九州大学 1975年 文系 第1問 解説

方針・初手
(1) は3正数における相加平均と相乗平均の大小関係を示す有名不等式である。因数分解の恒等式 $a^3+b^3+c^3-3abc = (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)$ を利用して証明するのが定石である。
(2) は3角形の面積 $S$ と周の長さ $l$ の関係について最大値を求める問題である。面積 $S$ を3辺の長さで表すためにヘロンの公式を利用し、現れた式に対して(1)で証明した不等式を適用して上からの評価を行う。
解法1
(1)
$x, y, z$ は正の数であるから、$x=a^3, y=b^3, z=c^3$ となる正の数 $a, b, c$ が存在する。
与式の左辺と右辺の差を考えると、
$$\frac{x+y+z}{3} - \sqrt[3]{xyz} = \frac{a^3+b^3+c^3}{3} - abc = \frac{1}{3}(a^3+b^3+c^3-3abc)$$
ここで、因数分解の公式を用いて変形すると、
$$\begin{aligned} \frac{1}{3}(a^3+b^3+c^3-3abc) &= \frac{1}{3}(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \\ &= \frac{1}{3}(a+b+c) \cdot \frac{1}{2} \{ (a^2-2ab+b^2) + (b^2-2bc+c^2) + (c^2-2ca+a^2) \} \\ &= \frac{1}{6}(a+b+c) \{ (a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \} \end{aligned}$$
$a>0, b>0, c>0$ より $a+b+c>0$ であり、また実数の2乗は0以上であるから $(a-b)^2 \geqq 0, (b-c)^2 \geqq 0, (c-a)^2 \geqq 0$ である。 したがって、
$$\frac{1}{6}(a+b+c) \{ (a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \} \geqq 0$$
が成り立つ。よって、
$$\frac{x+y+z}{3} \geqq \sqrt[3]{xyz}$$
が示された。等号が成立するのは $a=b=c$、すなわち $x=y=z$ のときである。
(2)
3角形の3辺の長さを $a, b, c$ とする。周の長さは $l = a+b+c$ である。
ヘロンの公式より、$s = \frac{a+b+c}{2} = \frac{l}{2}$ とすると、3角形の面積 $S$ は
$$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$$
両辺を2乗して $l$ を用いて表すと、
$$\begin{aligned} S^2 &= s(s-a)(s-b)(s-c) \\ &= \frac{l}{2} \left(\frac{l}{2}-a\right) \left(\frac{l}{2}-b\right) \left(\frac{l}{2}-c\right) \end{aligned}$$
ここで、3角形の成立条件より $a+b > c$ であるから、両辺に $c$ を加えて $a+b+c > 2c$ すなわち $l > 2c$ となり、$\frac{l}{2}-c > 0$ が成り立つ。 同様にして、$\frac{l}{2}-a > 0, \frac{l}{2}-b > 0$ も成り立つ。
したがって、これら3つの正の数 $\frac{l}{2}-a, \frac{l}{2}-b, \frac{l}{2}-c$ に対して (1) の不等式を適用すると、
$$\frac{ \left(\frac{l}{2}-a\right) + \left(\frac{l}{2}-b\right) + \left(\frac{l}{2}-c\right) }{3} \geqq \sqrt[3]{ \left(\frac{l}{2}-a\right) \left(\frac{l}{2}-b\right) \left(\frac{l}{2}-c\right) }$$
左辺の分子は $\frac{3}{2}l - (a+b+c) = \frac{3}{2}l - l = \frac{l}{2}$ となるため、
$$\frac{l}{6} \geqq \sqrt[3]{ \left(\frac{l}{2}-a\right) \left(\frac{l}{2}-b\right) \left(\frac{l}{2}-c\right) }$$
両辺は正であるから、3乗して不等号の向きは変わらない。
$$\frac{l^3}{216} \geqq \left(\frac{l}{2}-a\right) \left(\frac{l}{2}-b\right) \left(\frac{l}{2}-c\right)$$
両辺に $\frac{l}{2} (>0)$ を掛けると、
$$\frac{l^4}{432} \geqq \frac{l}{2} \left(\frac{l}{2}-a\right) \left(\frac{l}{2}-b\right) \left(\frac{l}{2}-c\right)$$
右辺は $S^2$ に等しいので、
$$\frac{l^4}{432} \geqq S^2$$
両辺を $l^4 (>0)$ で割ると、
$$\frac{S^2}{l^4} \leqq \frac{1}{432}$$
$S>0, l>0$ であるから、平方根をとって
$$\frac{S}{l^2} \leqq \frac{1}{\sqrt{432}} = \frac{1}{12\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}}{36}$$
等号が成立するのは、(1) の等号成立条件より
$$\frac{l}{2}-a = \frac{l}{2}-b = \frac{l}{2}-c$$
すなわち $a=b=c$ のときであり、これは3角形が正三角形であることを意味する。
解説
3変数の相加・相乗平均の不等式の証明と、その幾何的応用をテーマにした標準的な問題である。
(1)の不等式証明では、恒等式 $a^3+b^3+c^3-3abc = (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)$ を用いる手法が最も簡明である。この因数分解は頻出であるため、平方完成を用いた符号の判定まで含めて確実に再現できるようにしておきたい。
(2)では、ヘロンの公式を利用して面積を3辺の長さで表現し、相加・相乗平均の不等式を使える形に帰着させる。不等式を適用する前に、「対象となる数が正であること」を三角形の成立条件を用いて言及する論理的厳密性が求められる。等周問題(周の長さが一定の多角形の中で面積が最大となるものを探す問題)の一種であり、結果として正三角形が面積を最大にすることは直感的にも妥当である。
答え
(1) 解法1の通り証明される。
(2) 最大値は $\frac{\sqrt{3}}{36}$ であり、最大値をとるのは正三角形である。
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