北海道大学 2010年 文系 第2問 解説

方針・初手
さいころの目の出方に対する各プレイヤーの勝敗と得点を整理し、期待値の定義にしたがって計算を進める。
Aの目を $a$、Bの目を $b$ としたとき、Aが勝つ条件は $a \ge b$、Bが勝つ条件は $a < b$ と表せる。それぞれの条件のもとで得点を $a, b$ および与えられた定数 $p, q$ を用いて表し、全事象について総和をとる。
(2) では (1) で求めた期待値を等号で結び、$p, q$ についての不定方程式を導く。整数問題の基本的な考え方である「互いに素」な性質を利用して絞り込む。
解法1
Aが出す目を $a$、Bが出す目を $b$ とする。 さいころの目の出方は全部で $6 \times 6 = 36$ 通りあり、これらはすべて同様に確からしい。
(1)
Aが勝つのは、同じ目が出るか、AがBより大きい目を出したとき、すなわち $a \ge b$ のときである。 このとき、Aの得点は $pa$、Bの得点は $0$ である。 したがって、Aの得点の期待値 $E_A$ は次のように計算できる。
$$ E_A = \frac{1}{36} \sum_{a=1}^{6} \sum_{b=1}^{a} pa $$
内側の和を計算すると $\sum_{b=1}^{a} pa = pa \times a = pa^2$ となるため、
$$ E_A = \frac{1}{36} \sum_{a=1}^{6} pa^2 $$
$$ E_A = \frac{p}{36} \times \frac{6 \cdot (6+1) \cdot (2 \cdot 6 + 1)}{6} = \frac{p \cdot 91}{36} = \frac{91p}{36} $$
Bが勝つのは、BがAより大きい目を出したとき、すなわち $a < b$ のときである。 このとき、Bの得点は $b + qa$、Aの得点は $0$ である。 したがって、Bの得点の期待値 $E_B$ は次のように計算できる。
$$ E_B = \frac{1}{36} \sum_{b=2}^{6} \sum_{a=1}^{b-1} (b + qa) $$
内側の和を計算する。
$$ \sum_{a=1}^{b-1} (b + qa) = b(b-1) + q \frac{(b-1)b}{2} = \left( 1 + \frac{q}{2} \right) (b^2 - b) $$
これを外側の和に代入して計算する。
$$ E_B = \frac{1}{36} \left( 1 + \frac{q}{2} \right) \sum_{b=2}^{6} (b^2 - b) $$
ここで、$\sum_{b=2}^{6} (b^2 - b) = \sum_{b=1}^{6} (b^2 - b)$ であるから、
$$ \sum_{b=1}^{6} (b^2 - b) = \frac{6 \cdot 7 \cdot 13}{6} - \frac{6 \cdot 7}{2} = 91 - 21 = 70 $$
よって、$E_B$ は次のように求まる。
$$ E_B = \frac{1}{36} \left( 1 + \frac{q}{2} \right) \cdot 70 = \frac{70 + 35q}{36} $$
(2)
$E_A = E_B$ となるとき、(1)の結果より以下の等式が成り立つ。
$$ \frac{91p}{36} = \frac{70 + 35q}{36} $$
両辺に $36$ を掛けて整理する。
$$ 91p = 35q + 70 $$
両辺を $7$ で割る。
$$ 13p = 5q + 10 $$
$$ 13p = 5(q + 2) $$
$p, q$ は自然数であるから、$q+2$ は $3$ 以上の整数である。 $13$ と $5$ は互いに素であるため、等式が成り立つためには $p$ は $5$ の倍数でなければならない。 $p = 5k$($k$ は自然数)とおくと、等式は次のように変形できる。
$$ 13 \cdot 5k = 5(q + 2) $$
$$ 13k = q + 2 $$
$$ q = 13k - 2 $$
$q$ は自然数であるから、$13k - 2 \ge 1$ すなわち $k \ge \frac{3}{13}$ を満たす必要がある。 $k$ は自然数であるため、$k \ge 1$ であれば条件を満たす。 $p$ が最小となるのは、$k=1$ のときである。このとき、
$$ p = 5 \cdot 1 = 5 $$
$$ q = 13 \cdot 1 - 2 = 11 $$
であり、ともに自然数となるため適する。 したがって、最小の自然数 $p$ は $p=5$ である。
このときの $E_A$ の値は、求めた $p=5$ を代入して、
$$ E_A = \frac{91 \cdot 5}{36} = \frac{455}{36} $$
解説
2変数の確率変数に対する期待値計算と、不定方程式(ディオファントス方程式)を組み合わせた典型的な問題である。
(1) では、和の計算($\Sigma$ 計算)を丁寧に実行することが求められる。勝敗の条件を $a \ge b$ と $a < b$ に正しく分け、それぞれについて取り得る変数の範囲をシグマ記号の上下端に正確に反映させることが重要である。
(2) では、得られた関係式から $13p = 5(q + 2)$ を導き、$13$ と $5$ が互いに素であるという性質を用いて $p$ を絞り込む。整数問題における定石の処理である。
答え
(1) $E_A = \frac{91p}{36}$, $E_B = \frac{35q + 70}{36}$
(2) 最小の自然数 $p$: $5$, そのときの $E_A$ の値: $\frac{455}{36}$
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