac{3}{4}$ をとる。$t = -\frac{3}{2}$ は区間 $-2 \leqq t \leqq 0$ に含まれるため、この区間での $f(t)$ の最大値は $\frac{3}{\frac{3}{4}} = 4$ である。
(ii) $(t+1)^2 > 1$ すなわち $t < -2$ または $t > 0$ のとき $\max\{1, (t+1)^2\} = (t+1)^2$ であるから、
$$ f(t) = \frac{3(t+1)^2}{t^2 + 3t + 3} = \frac{3(t^2 + 2t + 1)}{t^2 + 3t + 3} = 3 \left( 1 - \frac{t+2}{t^2 + 3t + 3} \right) $$
ここで、$g(t) = \frac{t+2}{t^2 + 3t + 3}$ とおき、$g(t)$ の増減を調べる。
$$ g'(t) = \frac{1 \cdot (t^2 + 3t + 3) - (t+2)(2t + 3)}{(t^2 + 3t + 3)^2} = \frac{-t^2 - 4t - 3}{(t^2 + 3t + 3)^2} = \frac{-(t+1)(t+3)}{(t^2 + 3t + 3)^2} $$
$g'(t) = 0$ となるのは $t = -1, -3$ である。 区間 $t < -2$ において、$g'(t)$ の符号は $t=-3$ を境に負から正へと変化する。したがって、$g(t)$ は $t=-3$ で極小かつ最小となる。 最小値は $g(-3) = \frac{-3+2}{(-3)^2 + 3(-3) + 3} = \frac{-1}{3}$ である。 このとき $f(t)$ は最大となり、その値は $f(-3) = 3 \left( 1 - \left(-\frac{1}{3}\right) \right) = 3 \times \frac{4}{3} = 4$ である。
一方、区間 $t > 0$ においては、$t+2 > 0$ かつ $t^2 + 3t + 3 > 0$ より $g(t) > 0$ である。 したがって、$f(t) = 3(1 - g(t)) < 3$ となり、最大値 $4$ には及ばない。
以上 (i), (ii) および $b=0$ の場合から、$f(t)$ の取りうる最大値は $4$ である。 ゆえに、求める $m$ の最小値は $4$ である。
解説
- 2変数の不等式が常に成り立つ条件を求める問題では、文字を減らすことが基本方針となります。本問のように分母分子の次数が等しい(同次式)場合は、一方の文字で割って比率($t = \frac{a}{b}$)を変数とする1変数の関数に帰着させる手法が極めて有効です。
- 「下に凸の関数が閉区間で最大値をとる場所は端点である」という性質は、絶対値や2次関数の絡む最大・最小問題で頻繁に用いられます。これを記述せずに頂点の位置などで場合分けをすると、計算量と記述量が膨大になってしまいます。
- (ii) の微分計算において、分子をそのまま展開して商の微分をするよりも、分子の次数を下げてから微分する(あるいは部分分数分解のような形を作る)方が、計算ミスを防ぎやすくなります。
答え
$$ 4 $$
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