京都大学 1997年 理系 第5問 解説

方針・初手
- 各作戦に従ったときの「Aの得点」と「Bの得点」がとりうる値と、その確率分布をそれぞれ丁寧に調べます。
- (1) では、求めた確率分布から期待値 $E_A, E_B$ をそれぞれ計算し、不等式 $E_A > E_B$ を解いて $p$ の範囲を求めます。
- (2) では、Aが勝つ確率 $P_A$ とBが勝つ確率 $P_B$ を求めます。起こりうるすべての得点の組み合わせを網羅して確率を計算し、$P_A - P_B$ の符号と (1) で求めた $p$ の条件とを比較して、命題の真偽を判定します。
解法1
(1)
1回の試行で「1」を引く確率は $p$、「3」を引く確率は $1-p$ である。
作戦Aによる得点 $X_A$ の確率分布を求める。
- 2回目まで「1, 1」と引くとき(合計2、確率 $p^2$)、3回目を引く。
- 3回目に「1」のとき、合計3(得点3)。確率は $p^2 \cdot p = p^3$
- 3回目に「3」のとき、合計5(得点5)。確率は $p^2 \cdot (1-p) = p^2(1-p)$
- 2回目まで「1, 3」または「3, 1」と引くとき(合計4、確率 $2p(1-p)$)、3回目を引かず得点は4。確率は $2p(1-p)$
- 2回目まで「3, 3」と引くとき(合計6、確率 $(1-p)^2$)、3回目を引かず得点は6。確率は $(1-p)^2$
したがって、Aの期待値 $E_A$ は、
$$ E_A = 3 \cdot p^3 + 4 \cdot 2p(1-p) + 5 \cdot p^2(1-p) + 6 \cdot (1-p)^2 $$
これを展開して整理する。
$$ E_A = 3p^3 + 8p(1-p) + 5p^2 - 5p^3 + 6(1-2p+p^2) $$
$$ E_A = -2p^3 + 3p^2 - 4p + 6 $$
作戦Bによる得点 $X_B$ の確率分布を求める。
- 2回目まで「1, 1」と引くとき(合計2、確率 $p^2$)、3回目を引く。
- 3回目に「1」のとき、合計3(得点3)。確率は $p^3$
- 3回目に「3」のとき、合計5(得点5)。確率は $p^2(1-p)$
- 2回目まで「1, 3」または「3, 1」と引くとき(合計4、確率 $2p(1-p)$)、3回目を引く。
- 3回目に「1」のとき、合計5(得点5)。確率は $2p(1-p) \cdot p = 2p^2(1-p)$
- 3回目に「3」のとき、合計7となるため得点0。確率は $2p(1-p) \cdot (1-p) = 2p(1-p)^2$
- 2回目まで「3, 3」と引くとき(合計6、確率 $(1-p)^2$)、3回目を引かず得点は6。確率は $(1-p)^2$
したがって、Bの期待値 $E_B$ は、
$$ E_B = 0 \cdot 2p(1-p)^2 + 3 \cdot p^3 + 5 \cdot \{p^2(1-p) + 2p^2(1-p)\} + 6 \cdot (1-p)^2 $$
$$ E_B = 3p^3 + 15p^2(1-p) + 6(1-2p+p^2) $$
$$ E_B = -12p^3 + 21p^2 - 12p + 6 $$
条件 $E_A > E_B$ より、
$$ -2p^3 + 3p^2 - 4p + 6 > -12p^3 + 21p^2 - 12p + 6 $$
$$ 10p^3 - 18p^2 + 8p > 0 $$
$$ 2p(5p^2 - 9p + 4) > 0 $$
$$ 2p(5p - 4)(p - 1) > 0 $$
$0 < n < N$ より $0 < p < 1$ であるから、$p > 0$ かつ $p - 1 < 0$ である。 したがって、不等式が成り立つための条件は $5p - 4 < 0$ である。
$$ 0 < p < \frac{4}{5} $$
(2)
Aが勝つ確率を $P_A$、Bが勝つ確率を $P_B$ とする。 (1) より、各得点の確率分布を $a_k = P(X_A = k), b_k = P(X_B = k)$ とおくと、 $a_3 = p^3, a_4 = 2p(1-p), a_5 = p^2(1-p), a_6 = (1-p)^2$ $b_0 = 2p(1-p)^2, b_3 = p^3, b_5 = 3p^2(1-p), b_6 = (1-p)^2$
Aが勝つ ($X_A > X_B$) のは以下の組み合わせである。
- $X_A = 3$ のとき、$X_B = 0$
- $X_A = 4$ のとき、$X_B \in \{0, 3\}$
- $X_A = 5$ のとき、$X_B \in \{0, 3\}$
- $X_A = 6$ のとき、$X_B \in \{0, 3, 5\}$
Bが勝つ ($X_A < X_B$) のは以下の組み合わせである。
- $X_B = 5$ のとき、$X_A \in \{3, 4\}$
- $X_B = 6$ のとき、$X_A \in \{3, 4, 5\}$
ここで、$a_6 = b_6 = (1-p)^2$ であり、それぞれが勝つ確率のうち「一方が6点を取り、他方が6点未満である確率」は等しくなるため、差をとる際に相殺される。 よって、$P_A - P_B$ は次のように計算できる。
$$ P_A - P_B = b_0(a_3+a_4+a_5) + b_3(a_4+a_5) - b_5(a_3+a_4) $$
$a_3+a_4+a_5 = 1 - a_6 = p(2-p)$ などの関係を用いて代入し、整理する。
$$ P_A - P_B = 2p(1-p)^2 \cdot p(2-p) + p^3 \cdot p(1-p)(2+p) - 3p^2(1-p) \cdot p(p^2-2p+2) $$
$$ = p^2(1-p) \{ 2(1-p)(2-p) + p^2(2+p) - 3p(p^2-2p+2) \} $$
$$ = p^2(1-p) ( 4 - 6p + 4p^2 - 2p^3 ) = 2p^2(1-p) ( -p^3 + 5p^2 - 6p + 2 ) $$
$$ = 2p^2(1-p)^2(p^2 - 4p + 2) $$
$0 < p < 1$ において $2p^2(1-p)^2 > 0$ であるから、$P_A > P_B$ が成り立つ条件は $p^2 - 4p + 2 > 0$ である。 $p^2 - 4p + 2 = 0$ の解は $p = 2 \pm \sqrt{2}$ であり、$0 < p < 1$ と合わせると、 $P_A > P_B$ となる $p$ の条件は $0 < p < 2 - \sqrt{2}$ である。
ここで、(1) で求めた $E_A > E_B$ となる条件は $0 < p < \frac{4}{5}$ である。 $2 - \sqrt{2} \approx 0.586 < \frac{4}{5}$ であるため、たとえば $p = \frac{3}{5}$ のとき、$E_A > E_B$ は満たすが、$p^2 - 4p + 2 < 0$ となるため $P_A < P_B$ となる。 したがって、「$E_A > E_B$ ならば $P_A > P_B$」であるとはいえない。
解説
- 確率分布、期待値、および大小関係の確率を正確に計算する問題です。試行回数が限られているため、樹形図をイメージして漏れなく確率を算出しましょう。
- 「期待値が高い方が、勝率も高いはずだ」という直感に反する結果を示す、確率論におけるパラドックス(非推移的ダイスなど)を背景とした興味深いテーマです。
- 勝率の差分 $P_A - P_B$ を計算する際、得点「6」が絡む部分が対称であることに気付くと、計算量を大きく削減できます。
答え
(1)
$E_A = -2p^3 + 3p^2 - 4p + 6$ $E_B = -12p^3 + 21p^2 - 12p + 6$ 条件: $0 < p < \frac{4}{5}$
(2)
いえない。(反例が存在するため)
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











