東京大学 1997年 理系 第4問 解説

方針・初手
光線が正三角形の辺で反射する問題では、三角形の内部で光線を折り返すのではなく、光線の軌跡を直進させ、代わりに三角形を各辺を軸にして鏡映反転させて平面に敷き詰める(三角格子をつくる)手法が定石である。 本問でも、出発点 $A$ を原点とする斜交座標系を導入し、光線の到達点である格子点の座標から到達する頂点と反射回数を求める方針をとる。
解法1
座標平面上に正三角形 $ABC$ の頂点 $A$ を原点 $(0,0)$ として置き、辺 $AB$ を $x$ 軸の正の向きにとる。 正三角形の1辺の長さを $1$ とすると、各頂点の座標は $A(0,0), B(1,0), C\left(\frac{1}{2}, \frac{\sqrt{3}}{2}\right)$ となる。 ここで、$\vec{e}_1 = \vec{AB} = (1,0)$ と $\vec{e}_2 = \vec{AC} = \left(\frac{1}{2}, \frac{\sqrt{3}}{2}\right)$ を基底とする斜交座標を導入する。 正三角形を平面に敷き詰めたときの各頂点(格子点)の位置ベクトル $\vec{p}$ は、整数 $m, n$ を用いて以下のように表される。
$$ \vec{p} = m\vec{e}_1 + n\vec{e}_2 $$
この点 $(m, n)$ の直交座標 $(x, y)$ は以下のようになる。
$$ (x, y) = \left( m + \frac{n}{2}, \frac{\sqrt{3}}{2}n \right) $$
光線は頂点 $A$ から辺 $AB$($x$ 軸)に対して角度 $\theta$ の方向へ直進するとみなせるので、その軌跡は直線 $y = (\tan\theta) x$ である。 点 $(m, n)$ がこの直線上にあるための条件は以下の通りである。
$$ \frac{\sqrt{3}}{2}n = \tan\theta \left( m + \frac{n}{2} \right) $$
次に、格子点 $(m, n)$ が元の正三角形の頂点 $A, B, C$ のどれに対応するかを分類する。 平面に敷き詰められた正三角形の格子において、任意の格子点に隣接する格子点は $(m \pm 1, n), (m, n \pm 1), (m \pm 1, n \mp 1)$ のいずれかである。 これらの点へ移動するとき、$m - n$ の値は $+1, -1, +2, -2$ のいずれかだけ変化するため、$m - n$ を $3$ で割った余りは必ず変化する。 隣り合う格子点は互いに異なる頂点($A, B, C$ のいずれか)となることと、$A(0,0)$ では $0-0 \equiv 0 \pmod 3$、$B(1,0)$ では $1-0 \equiv 1 \pmod 3$、$C(0,1)$ では $0-1 \equiv 2 \pmod 3$ であることから、各格子点は以下のように分類できる。
(i)
$m - n \equiv 0 \pmod 3$ のとき、頂点 $A$ (ii)
$m - n \equiv 1 \pmod 3$ のとき、頂点 $B$ (iii)
$m - n \equiv 2 \pmod 3$ のとき、頂点 $C$
(1)
$\tan\theta = \frac{\sqrt{3}}{4}$ のとき、格子点が直線上にある条件式に代入する。
$$ \frac{\sqrt{3}}{2}n = \frac{\sqrt{3}}{4} \left( m + \frac{n}{2} \right) $$
両辺を $\sqrt{3}$ で割り、$4$ を掛けて整理する。
$$ 2n = m + \frac{n}{2} $$
$$ 4n = 2m + n $$
$$ 3n = 2m $$
光線が初めて頂点に到達するのは、この等式を満たす正の整数 $(m, n)$ のうち、最も値が小さい組のときである。 これを満たす最小の正の整数の組は $m = 3, n = 2$ である。 このとき、$m - n = 3 - 2 = 1 \equiv 1 \pmod 3$ となるため、(ii) の条件より、この光線は頂点 $B$ に到達する。
(2)
$\tan\theta = \frac{\sqrt{3}}{6k+2}$ ($k$ は正の整数)のとき、条件式に代入する。
$$ \frac{\sqrt{3}}{2}n = \frac{\sqrt{3}}{6k+2} \left( m + \frac{n}{2} \right) $$
両辺に $\frac{2(6k+2)}{\sqrt{3}}$ を掛けて整理する。
$$ n(6k+2) = 2m + n $$
$$ (6k+1)n = 2m $$
$6k+1$ は奇数であり $2$ と互いに素であるから、$m$ は $6k+1$ の倍数となる。 よって $m = (6k+1)l$ ($l$ は正の整数)とおけ、このとき $n = 2l$ となる。 光線が初めて頂点に到達するのは $l = 1$ のときであり、到達する格子点は $(m, n) = (6k+1, 2)$ である。 このとき、$m - n = (6k+1) - 2 = 6k - 1 = 3(2k) - 1 \equiv 2 \pmod 3$ となるため、(iii) の条件より、この光線は頂点 $C$ に到達する。
次に、光線が到達するまでの反射回数を求める。 反射の回数は、始点 $(0,0)$ から終点 $(6k+1, 2)$ まで結んだ線分(両端を含まない)が、平面を敷き詰める正三角形の辺をなす直線群と交わる総数に等しい。 斜交座標 $(x,y)$ 平面において、これらの直線群は以下の3種類で表される。
(ア) 辺 $AB$ に平行な直線群:$y = j$ ($j$ は整数) (イ) 辺 $AC$ に平行な直線群:$x = j$ ($j$ は整数) (ウ) 辺 $BC$ に平行な直線群:$x + y = j$ ($j$ は整数)
光線の軌跡は終点が初めての格子点であるため、途中で複数の直線が交わる点(=格子点)を通ることはない。 したがって、各直線群との交点の数を単純に合計すればよい。 区間 $0 < x < 6k+1$, $0 < y < 2$ における交点の数はそれぞれ以下のようになる。
(ア)
$y = j$ との交点:$y=1$ の $1$ 個。 (イ)
$x = j$ との交点:$x=1, 2, \dots, 6k$ の $6k$ 個。 (ウ)
$x + y = j$ との交点:$x+y=1, 2, \dots, 6k+2$ の $6k+2$ 個。
これらを合計して、求める反射の回数は以下のようになる。
$$ 1 + 6k + (6k+2) = 12k + 3 $$
解説
ビリヤードのように長方形や正三角形の中で光線(または球)が反射する問題では、「枠を鏡映反転させて平面に敷き詰め、軌跡を直進させる」という解法が非常に有効である。 本問では斜交座標系を用いることで、直線の方程式や反射の回数を数える処理が格段にシンプルになる。 反射回数については、格子に引かれた3種類の平行線の群と何回交差するかを数え上げることで正確に求めることができる。途中で格子点を通らないことが保証されているため、重複して数えてしまう心配がない点もポイントである。
答え
(1)
頂点 $B$
(2)
到達する頂点は $C$、反射の回数は $12k+3$ 回
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