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九州大学 2000年 理系 第4問 解説

数学C/複素数平面数学2/三角関数数学2/複素数と方程式テーマ/整数の証明
九州大学 2000年 理系 第4問 解説

方針・初手

複素数 $z$ とその共役複素数 $\overline{z}$ の和 $\alpha$ は実数であり、ド・モアブルの定理やオイラーの公式から三角関数で表すことができます。(1) は得られた三角関数の値に対して3倍角の公式を用いることで、目的の方程式を導出します。(2) は微分を用いたグラフの概形から実数解の個数を調べ、有理数解を持たないことは有理根定理または背理法で示します。(3) は背理法を仮定し、「$\alpha$ が2次方程式を満たす」という条件を使って3次方程式の次数下げを行い矛盾を導きます。

解法1

(1) 与えられた $z = \cos 20^\circ + i \sin 20^\circ$ に対し、共役複素数 $\overline{z}$ は

$$\overline{z} = \cos 20^\circ - i \sin 20^\circ$$

である。よって、$\alpha = z + \overline{z}$ は

$$\alpha = (\cos 20^\circ + i \sin 20^\circ) + (\cos 20^\circ - i \sin 20^\circ) = 2 \cos 20^\circ$$

となる。ここで、3倍角の公式 $\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta$ において $\theta = 20^\circ$ とすると、

$$\cos 60^\circ = 4\cos^3 20^\circ - 3\cos 20^\circ$$

$\cos 60^\circ = \frac{1}{2}$ および $\cos 20^\circ = \frac{\alpha}{2}$ を代入すると、

$$\frac{1}{2} = 4 \left( \frac{\alpha}{2} \right)^3 - 3 \left( \frac{\alpha}{2} \right)$$

$$\frac{1}{2} = \frac{\alpha^3}{2} - \frac{3\alpha}{2}$$

両辺を2倍して整理すると、

$$\alpha^3 - 3\alpha - 1 = 0$$

ゆえに、$\alpha$ は整数を係数とする3次方程式 $x^3 - 3x - 1 = 0$ の解となる。

(2) (1) で求めた3次方程式の左辺を $f(x) = x^3 - 3x - 1$ とおく。 関数 $f(x)$ を微分すると、

$$f'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x - 1)(x + 1)$$

$f'(x) = 0$ となるのは $x = \pm 1$ のときである。ここで、極値と特定の点における $f(x)$ の値を調べる。

$$\begin{aligned} f(-2) &= -8 + 6 - 1 = -3 < 0 \\ f(-1) &= -1 + 3 - 1 = 1 > 0 \\ f(1) &= 1 - 3 - 1 = -3 < 0 \\ f(2) &= 8 - 6 - 1 = 1 > 0 \end{aligned}$$

関数 $f(x)$ は連続であるから、中間値の定理により、方程式 $f(x) = 0$ は区間 $(-2, -1)$、$(-1, 1)$、$(1, 2)$ にそれぞれ少なくとも1つの実数解をもつ。 3次方程式の実数解は最大でも3個であるため、これら3つの区間にちょうど1つずつ、合計3個の実数解をもつ。

次に、これら3つの実数解が有理数ではないことを背理法で示す。 方程式 $x^3 - 3x - 1 = 0$ が有理数解をもつと仮定し、それを $x = \frac{p}{q}$ ($p, q$ は互いに素な整数、$q \neq 0$)とおく。これを方程式に代入すると、

$$\left( \frac{p}{q} \right)^3 - 3\left( \frac{p}{q} \right) - 1 = 0$$

両辺に $q^3$ を掛けて整理すると、

$$p^3 - 3pq^2 - q^3 = 0$$

$$p^3 = q^2(3p + q)$$

$p, q$ は互いに素であるため、$p^3$ と $q^2$ も互いに素である。等式が成り立つためには、$q^2$ は $p^3$ を割り切らなければならないが、互いに素であることから $q^2 = 1$ すなわち $q = \pm 1$ でなければならない。 このとき、$x = \frac{p}{1} = p$ または $x = \frac{p}{-1} = -p$ となり、$x$ は整数でなければならない。 有理数解は整数に限られることがわかったので、$x = k$($k$ は整数)とおき、方程式に代入する。

$$k^3 - 3k - 1 = 0$$

$$k(k^2 - 3) = 1$$

$k$ および $k^2 - 3$ は整数であるから、かけて $1$ になる整数の組は $(k, k^2 - 3) = (1, 1), (-1, -1)$ に限られる。 しかし、$k=1$ のとき $k^2 - 3 = -2 \neq 1$ であり不適。 $k=-1$ のとき $k^2 - 3 = -2 \neq -1$ であり不適。 したがって、方程式を満たす整数 $k$ は存在せず、有理数解をもつという仮定に矛盾する。 ゆえに、この3次方程式は3個の実数解をもち、そのいずれも有理数ではない。

(3) $\alpha$ を解とする、有理数を係数とする2次方程式が存在すると仮定する。それを

$$x^2 + px + q = 0 \quad (p, q \text{ は有理数})$$

とおく。$\alpha$ はこの方程式の解であるから、

$$\alpha^2 + p\alpha + q = 0$$

すなわち、

$$\alpha^2 = -p\alpha - q$$

が成り立つ。一方、(1) より $\alpha$ は $x^3 - 3x - 1 = 0$ の解であるから、

$$\alpha^3 - 3\alpha - 1 = 0$$

が成り立つ。この式に $\alpha^2 = -p\alpha - q$ を繰り返し用いて次数を下げる。 $\alpha^3 = \alpha \cdot \alpha^2$ であるから、

$$\begin{aligned} \alpha(-p\alpha - q) - 3\alpha - 1 &= 0 \\ -p\alpha^2 - q\alpha - 3\alpha - 1 &= 0 \\ -p(-p\alpha - q) - (q + 3)\alpha - 1 &= 0 \\ p^2\alpha + pq - (q + 3)\alpha - 1 &= 0 \\ (p^2 - q - 3)\alpha + (pq - 1) &= 0 \end{aligned}$$

ここで、$p^2 - q - 3 \neq 0$ と仮定すると、

$$\alpha = -\frac{pq - 1}{p^2 - q - 3}$$

となる。$p, q$ は有理数であるから、右辺も有理数となり、$\alpha$ が有理数であることになってしまう。しかし、$\alpha$ は (1) の3次方程式の解の1つであり、(2) で証明した通りその解はいずれも無理数であるから、これは矛盾である。 したがって、$p^2 - q - 3 = 0$ でなければならない。このとき、先の式から $pq - 1 = 0$ も成り立つ。 よって、次の連立方程式を得る。

$$\begin{cases} p^2 - q - 3 = 0 \\ pq - 1 = 0 \end{cases}$$

第2式より、$p \neq 0$ であり $q = \frac{1}{p}$ となる。これを第1式に代入すると、

$$p^2 - \frac{1}{p} - 3 = 0$$

両辺に $p$ を掛けると、

$$p^3 - 3p - 1 = 0$$

が得られる。これは、有理数 $p$ が3次方程式 $x^3 - 3x - 1 = 0$ の解であることを意味する。しかし、(2) で証明したように、この3次方程式は有理数解をもたないため、矛盾が生じる。 ゆえに、$\alpha$ を解とする有理数係数の2次方程式は存在しない。

解説

本問は、複素数平面、三角関数、方程式の解の性質、そして背理法を総合的に問う良問です。 (1) では、共役複素数の和が実部の2倍になる性質と、3倍角の公式を結びつける発想が鍵となります。 (2) の実数解の存在範囲の特定は微分と中間値の定理の基本操作です。有理数解を持たないことの証明では、「モニック多項式(最高次の係数が1の多項式)の有理数解は整数に限られ、さらにそれは定数項の約数になる」という定理(有理根定理)の証明プロセスをなぞるのが定石です。 (3) は高次方程式の解に関する証明問題で頻出の「次数下げ」を利用した背理法です。3次式を2次式で割った余りを考えることと同値であり、無理数の相等条件($A, B$ が有理数で $\alpha$ が無理数のとき、$A\alpha + B = 0 \iff A=0 \text{ かつ } B=0$)に持ち込んで連立方程式を導く流れを確実にマスターしておきましょう。

答え

(1) $x^3 - 3x - 1 = 0$

(2) 実数解が3個あること、および有理数解を持たないことが証明された。

(3) 有理数を係数とする2次方程式が存在すると仮定して矛盾を導くことで証明された。

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