九州大学 2010年 理系 第1問 解説

方針・初手
点 $P$ の位置を数式で表現することが第一歩となる。直線 $AB$ 上の点であるため、ベクトル $\overrightarrow{AB}$ を用いて $\overrightarrow{AP} = t\overrightarrow{AB}$ と表し、ベクトルの絶対値の計算に帰着させるのが定石である。あるいは線分の長さとして $AP = tc$ と表し、$\triangle APC$ に余弦定理を用いることもできる。ここでは、場合分けが不要で計算が見通しやすいベクトルを用いた解法を示す。
後半の (3) では、点 $P$ が辺 $AB$ 上にある条件を $t$ の範囲に翻訳し、2次方程式の解の配置問題として処理する。
解法1
(1)
点 $P$ は $A$ を始点とし $B$ を通る半直線上にあり、$AP = tc$ ($t \geqq 0$) であるから、ベクトルを用いて次のように表せる。
$$\overrightarrow{AP} = t\overrightarrow{AB}$$
このとき、$\overrightarrow{CP}$ は以下のように計算できる。
$$\overrightarrow{CP} = \overrightarrow{AP} - \overrightarrow{AC} = t\overrightarrow{AB} - \overrightarrow{AC}$$
したがって、その大きさの2乗は次のようになる。
$$|\overrightarrow{CP}|^2 = |t\overrightarrow{AB} - \overrightarrow{AC}|^2 = t^2|\overrightarrow{AB}|^2 - 2t\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC} + |\overrightarrow{AC}|^2$$
ここで、$|\overrightarrow{AB}| = c$、$|\overrightarrow{AC}| = b$ である。また、$\triangle ABC$ において辺 $BC$ の長さをベクトルで表すと
$$|\overrightarrow{BC}|^2 = |\overrightarrow{AC} - \overrightarrow{AB}|^2 = |\overrightarrow{AC}|^2 - 2\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC} + |\overrightarrow{AB}|^2$$
すなわち $a^2 = b^2 - 2\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC} + c^2$ より、内積は次のように表せる。
$$2\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC} = b^2 + c^2 - a^2$$
これらを $|\overrightarrow{CP}|^2$ の式に代入して整理する。
$$CP^2 = c^2t^2 - (b^2 + c^2 - a^2)t + b^2$$
(2)
$CP = a$ を満たすとき $CP^2 = a^2$ であるから、(1) の結果より次の方程式が成り立つ。
$$c^2t^2 - (b^2 + c^2 - a^2)t + b^2 = a^2$$
$$c^2t^2 - (b^2 + c^2 - a^2)t + b^2 - a^2 = 0$$
左辺を $t$ について因数分解する。
$$c^2t^2 - c^2t - (b^2 - a^2)t + (b^2 - a^2) = 0$$
$$c^2t(t - 1) - (b^2 - a^2)(t - 1) = 0$$
$$(t - 1)\{c^2t - (b^2 - a^2)\} = 0$$
よって、この方程式の解は $t = 1, \frac{b^2 - a^2}{c^2}$ である。
問題の条件より $t \geqq 0$ であるため、解として適する $t$ は $b$ と $a$ の大小関係によって以下のようになる。
$b \geqq a$ のとき、$t = 1, \frac{b^2 - a^2}{c^2}$
$b < a$ のとき、$t = 1$
(3)
点 $P$ が辺 $AB$ 上にあるための条件は、$0 \leqq t \leqq 1$ である。
「(2) の条件を満たす点 $P$ が辺 $AB$ 上にちょうど 2 つある」とは、(2) の $t$ についての 2 次方程式が $0 \leqq t \leqq 1$ の範囲に「異なる 2 つの実数解」をもつことと同値である。
解の 1 つは $t = 1$ であり、これは常に条件 $0 \leqq t \leqq 1$ を満たす。したがって、もう 1 つの解 $t = \frac{b^2 - a^2}{c^2}$ が $0 \leqq t < 1$ を満たすことが求める条件である。($t = 1$ のときは解が重なり、条件を満たす点 $P$ が 1 つだけになってしまうため不適である。)
$$0 \leqq \frac{b^2 - a^2}{c^2} < 1$$
$c^2 > 0$ であるから、各辺に $c^2$ を掛けて整理する。
$$0 \leqq b^2 - a^2 < c^2$$
$$a^2 \leqq b^2 < a^2 + c^2$$
ここで、$a > 0, b > 0$ より $a^2 \leqq b^2 \iff a \leqq b$ である。三角形の辺と角の大小関係より、$a \leqq b \iff \angle A \leqq \angle B$ が成り立つ。
また、$\triangle ABC$ に対する余弦定理より $\cos B = \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}$ であり、以下の同値変形が成り立つ。
$$b^2 < a^2 + c^2 \iff c^2 + a^2 - b^2 > 0 \iff \cos B > 0$$
$\triangle ABC$ の内角について $0^\circ < \angle B < 180^\circ$ であるから、$\cos B > 0 \iff \angle B < 90^\circ$ である。
以上より、求める条件は次のようになる。
$$\angle A \leqq \angle B < 90^\circ$$
解説
幾何的な状況をベクトルや数式に翻訳して処理する標準的な問題である。
(1) は余弦定理を $\triangle APC$ に適用しても同様の式を得られるが、点 $P$ が線分 $AB$ の延長線上にあるか辺上にあるかによる図の違いを気にせず、機械的に処理できるベクトルを用いる手法が安全である。
(2) の 2 次方程式は、幾何的な意味を考えれば必ず $t=1$ (点 $P$ が $B$ に一致するとき、$CP = CB = a$ となる)を解にもつことが分かる。これを見越せば因数分解の式変形は容易に行える。
(3) は「辺 $AB$ 上」を $0 \leqq t \leqq 1$ と数式化し、不等式を解く。(2) で $t \geqq 0$ の吟味を求めている意図に注意し、解がちょうど 2 つ存在するためには $0 \leqq t < 1$ でなければならない点に気をつける。最後の条件の翻訳では、余弦定理や三角形の辺と角の大小関係の基本知識が問われている。
答え
(1) $CP^2 = c^2t^2 - (b^2 + c^2 - a^2)t + b^2$
(2) $b \geqq a$ のとき $t = 1, \frac{b^2 - a^2}{c^2}$ 、 $b < a$ のとき $t = 1$
(3) $\angle A \leqq \angle B < 90^\circ$
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