名古屋大学 2016年 文系 第1問 解説

方針・初手
点 $A, B, T$ がすべて放物線 $y=x^2$ 上にあることを利用し、$\angle ATB = 90^\circ$ となる条件を立式する。 $T$ の $x$ 座標を $t$ としたとき、$-1 < t < b$ の範囲で点 $T$ をとることから、$t \neq -1$ かつ $t \neq b$ が保証される。これにより、直線 $TA$ と $TB$ は座標軸に平行にならないため、「傾きの積が $-1$」という条件から $t$ についての2次方程式を導くことができる。 問題は、導出された2次方程式が区間 $-1 < t < b$ 内に少なくとも1つの実数解をもつ条件を求める「解の配置問題」に帰着される。
解法1
$A(-1, 1)$, $B(b, b^2)$, $T(t, t^2)$ とする。 $-1 < t < b$ であるから、$t \neq -1$ かつ $t \neq b$ である。 したがって、直線 $TA$, $TB$ は $y$ 軸と平行になることはなく、それぞれの傾きを考えることができる。
直線 $TA$ の傾きは $$\frac{t^2 - 1}{t - (-1)} = t - 1$$
直線 $TB$ の傾きは $$\frac{b^2 - t^2}{b - t} = b + t$$
$\angle ATB = 90^\circ$ より、直線 $TA$ と $TB$ は垂直に交わるため、傾きの積は $-1$ である。 $$(t - 1)(b + t) = -1$$
展開して整理すると、 $$t^2 + (b - 1)t - b + 1 = 0$$
条件を満たす $b$ の範囲は、この $t$ についての2次方程式が $-1 < t < b$ の範囲に少なくとも1つの実数解をもつような $b$ の範囲である。 $f(t) = t^2 + (b - 1)t - b + 1$ とおく。 $y = f(t)$ のグラフは下に凸の放物線であり、その軸は直線 $t = \frac{1 - b}{2}$ である。
区間の両端における $f(t)$ の値は $$f(-1) = (-1)^2 - (b - 1) - b + 1 = 3 - 2b$$
$$f(b) = b^2 + b(b - 1) - b + 1 = 2b^2 - 2b + 1$$
ここで、$f(b)$ を平方完成すると $$f(b) = 2\left(b - \frac{1}{2}\right)^2 + \frac{1}{2}$$ となり、すべての実数 $b$ に対して常に $f(b) > 0$ であることがわかる。
方程式 $f(t) = 0$ が $-1 < t < b$ の範囲に少なくとも1つの実数解をもつ条件を、以下の3つの場合に分けて考える。
(i) $-1 < t < b$ の範囲にただ1つの実数解をもつ場合 $f(b) > 0$ であるから、$f(-1) < 0$ であれば、$y=f(t)$ のグラフは区間 $-1 < t < b$ で $t$ 軸とただ1つの交点をもつ。 $$3 - 2b < 0 \iff b > \frac{3}{2}$$
(ii) $t = -1$ が解となる場合 $f(-1) = 0$ とすると、$3 - 2b = 0$ より $b = \frac{3}{2}$ である。 このとき、$f(t) = t^2 + \frac{1}{2}t - \frac{1}{2} = 0$ となり、$(t + 1)\left(t - \frac{1}{2}\right) = 0$ より解は $t = -1, \frac{1}{2}$ である。 区間 $-1 < t < \frac{3}{2}$ の中に解 $t = \frac{1}{2}$ が存在するため、$b = \frac{3}{2}$ は条件を満たす。
(iii) $-1 < t < b$ の範囲に2つの実数解(重解を含む)をもつ場合 方程式 $f(t) = 0$ の判別式を $D$ とすると、以下の3つの条件をすべて満たす必要がある。
判別式 $D \ge 0$ $$D = (b - 1)^2 - 4(-b + 1) = b^2 + 2b - 3 = (b + 3)(b - 1) \ge 0$$ これを解いて、$b \le -3$ または $b \ge 1$ である。 問題の条件 $b > -1$ より、$b \ge 1$ となる。
軸の位置が区間内にある $$-1 < \frac{1 - b}{2} < b$$ $-2 < 1 - b$ より $b < 3$ であり、また $1 - b < 2b$ より $3b > 1 \iff b > \frac{1}{3}$ である。 したがって、$\frac{1}{3} < b < 3$ となる。
区間の両端で正 $f(b) > 0$ は常に成り立つため、$f(-1) > 0$ であればよい。 $$3 - 2b > 0 \iff b < \frac{3}{2}$$
これら3つの条件の共通範囲を求めて、 $$1 \le b < \frac{3}{2}$$
(i), (ii), (iii) より、求める $b$ の範囲はこれらを合わせた範囲である。 $b > \frac{3}{2}$ または $b = \frac{3}{2}$ または $1 \le b < \frac{3}{2}$ となり、これらは切れ目なく連続する。 よって、 $$b \ge 1$$
解法2
$\angle ATB = 90^\circ$ となるための条件は、点 $T$ が線分 $AB$ を直径とする円の周上(ただし点 $A, B$ は除く)に存在することである。
点 $A(-1, 1)$, $B(b, b^2)$ を直径の両端とする円の方程式は、 $$(x - (-1))(x - b) + (y - 1)(y - b^2) = 0$$
すなわち $$(x + 1)(x - b) + (y - 1)(y - b^2) = 0$$ と表される。
点 $T(t, t^2)$ はこの円の周上にあるため、これを代入して $$(t + 1)(t - b) + (t^2 - 1)(t^2 - b^2) = 0$$
因数分解を用いて式を整理する。 $$(t + 1)(t - b) + (t + 1)(t - 1)(t - b)(t + b) = 0$$
$$(t + 1)(t - b) \{ 1 + (t - 1)(t + b) \} = 0$$
点 $T$ は $-1 < t < b$ の範囲をとるため、$t \neq -1$ かつ $t \neq b$ である。 したがって、$(t + 1)(t - b) \neq 0$ であるから、両辺をこれで割って $$1 + (t - 1)(t + b) = 0$$
$$t^2 + (b - 1)t - b + 1 = 0$$
この方程式が、$-1 < t < b$ の範囲に少なくとも1つの実数解をもつ $b$ の範囲を求めればよい。
$f(t) = t^2 + (b - 1)t - b + 1$ とおく。 $y = f(t)$ は下に凸の放物線であり、軸は $t = \frac{1 - b}{2}$ である。 区間の両端での値は、 $$f(-1) = 3 - 2b$$
$$f(b) = 2b^2 - 2b + 1 = 2\left(b - \frac{1}{2}\right)^2 + \frac{1}{2}$$ であり、すべての実数 $b$ において $f(b) > 0$ である。
(i) $-1 < t < b$ の範囲にただ1つの実数解をもつ場合 $f(b) > 0$ であるため、$f(-1) < 0$ であれば条件を満たす。 $$3 - 2b < 0 \iff b > \frac{3}{2}$$
(ii) $t = -1$ が解となる場合 $f(-1) = 0$ とすると $b = \frac{3}{2}$ である。 このとき方程式は $t^2 + \frac{1}{2}t - \frac{1}{2} = 0$ となり、解は $t = -1, \frac{1}{2}$ となる。 区間 $-1 < t < \frac{3}{2}$ 内に解 $t = \frac{1}{2}$ をもつため、$b = \frac{3}{2}$ も条件を満たす。
(iii) $-1 < t < b$ の範囲に2つの実数解(重解を含む)をもつ場合 以下の3条件をすべて満たす必要がある。
判別式 $D \ge 0$ $$D = (b - 1)^2 - 4(-b + 1) = (b + 3)(b - 1) \ge 0$$ $b > -1$ より $b \ge 1$ となる。
軸 $t = \frac{1 - b}{2}$ が区間内 $$-1 < \frac{1 - b}{2} < b \iff \frac{1}{3} < b < 3$$
区間の両端で正 $f(b) > 0$ は常に成り立つため、$f(-1) > 0$ $$3 - 2b > 0 \iff b < \frac{3}{2}$$
これら3条件の共通範囲を求めて、 $$1 \le b < \frac{3}{2}$$
(i), (ii), (iii) より、求める $b$ の範囲はこれらをすべて合わせた範囲となり、 $$b \ge 1$$
解説
放物線上の3点がなす直角を扱う典型的な問題である。 直角の条件は、解法1のように「直線が座標軸に平行でないことを確認した上で傾きの積を $-1$ とする」か、解法2のように「2点を直径の端点とする円の方程式との交点として捉える」のが基本である。ベクトルの内積が $0$ であることを立式しても、解法2の途中式と全く同じ計算となる。
いずれの方針を取ったとしても、得られた $t$ の2次方程式が指定された区間に解をもつ条件を調べる「解の配置問題」に帰着する。 本問では、片方の端点における値 $f(b)$ がつねに正になるという事実に気づけるかどうかが、場合分けを見通しよく進めるための鍵となる。
答え
$$b \ge 1$$
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