名古屋大学 2025年 文系 第3問 解説

方針・初手
- 各コインが選ばれたときに、どのコインが裏返るかを整理する。
- $n$ 回の操作のうち、各コイン $k$ が選ばれる回数を文字でおき、各コインが裏返る回数をその文字で表す。
- 「すべてのコインが裏向き」という条件を、裏返る回数がすべて奇数であるという条件に言い換え、連立方程式(あるいは合同式)として処理する。
解法1
$n$ 回の操作のうち、コイン $k \ (k=1, 2, \dots, 6)$ が選ばれた回数を $x_k$ とおく。ここで $x_k$ は $0$ 以上の整数であり、以下の関係を満たす。
$$ \sum_{k=1}^6 x_k = n $$
操作により、選ばれたコインに辺を共有して隣接するコインが裏返る。したがって、各コイン①〜⑥が裏返る回数をそれぞれ $y_1, y_2, \dots, y_6$ とすると、次のように表される。
$$ \begin{aligned} y_1 &= x_2 + x_4 \\ y_2 &= x_1 + x_3 + x_5 \\ y_3 &= x_2 + x_6 \\ y_4 &= x_1 + x_5 \\ y_5 &= x_2 + x_4 + x_6 \\ y_6 &= x_3 + x_5 \end{aligned} $$
最初はすべて表向きであるから、操作終了時点ですべてのコインが裏向きであるための必要十分条件は、$y_1, y_2, \dots, y_6$ がすべて奇数となることである。
(1)
$n=2$ のとき、$\sum_{k=1}^6 x_k = 2$ である。 各 $y_i$ が奇数になる条件を考える。$y_1 = x_2 + x_4 \le 2$ であるから、奇数となるためには $y_1 = 1$ が必要である。 同様に、$y_2, \dots, y_6$ もすべて $1$ となる。 $y_5 = x_2 + x_4 + x_6 = y_1 + x_6 = 1$ であり、$y_1=1$ であるから、これを満たすには $x_6 = 0$ となる。 $y_3 = x_2 + x_6 = 1$ と $x_6=0$ から、$x_2 = 1$。 $y_1 = x_2 + x_4 = 1$ と $x_2=1$ から、$x_4 = 0$。 また、$y_2 = x_1 + x_3 + x_5 = y_4 + x_3 = 1$ であり、$y_4=1$ であるから、$x_3 = 0$。 $y_6 = x_3 + x_5 = 1$ と $x_3=0$ から、$x_5 = 1$。 $y_4 = x_1 + x_5 = 1$ と $x_5=1$ から、$x_1 = 0$。 以上より、$x_2 = x_5 = 1$、$x_1 = x_3 = x_4 = x_6 = 0$ に決定される。 このとき $\sum_{k=1}^6 x_k = 2$ も満たしており、実際に $y_1, \dots, y_6$ はすべて奇数となる。 したがって、$2$ 回の操作で②と⑤が $1$ 回ずつ選ばれる事象の確率を求めればよいので、
$$ p_2 = \frac{2!}{1!1!} \times \left(\frac{1}{6}\right)^2 = \frac{2}{36} = \frac{1}{18} $$
(2)
すべてのコインが裏向きになるための条件は、任意の $k$ に対して $y_k \equiv 1 \pmod 2$ が成り立つことである。 $y_5 \equiv 1 \pmod 2$ かつ $y_1 \equiv 1 \pmod 2$ であることから、以下が成り立つ。
$$ y_5 - y_1 = x_6 \equiv 0 \pmod 2 $$
これと $y_3 = x_2 + x_6 \equiv 1 \pmod 2$ より、
$$ x_2 \equiv 1 - x_6 \equiv 1 - 0 \equiv 1 \pmod 2 $$
さらに $y_1 = x_2 + x_4 \equiv 1 \pmod 2$ より、
$$ x_4 \equiv 1 - x_2 \equiv 1 - 1 \equiv 0 \pmod 2 $$
同様にして、$y_2$ と $y_4$ に着目すると、
$$ y_2 - y_4 = x_3 \equiv 0 \pmod 2 $$
これと $y_6 = x_3 + x_5 \equiv 1 \pmod 2$ より、
$$ x_5 \equiv 1 - x_3 \equiv 1 - 0 \equiv 1 \pmod 2 $$
さらに $y_4 = x_1 + x_5 \equiv 1 \pmod 2$ より、
$$ x_1 \equiv 1 - x_5 \equiv 1 - 1 \equiv 0 \pmod 2 $$
以上より、すべてのコインが裏向きであるための必要十分条件は「②と⑤は奇数回選ばれ、①, ③, ④, ⑥は偶数回選ばれる」ことである。 したがって、Aは奇数回選ばれるグループ、Bは偶数回選ばれるグループとして分ければよい。
(3)
$n=4$ のとき、すべてのコインが裏向きになる条件は、「$x_2, x_5$ が奇数、$x_1, x_3, x_4, x_6$ が偶数であり、かつこれらの和が $4$ である」ことである。 各 $x_k$ は $0$ 以上の整数であるから、以下の $2$ つのケースに分けられる。
(i) $x_2, x_5$ のうち一方が $3$、他方が $1$ の場合 残りの偶数の変数はすべて $0$ となる。 この条件を満たす組 $(x_2, x_5)$ は $(3, 1)$ と $(1, 3)$ の $2$ 通りある。 各組において、操作の順列は同じものを含む順列により $\frac{4!}{3!1!} = 4$ 通りある。 よって、この場合の操作の列は $2 \times 4 = 8$ 通り。
(ii) $x_2 = 1, x_5 = 1$ の場合 残りの変数の和は $x_1 + x_3 + x_4 + x_6 = 4 - 1 - 1 = 2$ となる。 これらはすべて偶数であるから、どれか $1$ つが $2$ で、残りの $3$ つは $0$ となる。 どの変数を $2$ に選ぶかで $4$ 通りある。 各々の場合について、たとえば $x_1=2, x_2=1, x_5=1$ のときの操作の順列は $\frac{4!}{2!1!1!} = 12$ 通りある。 よって、この場合の操作の列は $4 \times 12 = 48$ 通り。
(i), (ii) より、条件を満たす操作の列は合計 $8 + 48 = 56$ 通りである。 $4$ 回の操作の全事象は $6^4$ 通りであるから、求める確率は以下となる。
$$ p_4 = \frac{56}{6^4} = \frac{56}{1296} = \frac{7}{162} $$
解説
隣接関係による反転を扱うパズル的な要素を含む確率問題である。 各コインが選ばれた回数を文字でおき、それぞれのコインが何回裏返るかを立式できるかが最大のポイントとなる。 (1) で $n=2$ という具体的な小さな数で実験させることで、方程式を立てて差をとる(または合同式で偶奇を判定する)という (2) の一般化への誘導になっている。 (2) で導いた「偶数回・奇数回」という条件をそのまま (3) の場合分けの条件として利用することで、計算の見通しが良くなる。論理の構成が非常に美しい良問である。
答え
(1) $p_2 = \frac{1}{18}$ (2) グループ A:②, ⑤、グループ B:①, ③, ④, ⑥ (3) $p_4 = \frac{7}{162}$
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