大阪大学 1976年 文系 第1問 解説

方針・初手
与えられた2つの値 $\frac{2BH}{BC}$ と $\frac{2BK}{BA}$ がともに整数であるという条件から出発する。$\angle B$ が鋭角であるため、垂線の足 $H, K$ はそれぞれ辺 $BC, BA$ の延長上ではなく、半直線 $BC, BA$ 上に位置する。したがって、直角三角形を用いて $BH$ と $BK$ の長さを $\cos B$ を用いて表すことができる。これら2つの整数の積を作ることで、辺の長さが打ち消し合い、$\cos B$ のみに関する条件式を導くことができる。
解法1
(1)
$\triangle ABH$ は $\angle AHB = 90^\circ$ の直角三角形である。$\angle B$ は鋭角であるから、点 $H$ は半直線 $BC$ 上にあり、
$$ BH = AB \cos B $$
が成り立つ。 同様に、$\triangle CBK$ は $\angle CKB = 90^\circ$ の直角三角形であり、$\angle B$ は鋭角であるから、点 $K$ は半直線 $BA$ 上にあり、
$$ BK = BC \cos B $$
が成り立つ。
条件より、$\frac{2BH}{BC}$ と $\frac{2BK}{BA}$ はともに整数である。これらに上の式を代入すると、
$$ \frac{2BH}{BC} = \frac{2AB \cos B}{BC} $$
$$ \frac{2BK}{BA} = \frac{2BC \cos B}{BA} = \frac{2BC \cos B}{AB} $$
がともに整数となる。 これら2つの整数の積もまた整数となるため、
$$ \frac{2AB \cos B}{BC} \cdot \frac{2BC \cos B}{AB} = 4 \cos^2 B $$
は整数である。
ここで、$\angle B$ は鋭角であるから $0 < \cos B < 1$ であり、
$$ 0 < 4 \cos^2 B < 4 $$
となる。 $4 \cos^2 B$ は整数であるから、取りうる値は $1, 2, 3$ のいずれかである。
それぞれの場合について $\cos B$ の値を求める。$\cos B > 0$ であるから、
- $4 \cos^2 B = 1$ のとき、$\cos B = \frac{1}{2}$
- $4 \cos^2 B = 2$ のとき、$\cos B = \frac{1}{\sqrt{2}}$
- $4 \cos^2 B = 3$ のとき、$\cos B = \frac{\sqrt{3}}{2}$
したがって、$\cos B$ の値は $\frac{1}{2}, \frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{\sqrt{3}}{2}$ のいずれかでなければならないことが示された。
(2)
$\triangle ABC$ の辺の長さを $BC=a, CA=b, AB=c$ とおく。 (1)より、$\frac{2BH}{BC} = \frac{2c \cos B}{a}$ および $\frac{2BK}{BA} = \frac{2a \cos B}{c}$ はともに正の整数である。
(i)
$\cos B = \frac{1}{2}$ のとき
2つの正の整数の積が $4 \cos^2 B = 1$ となるため、両方の値は $1$ でなければならない。すなわち、
$$ \frac{2c}{a} \cdot \frac{1}{2} = 1 \implies a=c $$
$\cos B = \frac{1}{2}$ より $\angle B = 60^\circ$ であり、$a=c$ であるから $\triangle ABC$ は正三角形である。 よって、$a=1, c=1$ とすると、余弦定理より
$$ b^2 = 1^2 + 1^2 - 2 \cdot 1 \cdot 1 \cdot \frac{1}{2} = 1 $$
となり、$b=1$ を得る。これは条件を満たす。
(ii)
$\cos B = \frac{1}{\sqrt{2}}$ のとき
2つの正の整数の積が $4 \cos^2 B = 2$ となるため、2つの整数の組は $(1, 2)$ または $(2, 1)$ である。 $\frac{2c \cos B}{a} = 1$ とすると、
$$ \frac{2c}{a} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} = 1 \implies a = \sqrt{2}c $$
$c=1$ とすると $a=\sqrt{2}$ となる。余弦定理より、
$$ b^2 = 1^2 + (\sqrt{2})^2 - 2 \cdot 1 \cdot \sqrt{2} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} = 1 + 2 - 2 = 1 $$
$b>0$ より $b=1$ となる。 これは $AB=1, CA=1$ の二等辺三角形であり、三平方の定理より $\angle A = 90^\circ$ の直角二等辺三角形であるから、条件を満たす。
(iii)
$\cos B = \frac{\sqrt{3}}{2}$ のとき
2つの正の整数の積が $4 \cos^2 B = 3$ となるため、2つの整数の組は $(1, 3)$ または $(3, 1)$ である。 $\frac{2c \cos B}{a} = 1$ とすると、
$$ \frac{2c}{a} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 1 \implies a = \sqrt{3}c $$
$c=1$ とすると $a=\sqrt{3}$ となる。余弦定理より、
$$ b^2 = 1^2 + (\sqrt{3})^2 - 2 \cdot 1 \cdot \sqrt{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 1 + 3 - 3 = 1 $$
$b>0$ より $b=1$ となる。 これは $AB=1, CA=1$ の二等辺三角形であり、$\angle A = 120^\circ$ の鈍角三角形であるが、$\angle B = 30^\circ$ と鋭角であるため条件を満たす。
解説
2つの未知数が含まれる式が「ともに整数である」という条件から、それらの「積」や「和」を考えて未知数を消去・制限する手法は整数問題における定石である。本問では2つの式の分母と分子に $AB$ と $BC$ が互い違いに現れるため、積をとることで辺の長さに関する情報が完全に消去され、$\cos B$ のみの式を導けることに気づけるかがポイントとなる。
また、(2) では求めた $\cos B$ の値から実際に三角形が構成できる(三角形の成立条件を満たす)ことを確認する必要がある。具体例を挙げるだけであれば、計算が容易になるように適当な値を代入して3辺の長さを求めればよい。
答え
(1)
題意より $4 \cos^2 B$ が整数となること、および $0 < 4 \cos^2 B < 4$ であることから示される。(詳細は解法を参照)
(2)
- $\cos B = \frac{1}{2}$ のとき:$AB=1, BC=1, CA=1$ の三角形
- $\cos B = \frac{1}{\sqrt{2}}$ のとき:$AB=1, BC=\sqrt{2}, CA=1$ の三角形
- $\cos B = \frac{\sqrt{3}}{2}$ のとき:$AB=1, BC=\sqrt{3}, CA=1$ の三角形
(※上記は一例であり、これらと相似な三角形であれば正解となる)
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