九州大学 1998年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) は、両辺の差をとり、通分して $0$ 以上になることを示すのが最も簡明である。または、関数 $f(t) = \frac{t}{1+t}$ を設定し、この関数が単調増加であることを示すことでも証明できる。
(2)(i) は、(1) の結果を利用する。絶対値の三角不等式 $|x+y+z| \leqq |x| + |y| + |z|$ を用いることで、右辺を評価しやすくする。さらに、左辺の各項について、分母に他の文字の絶対値を加えることで分数を小さくし、不等式を繋いでいく。
(2)(ii) は、(i) の証明過程で用いた2段階の不等式評価の両方で等号が成立する条件を求める。
解法1
(1)
両辺の差をとって計算する。
$$\frac{x}{1+x} - \frac{y}{1+y} = \frac{x(1+y) - y(1+x)}{(1+x)(1+y)} = \frac{x + xy - y - xy}{(1+x)(1+y)} = \frac{x-y}{(1+x)(1+y)}$$
条件より $x \geqq y \geqq 0$ であるから、$x-y \geqq 0$ かつ $1+x > 0$ かつ $1+y > 0$ が成り立つ。 したがって、
$$\frac{x-y}{(1+x)(1+y)} \geqq 0$$
となる。よって、
$$\frac{x}{1+x} \geqq \frac{y}{1+y}$$
が成り立つ。等号成立は $x=y$ のときである。
(2)
(i)
絶対値の性質(三角不等式)より、任意の実数 $x, y, z$ について以下の不等式が成り立つ。
$$|x+y+z| \leqq |x| + |y| + |z|$$
ここで、$X = |x| + |y| + |z|$、$Y = |x+y+z|$ とおくと、絶対値は $0$ 以上であるから $X \geqq Y \geqq 0$ が成り立つ。 (1) の結果において $x, y$ をそれぞれ $X, Y$ に置き換えると、
$$\frac{|x| + |y| + |z|}{1 + |x| + |y| + |z|} \geqq \frac{|x+y+z|}{1 + |x+y+z|} \quad \cdots A$$
が成り立つ。
次に、左辺の各項について考える。$|x| \geqq 0, |y| \geqq 0, |z| \geqq 0$ より、各項の分母について以下の不等式が成り立つ。
$$\begin{aligned} 1 + |x| &\leqq 1 + |x| + |y| + |z| \\ 1 + |y| &\leqq 1 + |x| + |y| + |z| \\ 1 + |z| &\leqq 1 + |x| + |y| + |z| \end{aligned}$$
分母が大きくなると分数の値は小さくなる(または等しい)ため、以下の3つの不等式が成り立つ。
$$\begin{aligned} \frac{|x|}{1+|x|} &\geqq \frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|} \\ \frac{|y|}{1+|y|} &\geqq \frac{|y|}{1+|x|+|y|+|z|} \\ \frac{|z|}{1+|z|} &\geqq \frac{|z|}{1+|x|+|y|+|z|} \end{aligned}$$
これら3つの不等式の辺々を加えると、
$$\frac{|x|}{1+|x|} + \frac{|y|}{1+|y|} + \frac{|z|}{1+|z|} \geqq \frac{|x| + |y| + |z|}{1+|x|+|y|+|z|} \quad \cdots B$$
が得られる。 不等式 $A$ および不等式 $B$ より、
$$\frac{|x|}{1+|x|} + \frac{|y|}{1+|y|} + \frac{|z|}{1+|z|} \geqq \frac{|x+y+z|}{1+|x+y+z|}$$
が成り立つ。
(ii)
(i) の不等式で等号が成り立つのは、不等式 $A$ と不等式 $B$ の両方で等号が成立するときである。 まず、不等式 $B$ で等号が成立する条件を考える。これは、足し合わせた3つの不等式すべてで等号が成立することと同値であるため、
$$\begin{cases} \frac{|x|}{1+|x|} = \frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|} \\ \frac{|y|}{1+|y|} = \frac{|y|}{1+|x|+|y|+|z|} \\ \frac{|z|}{1+|z|} = \frac{|z|}{1+|x|+|y|+|z|} \end{cases}$$
が同時に成り立つことである。
第1の等式 $\frac{|x|}{1+|x|} = \frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|}$ について、 $|x| = 0$ のときは等式を満たす。 $|x| \neq 0$ のときは、両辺を $|x|$ で割ることができ、
$$1+|x| = 1+|x|+|y|+|z|$$
$$|y|+|z| = 0$$
$|y| \geqq 0, |z| \geqq 0$ より、これを満たすのは $|y|=0$ かつ $|z|=0$、すなわち $y=z=0$ のときである。 したがって、第1の等式が成り立つ条件は「$x=0$ または $y=z=0$」である。
対称性から、第2の等式が成り立つ条件は「$y=0$ または $z=x=0$」、第3の等式が成り立つ条件は「$z=0$ または $x=y=0$」となる。 これら3つの条件をすべて同時に満たすのは、「$x, y, z$ のうち少なくとも2つが $0$」のときである。
逆に、$x, y, z$ のうち少なくとも2つが $0$ であるとき、例えば $y=z=0$ とすると、 $X = |x| + 0 + 0 = |x|$ $Y = |x + 0 + 0| = |x|$ となり、$X=Y$ となるため、不等式 $A$ の等号($X=Y$ のときに成立)も同時に満たす。 ゆえに、求める等号成立条件は $x, y, z$ のうち少なくとも2つが $0$ になることである。
解法2
(1)
関数 $f(t) = \frac{t}{1+t} \ (t \geqq 0)$ を考える。 式を変形すると、
$$f(t) = \frac{1+t-1}{1+t} = 1 - \frac{1}{1+t}$$
となる。$t \geqq 0$ において、$t$ の値が大きくなると分母 $1+t$ は大きくなるため、$\frac{1}{1+t}$ は小さくなる。 したがって、$f(t)$ は $t \geqq 0$ において単調に増加する関数である。
条件より $x \geqq y \geqq 0$ であるから、関数 $f(t)$ の単調増加性より、
$$f(x) \geqq f(y)$$
すなわち、
$$\frac{x}{1+x} \geqq \frac{y}{1+y}$$
が成り立つ。
解説
(1) で示された関数 $f(x) = \frac{x}{1+x}$ の性質は、距離空間における距離の定義(距離関数)に関する証明などでしばしば用いられる典型的なものである。分数関数の大小比較では、差をとるか、関数の単調性を利用するのが定石である。
(2) では、前問の結果をどのように適用するかが鍵となる。絶対値の和の形から、三角不等式 $|x+y+z| \leqq |x|+|y|+|z|$ を思い浮かべることができれば、前問の不等式で $x$ を $|x|+|y|+|z|$ に、$y$ を $|x+y+z|$ に置き換える発想に至りやすい。また、等号成立条件を考える際は、不等式を評価したすべての箇所(今回は2箇所)で等号が成立しなければならない点に注意する必要がある。
答え
(1) 証明略。
(2) (i) 証明略。 (ii) $x, y, z$ のうち少なくとも2つが $0$ のとき
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