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九州大学 2000年 文系 第4問 解説

数学1/命題と集合数学A/整数問題テーマ/整数の証明テーマ/場合分け
九州大学 2000年 文系 第4問 解説

方針・初手

各命題について、真であると判断される場合は一般的な証明を与え、偽であると判断される場合は反例を1つ挙げる。

(1) は、無理数であることの証明として最も標準的な背理法を用いる。

(2) は、和と積(基本対称式)が有理数であっても、元の数が有理数とは限らないことを利用して反例を構成する。

(3) は、何乗しても有理数とならないような無理数を反例として具体的に挙げる。

(4) は、$a^5+b^5$ を $a+b$ と $ab$ の基本対称式で表し、有理数が加減乗除について閉じている性質を利用して証明する。

解法1

(1) 真である。 (理由) $\sqrt{7}$ が有理数であると仮定する。このとき、互いに素な自然数 $p, q$ を用いて

$$\sqrt{7} = \frac{p}{q}$$

と表すことができる。両辺を2乗して分母を払うと

$$7q^2 = p^2$$

これより $p^2$ は7の倍数であり、7は素数であるから $p$ も7の倍数である。 そこで $p = 7k$ ($k$ は自然数)とおくと、

$$7q^2 = 49k^2$$

$$q^2 = 7k^2$$

これより $q^2$ は7の倍数であり、$q$ も7の倍数となる。 これは $p, q$ が互いに素であるという仮定に矛盾する。 したがって仮定は誤りであり、$\sqrt{7}$ は無理数である。

(2) 偽である。 (理由) $a = 1+\sqrt{2}, \ b = 1-\sqrt{2}$ とする。このとき $a, b$ は共に無理数である。 これらの和と積を計算すると、

$$a+b = (1+\sqrt{2}) + (1-\sqrt{2}) = 2$$

$$ab = (1+\sqrt{2})(1-\sqrt{2}) = 1 - 2 = -1$$

和も積も共に0でない有理数となっているが、$a, b$ は有理数ではない。 よって、反例が存在するためこの命題は偽である。

(3) 偽である。 (理由) 無理数の反例として $a = 1+\sqrt{2}$ を考える。 任意の自然数 $n$ に対して、$(1+\sqrt{2})^n = A_n + B_n\sqrt{2}$ ($A_n, B_n$ は整数)と表せることを数学的帰納法で示す。

(i) $n=1$ のとき $(1+\sqrt{2})^1 = 1 + 1\cdot\sqrt{2}$ であり、$A_1 = 1, B_1 = 1$ とすれば共に整数なので成り立つ。

(ii) $n=k$ のとき $(1+\sqrt{2})^k = A_k + B_k\sqrt{2}$ ($A_k, B_k$ は整数)と表せると仮定する。 $n=k+1$ のとき

$$\begin{aligned} (1+\sqrt{2})^{k+1} &= (A_k + B_k\sqrt{2})(1+\sqrt{2}) \\ &= A_k + A_k\sqrt{2} + B_k\sqrt{2} + 2B_k \\ &= (A_k + 2B_k) + (A_k + B_k)\sqrt{2} \end{aligned}$$

$A_{k+1} = A_k + 2B_k, \ B_{k+1} = A_k + B_k$ とおくと、$A_k, B_k$ は整数であるから $A_{k+1}, B_{k+1}$ も整数となり、$n=k+1$ のときも成り立つ。

(i), (ii) より、すべての自然数 $n$ について $(1+\sqrt{2})^n = A_n + B_n\sqrt{2}$ ($A_n, B_n$ は整数)と表せる。 また、漸化式 $B_{k+1} = A_k + B_k$ と $A_1=1>0, B_1=1>0$ より、帰納的にすべての自然数 $n$ について $B_n > 0$ であることがわかる。 $B_n \neq 0$ であるため、すべての自然数 $n$ について $A_n + B_n\sqrt{2}$ は無理数となる。 したがって、何乗しても有理数にはならないため、この命題は偽である。

(4) 真である。 (理由) $a+b = p, \ ab = q$ とおくと、仮定より $p, q$ は有理数である。 対称式の性質を用いて $a^2+b^2$ および $a^3+b^3$ を $p, q$ で表すと、

$$\begin{aligned} a^2+b^2 &= (a+b)^2 - 2ab \\ &= p^2 - 2q \end{aligned}$$

$$\begin{aligned} a^3+b^3 &= (a+b)^3 - 3ab(a+b) \\ &= p^3 - 3pq \end{aligned}$$

有理数は四則演算(加法・減法・乗法・除法)について閉じているため、$p^2 - 2q$ および $p^3 - 3pq$ は共に有理数である。 さらに、$a^5+b^5$ は次のように変形できる。

$$\begin{aligned} a^5+b^5 &= (a^2+b^2)(a^3+b^3) - a^2b^2(a+b) \\ &= (p^2-2q)(p^3-3pq) - q^2p \end{aligned}$$

右辺は有理数 $p, q$ の加法・減法・乗法のみで構成されているため、その計算結果もまた有理数となる。 したがって、$a^5+b^5$ は有理数である。

解法2

(2) の別解 偽である。 (理由) 和が $p$、積が $q$ となる2つの実数 $a, b$ は、解と係数の関係より、2次方程式 $x^2 - px + q = 0$ の2つの解である。 ここで、$p=2, \ q=-1$ とすると、和と積は共に0でない有理数となる。 このとき、2次方程式 $x^2 - 2x - 1 = 0$ を解くと

$$x = 1 \pm \sqrt{2}$$

となり、2つの解は共に無理数である。 したがって反例が存在するため、この命題は偽である。

(3) の別解 偽である。 (理由) 反例として円周率 $\pi$ を挙げる。$\pi$ は無理数であることが知られている。 ある自然数 $n$ ($n \geqq 1$)に対して $\pi^n = q$ ($q$ は有理数)となると仮定する。 このとき、$\pi$ は有理数係数の多項式方程式 $x^n - q = 0$ の解となる。 しかし、$\pi$ はどのような有理数係数の代数方程式の解にもならない(超越数である)ことが知られているため、矛盾する。 したがって、$\pi$ はいかなる自然数乗をしても有理数にはならない。

解説

命題の真偽を問う問題の基本原則を確認する問題である。「真」であると主張するためには、すべての条件を満たす対象について例外なく成り立つことを論理的に証明しなければならない。一方、「偽」であると主張するためには、条件を満たすが結論を満たさない例(反例)を1つでも提示すれば十分である。

(1) は平方根が無理数であることの典型的な証明であり、背理法と「互いに素」という仮定が鍵となる。 (4) は対称式の変形だけでなく、「有理数が四則演算について閉じている」という事実を根拠として明示することが論理的飛躍を防ぐために重要である。

答え

(1) 真 (2) 偽 (3) 偽 (4) 真

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