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九州大学 1998年 文系 第3問 解説

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九州大学 1998年 文系 第3問 解説

方針・初手

(1) は、両辺の差をとって符号を調べるか、関数 $f(t) = \frac{t}{1+t}$ を設定してその単調性を利用する。

(2)(i) は、(1) の結果をうまく活用する。三角不等式 $|x+y+z| \leqq |x| + |y| + |z|$ と、各項の分母を評価する不等式 $\frac{|x|}{1+|x|} \geqq \frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|}$ 等を組み合わせる。

(2)(ii) は、(i) の証明過程で用いた不等式それぞれの等号成立条件を同時に満たす場合を調べる。

解法1

(1)

$x \geqq y \geqq 0$ のとき、両辺の差をとると

$$\begin{aligned} \frac{x}{1+x} - \frac{y}{1+y} &= \frac{x(1+y) - y(1+x)}{(1+x)(1+y)} \\ &= \frac{x + xy - y - xy}{(1+x)(1+y)} \\ &= \frac{x-y}{(1+x)(1+y)} \end{aligned}$$

ここで、$x \geqq y \geqq 0$ であるから、$x-y \geqq 0$ かつ $1+x > 0$ かつ $1+y > 0$ が成り立つ。

したがって、

$$\frac{x-y}{(1+x)(1+y)} \geqq 0$$

となり、$\frac{x}{1+x} \geqq \frac{y}{1+y}$ が示された。

(2)

(i)

三角不等式より、

$$|x+y+z| \leqq |x| + |y| + |z|$$

が成り立つ。ここで、$X = |x| + |y| + |z|$、$Y = |x+y+z|$ とおくと、$X \geqq Y \geqq 0$ であるから、(1) の不等式を用いることができ、

$$\frac{|x|+|y|+|z|}{1+|x|+|y|+|z|} \geqq \frac{|x+y+z|}{1+|x+y+z|}$$

が成り立つ。これを不等式(A)とする。

一方、不等式(A)の左辺の分数を分割すると、

$$\frac{|x|+|y|+|z|}{1+|x|+|y|+|z|} = \frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|} + \frac{|y|}{1+|x|+|y|+|z|} + \frac{|z|}{1+|x|+|y|+|z|}$$

となる。ここで、$|x| \geqq 0$、$|y| \geqq 0$、$|z| \geqq 0$ であるから、各項について分母を小さくすることで次の不等式が成り立つ。

$$\frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|} \leqq \frac{|x|}{1+|x|}$$

$$\frac{|y|}{1+|x|+|y|+|z|} \leqq \frac{|y|}{1+|y|}$$

$$\frac{|z|}{1+|x|+|y|+|z|} \leqq \frac{|z|}{1+|z|}$$

これらの辺々を足し合わせると、

$$\frac{|x|+|y|+|z|}{1+|x|+|y|+|z|} \leqq \frac{|x|}{1+|x|} + \frac{|y|}{1+|y|} + \frac{|z|}{1+|z|}$$

が成り立つ。これを不等式(B)とする。

不等式(A)と不等式(B)より、

$$\frac{|x|}{1+|x|} + \frac{|y|}{1+|y|} + \frac{|z|}{1+|z|} \geqq \frac{|x+y+z|}{1+|x+y+z|}$$

が示された。

(ii)

(i) の不等式で等号が成り立つのは、不等式(A)と不等式(B)の両方で等号が成り立つときである。

まず、不等式(B)で等号が成り立つ条件を考える。これは、

$$\frac{|x|}{1+|x|+|y|+|z|} = \frac{|x|}{1+|x|}$$

かつ

$$\frac{|y|}{1+|x|+|y|+|z|} = \frac{|y|}{1+|y|}$$

かつ

$$\frac{|z|}{1+|x|+|y|+|z|} = \frac{|z|}{1+|z|}$$

が成り立つときである。

第1の等式から、

$$|x| = 0 \quad \text{または} \quad 1+|x|+|y|+|z| = 1+|x|$$

すなわち、

$$x = 0 \quad \text{または} \quad y = z = 0$$

同様に、第2、第3の等式から

$$y = 0 \quad \text{または} \quad x = z = 0$$

$$z = 0 \quad \text{または} \quad x = y = 0$$

これらが同時に成り立つのは、$x, y, z$ のうち少なくとも2つが0のときである。

次に、この条件のもとで不等式(A)の等号が成り立つか確認する。

$x, y, z$ のうち少なくとも2つが0であるとき、例えば $y = z = 0$ とすると、

$$|x+y+z| = |x| = |x| + |y| + |z|$$

となり、不等式(A)の等号も成立する。残りの2つが0の場合も同様である。

したがって、等号が成り立つのは $x, y, z$ のうち少なくとも2つが0の場合である。

解法2

(1) の別解を示す。

$f(t) = \frac{t}{1+t}$ ($t \geqq 0$)とおく。

$$f(t) = \frac{1+t-1}{1+t} = 1 - \frac{1}{1+t}$$

と変形できる。$t \geqq 0$ において、$t$ が増加すると $1+t$ も増加し、$\frac{1}{1+t}$ は減少する。

したがって、$f(t)$ は $t \geqq 0$ において単調に増加する。

よって、$x \geqq y \geqq 0$ のとき、

$$f(x) \geqq f(y)$$

すなわち、

$$\frac{x}{1+x} \geqq \frac{y}{1+y}$$

が成り立つ。

解説

(1) は基本的な不等式証明であり、関数 $f(x) = \frac{x}{1+x}$ の単調増加性を示すことと同値である。この関数が単調増加であることは、(2) で $|x+y+z| \leqq |x|+|y|+|z|$ を代入して大小関係を維持する根拠になる。

(2) では、一気に証明しようとせず、$\frac{|x|+|y|+|z|}{1+|x|+|y|+|z|}$ という中間項を挟んで2段階の不等式評価を行うことがポイントである。

等号成立条件については、使用したすべての不等式(三角不等式および各分数の評価)の等号成立条件を同時に満たす必要がある。

答え

(1) 略(証明は解法に記載)

(2)(i) 略(証明は解法に記載)

(2)(ii) $x, y, z$ のうち少なくとも2つが0の場合

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