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名古屋大学 2008年 文系 第4問 解説

数学A/確率数学B/確率分布・統計的推測テーマ/最大・最小
名古屋大学 2008年 文系 第4問 解説

方針・初手

期待値の定義に従って、各事象の確率と確率変数の値を丁寧に対応させて計算する。(1)と(2)は標準的な確率および期待値の問題である。

(3)は、最初に取り出した玉の色(赤か白か)によって袋Aの残りの中身が変化するため、その結果に応じて「袋Aから引く場合」と「袋Bから引く場合」の赤玉の期待値を比較し、値が大きくなる方を選択するという方針をとる。それぞれのケースでの条件付き期待値を求め、最後に確率の重みをつけて全体の期待値を計算する。

解法1

(1)

袋Bの中には赤玉3個、白玉2個の計5個の玉が入っている。ここから2個の玉を取り出すとき、取り出される赤玉の個数を $X$ とする。

$X$ のとり得る値は $0, 1, 2$ であり、それぞれの確率は以下のようになる。

$$ P(X=0) = \frac{{}_2\mathrm{C}_{2}}{{}_5\mathrm{C}_{2}} = \frac{1}{10} $$

$$ P(X=1) = \frac{{}_3\mathrm{C}_{1} \times {}_2\mathrm{C}_{1}}{{}_5\mathrm{C}_{2}} = \frac{6}{10} $$

$$ P(X=2) = \frac{{}_3\mathrm{C}_{2}}{{}_5\mathrm{C}_{2}} = \frac{3}{10} $$

したがって、求める期待値 $E(X)$ は

$$ E(X) = 0 \times \frac{1}{10} + 1 \times \frac{6}{10} + 2 \times \frac{3}{10} = \frac{12}{10} = \frac{6}{5} $$

(2)

袋Aから1個、袋Bから2個の玉を取り出す。取り出される3個の玉のうち、赤玉がちょうど2個となるのは、次の2つの排反な事象のいずれかが起こる場合である。

(i) 袋Aから赤玉1個を取り出し、袋Bから赤玉1個と白玉1個を取り出す。 (ii) 袋Aから白玉1個を取り出し、袋Bから赤玉2個を取り出す。

事象 (i) の起こる確率は

$$ \frac{2}{4} \times \frac{{}_3\mathrm{C}_{1} \times {}_2\mathrm{C}_{1}}{{}_5\mathrm{C}_{2}} = \frac{1}{2} \times \frac{6}{10} = \frac{3}{10} $$

事象 (ii) の起こる確率は

$$ \frac{2}{4} \times \frac{{}_3\mathrm{C}_{2}}{{}_5\mathrm{C}_{2}} = \frac{1}{2} \times \frac{3}{10} = \frac{3}{20} $$

これらは互いに排反であるから、求める確率は

$$ \frac{3}{10} + \frac{3}{20} = \frac{6}{20} + \frac{3}{20} = \frac{9}{20} $$

(3)

最初に袋Aから1つの玉を取り出す結果は、確率 $\frac{1}{2}$ で赤玉、確率 $\frac{1}{2}$ で白玉である。それぞれの場合において、次に袋Aと袋Bのどちらから2つの玉を取り出すべきかを、得られる赤玉の期待値を比較して決定する。

(i) 最初に袋Aから赤玉を取り出した場合

袋Aの残りの玉は赤玉1個、白玉2個の計3個となる。ここから2個の玉を取り出すとき、含まれる赤玉の個数の期待値は

$$ 0 \times \frac{{}_2\mathrm{C}_{2}}{{}_3\mathrm{C}_{2}} + 1 \times \frac{{}_1\mathrm{C}_{1} \times {}_2\mathrm{C}_{1}}{{}_3\mathrm{C}_{2}} = 0 \times \frac{1}{3} + 1 \times \frac{2}{3} = \frac{2}{3} $$

一方、袋Bから2個の玉を取り出すときの赤玉の個数の期待値は (1) より $\frac{6}{5}$ である。 $\frac{6}{5} > \frac{2}{3}$ であるから、できるだけ多く赤玉を取り出すためには袋Bを選択する。 このとき、最終的に取り出される赤玉の個数の期待値は、最初に取り出した1個を加えて

$$ 1 + \frac{6}{5} = \frac{11}{5} $$

(ii) 最初に袋Aから白玉を取り出した場合

袋Aの残りの玉は赤玉2個、白玉1個の計3個となる。ここから2個の玉を取り出すとき、含まれる赤玉の個数の期待値は

$$ 1 \times \frac{{}_2\mathrm{C}_{1} \times {}_1\mathrm{C}_{1}}{{}_3\mathrm{C}_{2}} + 2 \times \frac{{}_2\mathrm{C}_{2}}{{}_3\mathrm{C}_{2}} = 1 \times \frac{2}{3} + 2 \times \frac{1}{3} = \frac{4}{3} $$

一方、袋Bから2個の玉を取り出すときの赤玉の個数の期待値は $\frac{6}{5}$ である。 $\frac{4}{3} > \frac{6}{5}$ であるから、できるだけ多く赤玉を取り出すためには袋Aを選択する。 このとき、最終的に取り出される赤玉の個数の期待値は、最初に取り出した0個に加えて

$$ 0 + \frac{4}{3} = \frac{4}{3} $$

以上 (i), (ii) はそれぞれ確率 $\frac{1}{2}$ で起こるため、求める全体の期待値は

$$ \frac{1}{2} \times \frac{11}{5} + \frac{1}{2} \times \frac{4}{3} = \frac{11}{10} + \frac{2}{3} = \frac{33 + 20}{30} = \frac{53}{30} $$

解説

(3)における「できるだけ多くの赤玉を取り出そうと選択した」という設定は、最初の試行結果を見たうえで、次の試行の期待値を最大化する方を選ぶということを意味する。このような選択を含む問題では、各分岐先での期待値を算出して比較し、最適化された期待値をもとに全体を計算することが重要である。

また、袋から玉を複数個取り出すときの特定の色の玉の個数の期待値は、確率分布をすべて求めずとも「元の袋にある特定の色の玉の割合 $\times$ 取り出す個数」で求めることができる(期待値の線形性)。これを利用すると、(1)の期待値は $2 \times \frac{3}{5} = \frac{6}{5}$、(3)の各期待値も直ちに算出でき、検算に有効である。

答え

(1) $\frac{6}{5}$

(2) $\frac{9}{20}$

(3) $\frac{53}{30}$

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