トップ 東京工業大学 1972年 理系 第1問

東京工業大学 1972年 理系 第1問 解説

数学C/複素数平面数学A/整数問題数学2/複素数と方程式テーマ/整数の証明
東京工業大学 1972年 理系 第1問 解説

方針・初手

複素数の絶対値を含む方程式 $|z|=1$ は、両辺を2乗して $|z|^2=1$ とし、公式 $|z|^2 = z \bar{z}$ を利用して処理するのが定石である。

本問では $\omega$ が虚数であることに注意し、$\omega$ の共役複素数 $\bar{\omega}$ の性質(和と積)を利用するか、$\omega$ を直接 $x+yi$ の形に直して実部と虚部に分けることで、$a$ と $b$ についての2元2次不定方程式に帰着させる。その後は、平方完成を用いて整数条件から値の範囲を絞り込む。

解法1

方程式 $\omega^2+\omega+1=0$ を解くと $\omega = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$ であるから、$\omega$ は虚数である。

$\omega$ の共役複素数を $\bar{\omega}$ とすると、2次方程式の解と係数の関係より、以下の関係式が成り立つ。

$$ \omega + \bar{\omega} = -1, \quad \omega \bar{\omega} = 1 $$

条件 $|a\omega+b|=1$ の両辺を2乗すると

$$ |a\omega+b|^2 = 1 $$

絶対値の性質 $|z|^2 = z \bar{z}$ を用いて左辺を変形すると、$a, b$ は実数(整数)であるから $\bar{a}=a, \bar{b}=b$ となり、

$$ \begin{aligned} |a\omega+b|^2 &= (a\omega+b)\overline{(a\omega+b)} \\ &= (a\omega+b)(a\bar{\omega}+b) \\ &= a^2\omega\bar{\omega} + ab(\omega+\bar{\omega}) + b^2 \end{aligned} $$

和と積の値を代入して

$$ \begin{aligned} a^2 \cdot 1 + ab(-1) + b^2 &= 1 \\ a^2 - ab + b^2 &= 1 \end{aligned} $$

この式を $a$ について平方完成すると

$$ \left( a - \frac{1}{2}b \right)^2 + \frac{3}{4}b^2 = 1 $$

$a, b$ は整数であるから、$b^2$ も 0 以上の整数である。実数の2乗は 0 以上であるから $\left( a - \frac{1}{2}b \right)^2 \geqq 0$ となり、

$$ \frac{3}{4}b^2 \leqq 1 $$

すなわち

$$ b^2 \leqq \frac{4}{3} $$

これを満たす整数 $b$ は、$b = 0, \pm 1$ に限られる。

(i) $b = 0$ のとき $a^2 = 1$ より、$a = \pm 1$ となる。

(ii) $b = 1$ のとき $a^2 - a = 0$ より、$a(a - 1) = 0$ となる。 これを解いて $a = 0, 1$ を得る。

(iii) $b = -1$ のとき $a^2 + a = 0$ より、$a(a + 1) = 0$ となる。 これを解いて $a = 0, -1$ を得る。

以上より、求める整数 $(a, b)$ の組は以下のようになる。

$$ (a, b) = (1, 0), (-1, 0), (0, 1), (1, 1), (0, -1), (-1, -1) $$

解法2

方程式 $\omega^2+\omega+1=0$ を解くと

$$ \omega = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} $$

である。これを $|a\omega+b|=1$ に代入すると

$$ \left| a \left( \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} \right) + b \right| = 1 $$

実部と虚部に整理すると

$$ \left| \left( b - \frac{a}{2} \right) \pm \frac{\sqrt{3}a}{2}i \right| = 1 $$

両辺を2乗し、複素数の絶対値の定義 $|x+yi|^2 = x^2+y^2$ を用いると

$$ \left( b - \frac{a}{2} \right)^2 + \left( \pm \frac{\sqrt{3}a}{2} \right)^2 = 1 $$

展開して整理する。

$$ b^2 - ab + \frac{a^2}{4} + \frac{3a^2}{4} = 1 $$

$$ a^2 - ab + b^2 = 1 $$

分数をなくすために両辺を 4 倍し、平方完成を行う。

$$ 4a^2 - 4ab + 4b^2 = 4 $$

$$ (2a - b)^2 + 3b^2 = 4 $$

$a, b$ は整数であるから、$2a - b$ および $b$ も整数である。 したがって $(2a - b)^2 \geqq 0, 3b^2 \geqq 0$ であり、$3b^2 \leqq 4$ を満たす必要がある。

これを満たす整数 $b$ は、$b^2 = 0, 1$ すなわち $b = 0, \pm 1$ に限られる。

(i) $b = 0$ のとき $(2a)^2 = 4$ より $a^2 = 1$ となり、$a = \pm 1$ である。

(ii) $b = 1$ のとき $(2a - 1)^2 + 3 = 4$ より $(2a - 1)^2 = 1$ となる。 $2a - 1 = \pm 1$ より $2a = 2, 0$ となり、$a = 1, 0$ である。

(iii) $b = -1$ のとき $(2a + 1)^2 + 3 = 4$ より $(2a + 1)^2 = 1$ となる。 $2a + 1 = \pm 1$ より $2a = 0, -2$ となり、$a = 0, -1$ である。

これらをまとめて、求める組は以下のようになる。

$$ (a, b) = (1, 0), (-1, 0), (0, 1), (1, 1), (0, -1), (-1, -1) $$

解説

複素数の絶対値を含む方程式を扱う際の基本的な考え方を問う問題である。$|z|^2 = z \bar{z}$ を利用する解法1の方が、複素数を実部と虚部に分ける解法2よりも式の見通しが良く、計算ミスを防ぎやすい。

絶対値の処理を終えると、不定方程式 $a^2 - ab + b^2 = 1$ から整数解を求める問題に帰着する。このように2次の項のみが含まれる式では、片方の文字について平方完成を行い、実数の2乗が 0 以上になる性質を利用して変域を絞り込むのが定石である。解法2のように、式全体を 4 倍して $(2a - b)^2 + 3b^2 = 4$ の形を作ると、計算途中で分数が現れず処理がより安全になる。

答え

$$ (a, b) = (1, 0), (-1, 0), (0, 1), (1, 1), (0, -1), (-1, -1) $$

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。