京都大学 1998年 文系 第5問 解説

方針・初手
9個の玉から3個を取り出す組み合わせの総数を分母とし、得点となる玉の条件を正しく把握することが第一歩です。 問題文の「同色のものが他になく、同番号のものも他にない」とは、取り出した3個の中で「色がユニーク」かつ「番号がユニーク」であることを意味します。 (1) はこの条件を満たす玉の個数(0個〜3個)ごとに場合分けして数え上げます。特に「2個だけが条件を満たすことはあり得るか」を論理的に考えることがポイントです。 (2) は (1) の結果を用いて定義通りに期待値を計算しますが、期待値の線形性(和の期待値は期待値の和)を利用する別解も非常に有効です。
解法1
(1)
9個の玉から同時に3個を取り出す選び方の総数は、次の通りである。
$$ {}_{9}\mathrm{C}_{3} = \frac{9 \times 8 \times 7}{3 \times 2 \times 1} = 84 \text{(通り)} $$
ある玉が「得点になる(条件を満たす)」とは、取り出した3個の玉の中でその玉の色がただ1つであり、かつ番号もただ1つであることを意味する。
- $A(3)$ について 3個の玉すべてが得点になる場合である。 これは、3個の玉の色がすべて異なり、かつ番号もすべて異なる場合を指す。 まず、3個の玉の色は青、赤、白の3色で確定する。 次に、青の玉の番号の選び方は $1, 2, 3$ の3通りある。 赤の玉の番号は、青の玉の番号以外の2通り。 白の玉の番号は、残りの1通りとなる。 したがって、次のように計算できる。
$$ A(3) = 3 \times 2 \times 1 = 6 \text{(通り)} $$
- $A(2)$ について 3個のうち、2個だけが得点になる場合である。 この2個の玉(玉X, 玉Yとする)は条件を満たすため、互いに色が異なり、番号も異なる。 残りの1個の玉(玉Zとする)は条件を満たさない。 もし玉Zの色が玉Xと同じであれば、玉Xは「同色のものが他にない」という条件を満たさなくなり、玉Xが得点にならなくなってしまう。玉Yと色が同じ場合も同様である。したがって、玉Zの色は玉X, 玉Yのどちらとも異ならなければならない。 番号についても全く同じ理由で、玉Zの番号は玉X, 玉Yのどちらとも異ならなければならない。 すると、玉Zは玉X, 玉Yと色も番号も異なることになり、玉Z自身も「色も番号もユニーク」という条件を満たしてしまう。 つまり、2個だけが条件を満たす状況は存在しない。
$$ A(2) = 0 $$
- $A(1)$ について 3個のうち、1個だけが得点になる場合である。 得点になる1個の玉(玉Xとする)の選び方は、9個の玉から1つ選ぶので9通りある。 残りの2個の玉(玉Y, 玉Zとする)は、玉Xと色も番号も異なっていなければならない。玉Xと色も番号も異なる玉は、残り2色 $\times$ 残り2番号 $= 4$ 個存在する。 玉Y, 玉Zはこの4個の中から選ばれるが、どちらも「得点にならない」状態である必要がある。 玉Yと玉Zは玉Xとは色も番号も被っていないため、玉Yと玉Zが条件を満たさなくなる唯一の理由は、「玉Yと玉Z自身の間で色が同じである」か「玉Yと玉Z自身の間で番号が同じである」ことのいずれかである。 4個の玉から2個を選ぶ組み合わせ(${}_{4}\mathrm{C}_{2} = 6$ 通り)のうち、
(i) 同色のペアを選ぶ方法は、2通り(2色それぞれについて1組ずつ)
(ii) 同番号のペアを選ぶ方法は、2通り(2番号それぞれについて1組ずつ)
これらは重複しないため、玉Xを固定したときの玉Y, 玉Zの選び方は $2 + 2 = 4$ 通りとなる。
$$ A(1) = 9 \times 4 = 36 \text{(通り)} $$
- $A(0)$ について すべての組み合わせの総数から、$A(3), A(2), A(1)$ を引けばよい。
$$ \begin{aligned} A(0) &= 84 - (A(3) + A(2) + A(1)) \\ &= 84 - (6 + 0 + 36) \\ &= 42 \end{aligned} $$
(2)
(1) の結果より、得点の期待値 $E$ は次のように計算できる。
$$ \begin{aligned} E &= \frac{0 \times A(0) + 1 \times A(1) + 2 \times A(2) + 3 \times A(3)}{84} \\ &= \frac{0 \times 42 + 1 \times 36 + 2 \times 0 + 3 \times 6}{84} \\ &= \frac{36 + 18}{84} \\ &= \frac{54}{84} \\ &= \frac{9}{14} \end{aligned} $$
解法2
(2) の別解:期待値の線形性を用いる方法
袋の中の9個の玉それぞれについて、「その玉が取り出され、かつ得点になる(色も番号もユニークである)」確率を考える。
特定の1個の玉(例えば「青の1」)に注目する。 この玉が取り出されて、かつ得点になるためには、残り2個の玉が「青以外の色」かつ「1以外の番号」の玉から選ばれればよい。 「青以外の色」かつ「1以外の番号」の玉は、赤2, 赤3, 白2, 白3の計4個である。 この4個の玉から2個をどのように選んでも、選ばれた2個の色が被ろうが番号が被ろうが、「青の1」の色と番号がユニークであるという事実は揺るがない。 したがって、「青の1」が得点となるような残り2個の選び方は、次の通りである。
$$ {}_{4}\mathrm{C}_{2} = 6 \text{(通り)} $$
9個の玉から3個を取り出す総数は ${}_{9}\mathrm{C}_{3} = 84$ 通りであるから、「青の1」が得点になる確率は $\frac{6}{84} = \frac{1}{14}$ である。 これは他の8個の玉についても全く同様である。
得点は「条件を満たす玉の個数の和」であるから、期待値の線形性(和の期待値は期待値の和)により、全体の期待値は各玉が得点になる確率の総和となる。
$$ E = 9 \times \frac{1}{14} = \frac{9}{14} $$
解説
「他に同色・同番号がない玉の個数」という条件の解釈がすべてです。特に $A(2)=0$ となること(3個中2個だけが条件を満たすことは構造上あり得ないこと)に気づけるかが計算量と正確性を左右します。 また、(2)の期待値については、解法1のように確率分布をすべて求めてから定義通りに計算するのが王道ですが、解法2のように「期待値の線形性」を利用すると非常に鮮やかに答えを出すことができます。確率はそれぞれ排反でなくても和の期待値に分解できるという性質は、難関大の確率問題で強力な武器になります。
答え
(1)
$A(0) = 42$ $A(1) = 36$ $A(2) = 0$ $A(3) = 6$
(2)
$\frac{9}{14}$
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