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九州大学 2000年 文系 第6問 解説

数学A/確率数学B/確率分布・統計的推測
九州大学 2000年 文系 第6問 解説

方針・初手

公平なコインと歪んだコインが箱に入る事象は、それぞれ独立に起こります。 公平なコイン1枚が箱に入る確率は、$2$回とも表が出る確率なので $\left(\frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}$ です。 歪んだコインが箱に入る確率は、$n$回すべて表が出る確率なので $\left(\frac{3}{4}\right)^n$ です。

箱に入るコインの総数 $X$ は、公平なコインのうち箱に入る枚数と、歪んだコインが箱に入る枚数の和となります。 (1), (2)では余事象の確率 $P(X=0)$ を用いて $P(X \ge 1)$ を計算します。 (3)では、期待値の線形性と、独立な確率変数の分散の加法性を利用して計算するのが見通しの良い方針です。

解法1

公平なコイン $n$ 枚のうち、箱に入る枚数を $Y$ とする。 それぞれの公平なコインが箱に入る確率は $\frac{1}{4}$ であり、これらは独立であるから、$Y$ は二項分布 $B\left(n, \frac{1}{4}\right)$ に従う。

歪んだコインが箱に入る枚数を $Z$ とする。 歪んだコインが箱に入る確率は $\left(\frac{3}{4}\right)^n$ であるから、$Z$ は確率 $\left(\frac{3}{4}\right)^n$ で $1$ をとり、確率 $1 - \left(\frac{3}{4}\right)^n$ で $0$ をとる確率変数である。 (すなわち、二項分布 $B\left(1, \left(\frac{3}{4}\right)^n\right)$ に従う)

箱に入るコインの総数 $X$ は $X = Y + Z$ と表せる。

(1)

$n=2$ のとき、公平なコインが箱に入る確率は $\frac{1}{4}$、歪んだコインが箱に入る確率は $\left(\frac{3}{4}\right)^2 = \frac{9}{16}$ である。 $P(X \ge 1)$ は余事象を用いて、次のように求められる。

$$P(X \ge 1) = 1 - P(X = 0)$$

$X=0$ となるのは、公平なコイン $2$ 枚と歪んだコイン $1$ 枚がすべて箱に入らないときである。 これらは互いに独立であるから、

$$P(X = 0) = P(Y = 0) P(Z = 0) = \left(1 - \frac{1}{4}\right)^2 \left(1 - \frac{9}{16}\right) = \left(\frac{3}{4}\right)^2 \times \frac{7}{16} = \frac{9}{16} \times \frac{7}{16} = \frac{63}{256}$$

よって、

$$P(X \ge 1) = 1 - \frac{63}{256} = \frac{193}{256}$$

また、$X$ の期待値 $E[X]$ は、期待値の線形性により $E[X] = E[Y] + E[Z]$ である。 $n=2$ のとき、$Y \sim B\left(2, \frac{1}{4}\right)$ より $E[Y] = 2 \times \frac{1}{4} = \frac{1}{2}$。 $Z$ は確率 $\frac{9}{16}$ で $1$ をとるから、$E[Z] = 1 \times \frac{9}{16} = \frac{9}{16}$。 したがって、

$$E[X] = \frac{1}{2} + \frac{9}{16} = \frac{17}{16}$$

(2)

(1) と同様に考えると、$P(X=0)$ はすべてのコインが箱に入らない確率である。

$$P(X=0) = P(Y=0)P(Z=0) = \left(1 - \frac{1}{4}\right)^n \left\{ 1 - \left(\frac{3}{4}\right)^n \right\} = \left(\frac{3}{4}\right)^n \left\{ 1 - \left(\frac{3}{4}\right)^n \right\}$$

ここで、$t = \left(\frac{3}{4}\right)^n$ とおくと、$n \ge 1$ より $0 < t < 1$ である。 $P(X \ge 1) > \frac{13}{16}$ となる条件は、

$$1 - t(1 - t) > \frac{13}{16}$$

$$t - t^2 < 1 - \frac{13}{16}$$

$$16t^2 - 16t + 3 > 0$$

$$(4t - 1)(4t - 3) > 0$$

$0 < t < 1$ を考慮してこの不等式を解くと、

$$0 < t < \frac{1}{4} \quad \text{または} \quad \frac{3}{4} < t < 1$$

$t = \left(\frac{3}{4}\right)^n$ であるから、条件は以下のようになる。

$$\left(\frac{3}{4}\right)^n < \frac{1}{4} \quad \text{または} \quad \left(\frac{3}{4}\right)^n > \frac{3}{4}$$

$n$ は自然数であるから、$\left(\frac{3}{4}\right)^n > \frac{3}{4}$ を満たす $n$ は存在しない。 したがって、$\left(\frac{3}{4}\right)^n < \frac{1}{4}$ を満たす最小の自然数 $n$ を求めればよい。 両辺を比較するために、$n$ に順に自然数を代入して調べる。

よって、求める最小の $n$ は $5$ である。

(3)

$Y$ は二項分布 $B\left(n, \frac{1}{4}\right)$ に従うため、その期待値と分散は公式より、

$$E[Y] = n \times \frac{1}{4} = \frac{n}{4}$$

$$V(Y) = n \times \frac{1}{4} \times \left(1 - \frac{1}{4}\right) = \frac{3n}{16}$$

$Z$ は確率 $\left(\frac{3}{4}\right)^n$ で $1$、確率 $1 - \left(\frac{3}{4}\right)^n$ で $0$ をとる確率変数であるから、

$$E[Z] = 1 \times \left(\frac{3}{4}\right)^n + 0 \times \left\{ 1 - \left(\frac{3}{4}\right)^n \right\} = \left(\frac{3}{4}\right)^n$$

$$E[Z^2] = 1^2 \times \left(\frac{3}{4}\right)^n + 0^2 \times \left\{ 1 - \left(\frac{3}{4}\right)^n \right\} = \left(\frac{3}{4}\right)^n$$

$$V(Z) = E[Z^2] - (E[Z])^2 = \left(\frac{3}{4}\right)^n - \left(\frac{3}{4}\right)^{2n}$$

$X = Y + Z$ であり、各コインの試行は独立であるから、確率変数 $Y$ と $Z$ も互いに独立である。 期待値の線形性より、

$$E[X] = E[Y] + E[Z] = \frac{n}{4} + \left(\frac{3}{4}\right)^n$$

独立な確率変数の和の分散の性質($V(Y+Z) = V(Y) + V(Z)$)より、

$$V(X) = V(Y) + V(Z) = \frac{3n}{16} + \left(\frac{3}{4}\right)^n - \left(\frac{3}{4}\right)^{2n}$$

解説

複数の独立した事象(コイン投げ)による結果の和を扱う問題です。 すべてをまとめて確率分布を求めようとすると計算が非常に煩雑になりますが、確率変数の和($X = Y + Z$)として捉えることで、期待値・分散の計算が劇的に簡単になります。 期待値は確率変数が独立でなくても $E[X+Y] = E[X] + E[Y]$ が成り立ちますが、分散について $V(X+Y) = V(X) + V(Y)$ が成り立つのは $X$ と $Y$ が独立であるときのみです(本問では独立性が保証されています)。 数学B(または数学C)の「確率分布と統計的な推測」分野における、二項分布と期待値・分散の性質を正しく理解できているかを問う良問です。

答え

(1) $P(X \ge 1) = \frac{193}{256}$ 、 $X$ の期待値: $\frac{17}{16}$ (2) $n = 5$ (3) 期待値: $\frac{n}{4} + \left(\frac{3}{4}\right)^n$ 、 分散: $\frac{3n}{16} + \left(\frac{3}{4}\right)^n - \left(\frac{3}{4}\right)^{2n}$

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