名古屋大学 2022年 文系 第2問 解説

方針・初手
- (1) は不等式を満たす $(a, b, c)$ の組を数え上げる問題。3変数の不等式は、いずれかの文字について整理し、値を固定して残りの文字の条件を絞るのが定石である。ここでは $c$ について整理すると見通しがよい。
- (2) は2つの式が「互いに素」となる条件を求める問題。最大公約数を考え、素因数(特に偶奇)に着目して、扱いやすい同値な条件へと式を翻訳していくことが目標となる。
解法1
サイコロの目は $1$ から $6$ までの整数であり、すべての目の出方は $6^3 = 216$ 通りである。これらは同様に確からしい。
(1)
与えられた不等式は以下のように変形できる。
$$ ab + 2c \geqq abc $$
$$ ab(c - 1) \leqq 2c $$
ここで、$c$ の値によって場合分けを行う。
(i) $c = 1$ のとき
不等式は $0 \leqq 2$ となり、これは常に成り立つ。 このとき、$a, b$ は $1$ から $6$ の任意の目をとることができるため、条件を満たす $(a, b)$ の組は $6 \times 6 = 36$ 通りある。
(ii) $c \geqq 2$ のとき
$c - 1 > 0$ であるから、両辺を $c - 1$ で割ることができる。
$$ ab \leqq \frac{2c}{c - 1} = \frac{2(c - 1) + 2}{c - 1} = 2 + \frac{2}{c - 1} $$
各 $c$ の値について、$ab$ のとり得る値を調べる。
$c = 2$ のとき $ab \leqq 2 + 2 = 4$ これを満たす自然数の組 $(a, b)$ は、$(1, 1), (1, 2), (1, 3), (1, 4), (2, 1), (2, 2), (3, 1), (4, 1)$ の $8$ 通りである。
$c = 3$ のとき $ab \leqq 2 + 1 = 3$ これを満たす $(a, b)$ は、$(1, 1), (1, 2), (1, 3), (2, 1), (3, 1)$ の $5$ 通りである。
$c = 4, 5, 6$ のとき $3 \leqq c - 1 \leqq 5$ より $0 < \frac{2}{c - 1} \leqq \frac{2}{3}$ であるから、不等式の右辺は $2$ より大きく $3$ より小さい値となる。$a, b$ は自然数であるから、満たすべき条件は $ab \leqq 2$ となる。 これを満たす $(a, b)$ は、$(1, 1), (1, 2), (2, 1)$ の $3$ 通りである。これが $c=4, 5, 6$ の $3$ 通り分あるので、$3 \times 3 = 9$ 通りである。
(i), (ii) より、不等式を満たす $(a, b, c)$ の組の総数は、
$$ 36 + 8 + 5 + 9 = 58 $$
よって、求める確率は
$$ \frac{58}{216} = \frac{29}{108} $$
(2)
$ab + 2c$ と $2abc$ が互いに素である条件を求める。
$2abc$ は偶数であるため、これと互いに素になるためには $ab + 2c$ は奇数でなければならない。$2c$ は偶数であるから、$ab$ は奇数である必要があり、すなわち $a, b$ はともに奇数でなければならない。 このとき、$ab + 2c$ は奇数となるため、$2$ と互いに素になる。 したがって、$ab + 2c$ と $2abc$ が互いに素であるための必要十分条件は、「$a, b$ がともに奇数」かつ「$ab + 2c$ と $abc$ が互いに素」であることとなる。
さらに、「$ab + 2c$ と $abc$ が互いに素」であることは、「$c$ と $ab$ が互いに素」であることと同値であることを示す。
(証明) ある素数 $p$ が $ab+2c$ と $abc$ の公約数であると仮定する。 $p \mid abc$ であるから、$p$ は $a, b, c$ のいずれかを割り切る。 (ア) $p \mid a$ または $p \mid b$ のとき $p \mid ab$ であり、$p \mid (ab+2c)$ であるから $p \mid 2c$ が成り立つ。$a, b$ は奇数としているため、その約数 $p$ も奇素数である。よって $p \mid c$ となり、$c$ と $ab$ は公約数 $p$ を持つため互いに素ではない。 (イ) $p \mid c$ のとき $p \mid 2c$ であり、$p \mid (ab+2c)$ であるから $p \mid ab$ が成り立つ。よって $c$ と $ab$ は公約数 $p$ を持つため互いに素ではない。 逆に、$c$ と $ab$ が素数の公約数 $q$ を持つとすると、$q \mid c$ かつ $q \mid ab$ より $q \mid (ab+2c)$ となり、$ab+2c$ と $abc$ は公約数 $q$ を持つ。 以上から、「$ab + 2c$ と $abc$ が互いに素」$\iff$「$c$ と $ab$ が互いに素」が示された。(証明終)
まとめると、求めるべき事象は以下の2条件を同時に満たすことである。
- $a, b$ はともに奇数 (すなわち $a, b \in \{1, 3, 5\}$)
- $c$ と $ab$ は互いに素
$c$ の値によって場合分けをして、これらを満たす $(a, b, c)$ の組の数を調べる。 $a, b \in \{1, 3, 5\}$ より、$(a, b)$ の組は全体で $3^2 = 9$ 通りある。
$c = 1$ のとき $1$ と $ab$ は常に互いに素である。よって $(a, b)$ は $9$ 通り。
$c = 2$ のとき $2$ と $ab$ が互いに素であるためには $ab$ が奇数であればよい。条件より $ab$ は奇数なので常に成り立つ。よって $9$ 通り。
$c = 3$ のとき $3$ と $ab$ が互いに素であるためには、$ab$ が $3$ の倍数でないことが必要。よって $a, b \in \{1, 5\}$ となり、$2^2 = 4$ 通り。
$c = 4$ のとき $c=2$ のときと同様に $ab$ が奇数であればよく、常に成り立つ。よって $9$ 通り。
$c = 5$ のとき $5$ と $ab$ が互いに素であるためには、$ab$ が $5$ の倍数でないことが必要。よって $a, b \in \{1, 3\}$ となり、$2^2 = 4$ 通り。
$c = 6$ のとき $6$ と $ab$ が互いに素であるためには、$ab$ が $2$ と $3$ の倍数でないことが必要。$ab$ は奇数なので、$3$ の倍数でなければよい。よって $a, b \in \{1, 5\}$ となり、$4$ 通り。
以上を合計すると、条件を満たす $(a, b, c)$ の組の総数は、
$$ 9 + 9 + 4 + 9 + 4 + 4 = 39 $$
よって、求める確率は
$$ \frac{39}{216} = \frac{13}{72} $$
解説
(1) は文字が3つある不等式の典型的な処理である。対称性がないため、次数が低く扱いやすい $c$ に着目して整理するのが定石となる。
(2) はユークリッドの互除法にも通じる「整数の性質」を活用する問題である。「$A$ と $B$ が互いに素」という条件を扱う際、$A$ と $A \pm B$ が互いに素であるかどうかを調べる手法が有効となる。本問では偶奇に着目して $a, b$ の条件を絞り出した後、背理法などを用いて条件を $c$ と $ab$ の関係まで同値変形できるかが鍵となる。互いに素に関する証明は論理の抜けが出やすいので、丁寧に因数と公約数の関係を追う必要がある。
答え
(1) $$ \frac{29}{108} $$
(2) $$ \frac{13}{72} $$
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