九州大学 2000年 文系 第5問 解説

方針・初手
正五角形の性質(すべての内角が $108^\circ$ であること)を利用し、図形内に現れる三角形の角度を順に求めていくことで、合同や相似を示します。 後半の面積比較では、面積の値を直接求めるのではなく、基準となる三角形の面積と黄金比 $\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2}$ を用いて各部分の面積を相対的に表すことで、計算の見通しを良くします。
解法1
(1)
正五角形の一つの内角は $180^\circ \times (5-2) / 5 = 108^\circ$ である。 $\triangle ABC$ は $AB=BC$ の二等辺三角形であるから、底角は等しく、
$$\angle BAC = \angle BCA = \frac{180^\circ - 108^\circ}{2} = 36^\circ$$
同様に、$\triangle BCD$ についても $\angle CBD = 36^\circ$ である。 したがって、$\triangle ABF$ において、
$$\angle FAB = \angle BAC = 36^\circ$$
$$\angle ABF = \angle ABC - \angle CBD = 108^\circ - 36^\circ = 72^\circ$$
$$\angle AFB = 180^\circ - (36^\circ + 72^\circ) = 72^\circ$$
となる。$\angle ABF = \angle AFB$ より $\triangle ABF$ は二等辺三角形であり、$AF = AB$ が成り立つ。
次に、$\triangle AFH$ について考える。 $\triangle ACD$ は $AC=AD$ の二等辺三角形であり、$\angle CAD = 108^\circ - 2 \times 36^\circ = 36^\circ$ である。したがって $\angle FAH = 36^\circ$ となる。 また、対称性から $\triangle CDE$ は $\triangle ABC$ と合同であり、$\angle DCE = 36^\circ$ である。 $\triangle ACH$ において、$\angle CAH = \angle CAD = 36^\circ$ であり、
$$\angle ACH = \angle BCD - \angle BCA - \angle DCE = 108^\circ - 36^\circ - 36^\circ = 36^\circ$$
よって $\triangle ACH$ は $AH = CH$ の二等辺三角形である。 さらに $\triangle CDH$ について、$\angle DCH = \angle DCE = 36^\circ$、$\angle CDH = \angle CDA = 108^\circ - 36^\circ = 72^\circ$ であるから、
$$\angle CHD = 180^\circ - (36^\circ + 72^\circ) = 72^\circ$$
よって $\triangle CDH$ も二等辺三角形であり、$CH = CD = AB$ となる。 これらより、$AH = CH = AB$ が成り立つ。
以上より、$\triangle AFH$ と $\triangle ABF$ において、 $AF$ は共通、 $AH = AB$、 $\angle FAH = \angle FAB = 36^\circ$ となり、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいから、$\triangle ABF \equiv \triangle AFH$ が示された。
(2)
$\triangle ABC$ の面積を $S$ とおき、各図形の面積を $S$ と黄金比 $\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2}$ を用いて表す。 正五角形の対角線の長さは一辺の $\phi$ 倍である。すなわち $AC = \phi AB$ である。 また、$\phi$ は $\phi^2 - \phi - 1 = 0 \iff \phi^2 = \phi + 1$ を満たす。
$\triangle ABJ$ について、$\angle JAB = \angle JBA = 36^\circ$ より $\angle AJB = 108^\circ$ であり、$\triangle ABJ \sim \triangle BCA$ である。 対応する最大の辺の比を考えると、相似比は $AB : AC = 1 : \phi$ となる。 面積比は $1 : \phi^2$ となるので、$\triangle ABJ$ の面積を $S_1$ とすると、
$$S_1 = \frac{1}{\phi^2} S$$
となる。
次に、五角形 $FGHIJ$ の面積 $S_2$ を求める。 $FGHIJ$ も正五角形であり、大正五角形 $ABCDE$ と相似である。相似比を求めるため、対角線 $AC$ 上の線分 $FJ$ の長さを考える。 $A, J, F, C$ はこの順に並んでおり、$AJ$ は $\triangle ABJ$ の等辺であるから、相似比より $AJ = \frac{1}{\phi} BC = \frac{1}{\phi} AB$ である。 対称性から $FC = \frac{1}{\phi} AB$ でもある。 よって、小正五角形の一辺 $FJ$ は、
$$FJ = AC - AJ - FC = \phi AB - \frac{2}{\phi} AB = \left( \phi - \frac{2}{\phi} \right) AB$$
ここで $\frac{1}{\phi} = \phi - 1$ より、$\phi - \frac{2}{\phi} = \phi - 2(\phi - 1) = 2 - \phi$。 また、$(2-\phi)\phi^2 = 2\phi^2 - \phi^3 = 2(\phi+1) - (2\phi+1) = 1$ より $2-\phi = \frac{1}{\phi^2}$ である。 したがって、$FJ = \frac{1}{\phi^2} AB$ となり、2つの正五角形の相似比は $1 : \phi^2$、面積比は $1 : \phi^4$ である。
大正五角形 $ABCDE$ の面積 $S_{all}$ を求める。
$$S_{all} = S_{ABC} + S_{ACD} + S_{ADE}$$
ここで、$\triangle ABC$ と $\triangle ADE$ の面積はともに $S$ である。 $\triangle ACD$ の面積は、底辺を $CD$、$\triangle ABC$ の底辺を $AB$ とみたとき、それぞれの高さの比は相似な二等辺三角形の相似比 $AC : AB = \phi : 1$ と等しくなるため、面積も $\phi$ 倍となる。 したがって、$S_{ACD} = \phi S$ となり、
$$S_{all} = 2S + \phi S = (\phi + 2) S$$
これより、五角形 $FGHIJ$ の面積 $S_2$ は、
$$S_2 = \frac{1}{\phi^4} S_{all} = \frac{\phi+2}{\phi^4} S$$
$S_1$ と $S_2$ を比較する。
$$\frac{S_2}{S_1} = \frac{\phi+2}{\phi^2} = \frac{\phi+2}{\phi+1} = 1 + \frac{1}{\phi+1} > 1$$
よって $S_2 > S_1$ となり、五角形 $FGHIJ$ の面積のほうが大きい。
(3)
星形 $AJBFCGDHEIA$ の面積を $S_{star}$、正五角形から星形を除いた残りの部分の面積を $S_{rem}$ とする。 星形の境界の外側かつ正五角形の内部にある図形は、$\triangle ABJ$ とそれと合同な5つの三角形である。 よって、残りの部分の面積は
$$S_{rem} = 5 S_1$$
星形の面積は
$$S_{star} = S_{all} - 5 S_1$$
この2つの大小を比較するため、$S_{rem} - S_{star} = 10 S_1 - S_{all}$ の符号を調べる。
$$10 S_1 = \frac{10}{\phi^2} S = 10(2-\phi) S = 10 \left( 2 - \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right) S = 5(3-\sqrt{5}) S = (15 - 5\sqrt{5}) S$$
$$S_{all} = (\phi+2) S = \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} + 2 \right) S = \frac{5+\sqrt{5}}{2} S$$
差をとると、
$$10 S_1 - S_{all} = \left( 15 - 5\sqrt{5} - \frac{5+\sqrt{5}}{2} \right) S = \frac{30 - 10\sqrt{5} - 5 - \sqrt{5}}{2} S = \frac{25 - 11\sqrt{5}}{2} S$$
ここで、$25^2 = 625$、$(11\sqrt{5})^2 = 121 \times 5 = 605$ であるから、$25 > 11\sqrt{5}$ となり、
$$10 S_1 - S_{all} > 0$$
したがって $S_{rem} > S_{star}$ となり、正五角形から星形を除いた残りの部分の面積のほうが大きい。
解説
正五角形に関する様々な線分や面積を、黄金比 $\phi$ を用いて比較する問題である。 (1) は正五角形に現れる角がすべて $36^\circ$ の倍数になることを利用し、二等辺三角形を見つけることで辺の長さを等式で結んでいく典型的な手法を用いる。 (2), (3) では面積を愚直に三角比で計算するのではなく、基準となる三角形を一つ定めて(本解法では $\triangle ABC$)、すべての面積をその定数倍として表現することで計算を大幅に圧縮できる。$\phi^2 = \phi + 1$ を用いた次数下げのテクニックは、正五角形の問題において極めて有効である。
答え
(1) (証明終) (2) 五角形 $FGHIJ$ の面積のほうが大きい。 (3) 正五角形 $ABCDE$ から星形を除いた残りの部分の面積のほうが大きい。
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