大阪大学 1995年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた不等式が「すべての実数 $x$ に対して」成り立つための条件を求める問題である。 恒等式や絶対不等式の問題では、扱いやすい具体的な値を代入したり、極限を考えたりして必要条件を絞り込み、最後にその条件が全体で成り立つか(十分性)を確認するアプローチが有効である。 まずは $x=0$ を代入して $c$ を決定し、その後 $x \neq 0$ の範囲で両辺を適切に変形して $a, b$ の条件を絞り込んでいく。
解法1
与えられた不等式を①とする。
$$ |x^3 + ax^2 + bx + c| \leqq |x^3| \quad \cdots \text{①} $$
(i) $c$ の決定 ①はすべての実数 $x$ に対して成り立つため、$x = 0$ のときも成り立つ。代入すると、
$$ |c| \leqq 0 $$
絶対値は常に $0$ 以上であるため、$c = 0$ が必要である。
(ii) $a, b$ の決定 $c = 0$ のとき、①は次のようになる。
$$ |x^3 + ax^2 + bx| \leqq |x^3| $$
$x \neq 0$ のとき、両辺を $|x^3| (> 0)$ で割ると、
$$ \left| 1 + \frac{a}{x} + \frac{b}{x^2} \right| \leqq 1 $$
絶対値を外すと、
$$ -1 \leqq 1 + \frac{a}{x} + \frac{b}{x^2} \leqq 1 $$
各辺から $1$ を引いて、
$$ -2 \leqq \frac{a}{x} + \frac{b}{x^2} \leqq 0 $$
各辺に $x^2 (> 0)$ を掛けると、
$$ -2x^2 \leqq ax + b \leqq 0 \quad \cdots \text{②} $$
が得られ、これが任意の $x \neq 0$ に対して成り立つ必要がある。
まず、②の右側の不等式 $ax + b \leqq 0$ に着目する。 これが任意の $x \neq 0$ で成り立つためには、$a = 0$ でなければならない。 (もし $a > 0$ ならば $x \to \infty$ のとき $ax + b \to \infty$ となり不適。もし $a < 0$ ならば $x \to -\infty$ のとき $ax + b \to \infty$ となり不適であるため)
$a = 0$ のとき、②は次のように簡単になる。
$$ -2x^2 \leqq b \leqq 0 $$
右側の不等式から $b \leqq 0$ である。 また、左側の不等式 $-2x^2 \leqq b$ が任意の $x \neq 0$ で成り立つため、ここで $x \to 0$ の極限を考えると $0 \leqq b$ を得る。 したがって、$b \leqq 0$ かつ $b \geqq 0$ より、$b = 0$ が必要である。
(iii) 十分性の確認 以上より、必要条件として $a = 0, b = 0, c = 0$ が得られた。 逆にこのとき、元の不等式は
$$ |x^3| \leqq |x^3| $$
となり、これはすべての実数 $x$ に対して明らかに成り立つ。 したがって、十分条件も満たす。
解法2
$x$ の正負で場合分けをして、極限から係数を決定するアプローチ。
解法1と同様に $x = 0$ を代入し、$c = 0$ を得る。 不等式は以下のようになる。
$$ |x^3 + ax^2 + bx| \leqq |x^3| $$
(i) $x > 0$ のとき $x^3 > 0$ より $|x^3| = x^3$ であるから、絶対値を外すと、
$$ -x^3 \leqq x^3 + ax^2 + bx \leqq x^3 $$
各辺から $x^3$ を引いて、
$$ -2x^3 \leqq ax^2 + bx \leqq 0 $$
両辺を $x^2 (> 0)$ で割ると、
$$ -2x \leqq a + \frac{b}{x} \leqq 0 \quad \cdots \text{③} $$
③が任意の $x > 0$ で成り立つ。 右側の不等式 $a + \frac{b}{x} \leqq 0$ において、$x \to \infty$ とすると $a \leqq 0$ が必要である。
(ii) $x < 0$ のとき $x^3 < 0$ より $|x^3| = -x^3$ であるから、絶対値を外すと、
$$ x^3 \leqq x^3 + ax^2 + bx \leqq -x^3 $$
各辺から $x^3$ を引いて、
$$ 0 \leqq ax^2 + bx \leqq -2x^3 $$
両辺を $x^2 (> 0)$ で割ると、
$$ 0 \leqq a + \frac{b}{x} \leqq -2x \quad \cdots \text{④} $$
④が任意の $x < 0$ で成り立つ。 左側の不等式 $0 \leqq a + \frac{b}{x}$ において、$x \to -\infty$ とすると $0 \leqq a$ が必要である。
(i), (ii) の結果から $a \leqq 0$ かつ $a \geqq 0$ となり、$a = 0$ が導かれる。
$a = 0$ のとき、③は
$$ -2x \leqq \frac{b}{x} \leqq 0 \quad (x > 0) $$
となる。右側の不等式より $\frac{b}{x} \leqq 0$ であり、$x > 0$ であるから $b \leqq 0$ が必要。 左側の不等式 $-2x \leqq \frac{b}{x}$ の両辺に $x (> 0)$ を掛けると $-2x^2 \leqq b$ となり、$x \to +0$ とすると $0 \leqq b$ が必要。 したがって、$b = 0$ が得られる。
逆に $a = 0, b = 0, c = 0$ のとき、与式は $|x^3| \leqq |x^3| $ となり、すべての実数 $x$ に対して成り立つ。
解説
「すべての実数 $x$ で成り立つ」という条件の扱い方が問われる典型的な問題である。 絶対値を含む不等式であるため、直接両辺を2乗すると6次式となり見通しが悪くなる。このような場合は、必要条件から候補を絞り込むのが定石である。
- $x = 0$ を代入して定数項 $c$ を消去する。
- $x$ の絶対値が非常に大きい場合($x \to \pm\infty$)の挙動から、最高次の係数に制約がかかることを見抜く。
- $x$ の絶対値が $0$ に近い場合($x \to 0$)の挙動から、低次の係数に制約がかかることを見抜く。
必要条件で絞り込んだ後は、論理の欠陥を防ぐために必ず十分性(逆の確認)を記述することを忘れないようにしたい。
答え
$$ a = 0, \quad b = 0, \quad c = 0 $$
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