大阪大学 1965年 理系 第2問 解説

方針・初手
示すべき不等式の左辺を通分して変形し、$|x-y|$ をくくり出す方針と、関数 $f(t) = \frac{1}{t^2+1}$ を定めて平均値の定理を用いる方針が考えられる。 通分する場合は、残った因子の絶対値が $1$ より小さいことを不等式評価によって示す。平均値の定理を用いる場合は、導関数 $f'(t)$ の絶対値の最大値が $1$ より小さいことを示す。
解法1
与式の左辺の中身を通分して変形すると、
$$ \begin{aligned} \left| \frac{1}{x^2+1} - \frac{1}{y^2+1} \right| &= \left| \frac{(y^2+1)-(x^2+1)}{(x^2+1)(y^2+1)} \right| \\ &= \left| \frac{y^2-x^2}{(x^2+1)(y^2+1)} \right| \\ &= \frac{|x-y||x+y|}{(x^2+1)(y^2+1)} \end{aligned} $$
となる。ここで、任意の実数 $x, y$ に対して $\left( |x| - \frac{1}{2} \right)^2 \geqq 0$ および $\left( |y| - \frac{1}{2} \right)^2 \geqq 0$ が成り立つから、展開して整理すると、
$$ |x| \leqq x^2 + \frac{1}{4}, \quad |y| \leqq y^2 + \frac{1}{4} $$
が得られる。これと三角不等式 $|x+y| \leqq |x| + |y|$ を用いると、分子の $|x+y|$ は次のように評価できる。
$$ \begin{aligned} |x+y| &\leqq |x| + |y| \\ &\leqq \left( x^2 + \frac{1}{4} \right) + \left( y^2 + \frac{1}{4} \right) \\ &= x^2 + y^2 + \frac{1}{2} \\ &< x^2 + y^2 + 1 \end{aligned} $$
一方で、分母については $x^2 y^2 \geqq 0$ であるから、
$$ \begin{aligned} (x^2+1)(y^2+1) &= x^2 y^2 + x^2 + y^2 + 1 \\ &\geqq x^2 + y^2 + 1 \end{aligned} $$
となる。したがって、上の2つの不等式をあわせると、
$$ |x+y| < x^2 + y^2 + 1 \leqq (x^2+1)(y^2+1) $$
が得られる。すべての実数 $x, y$ に対して $(x^2+1)(y^2+1) > 0$ であるから、両辺を $(x^2+1)(y^2+1)$ で割ることで、
$$ \frac{|x+y|}{(x^2+1)(y^2+1)} < 1 $$
が示された。これと、問題の条件である $|x-y| < k$ を用いると、
$$ \begin{aligned} \left| \frac{1}{x^2+1} - \frac{1}{y^2+1} \right| &= \frac{|x+y|}{(x^2+1)(y^2+1)} |x-y| \\ &< 1 \cdot |x-y| \\ &< k \end{aligned} $$
となり、題意は示された。
解法2
関数 $f(t) = \frac{1}{t^2+1}$ とおく。$f(t)$ はすべての実数 $t$ で微分可能であり、その導関数は
$$ f'(t) = -\frac{2t}{(t^2+1)^2} $$
である。ここで、$|f'(t)|$ の最大値を求める。$|f'(t)| = \frac{2|t|}{(t^2+1)^2}$ であり、$g(t) = \frac{2t}{(t^2+1)^2} \ (t \geqq 0)$ とおいて増減を調べる。
$$ \begin{aligned} g'(t) &= \frac{2(t^2+1)^2 - 2t \cdot 2(t^2+1) \cdot 2t}{(t^2+1)^4} \\ &= \frac{2(t^2+1) - 8t^2}{(t^2+1)^3} \\ &= \frac{2(1-3t^2)}{(t^2+1)^3} \end{aligned} $$
$t \geqq 0$ における $g(t)$ の増減表は以下のようになる。
| $t$ | $0$ | $\cdots$ | $\frac{1}{\sqrt{3}}$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|
| $g'(t)$ | $+$ | $0$ | $-$ | |
| $g(t)$ | $0$ | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
よって、$g(t)$ は $t = \frac{1}{\sqrt{3}}$ で最大となる。その最大値は、
$$ g\left( \frac{1}{\sqrt{3}} \right) = \frac{\frac{2}{\sqrt{3}}}{\left( \frac{1}{3} + 1 \right)^2} = \frac{\frac{2}{\sqrt{3}}}{\frac{16}{9}} = \frac{3\sqrt{3}}{8} $$
ここで、$(3\sqrt{3})^2 = 27$ および $8^2 = 64$ より $3\sqrt{3} < 8$ であるから、$\frac{3\sqrt{3}}{8} < 1$ である。 したがって、すべての実数 $t$ に対して $|f'(t)| \leqq \frac{3\sqrt{3}}{8} < 1$ が成り立つ。
(i) $x = y$ のとき
与式の左辺は $0$ となる。条件 $|x-y| < k$ は $0 < k$ となり、このとき $0 < k$ は成り立つ。
(ii) $x \neq y$ のとき
区間 $[x, y]$ ($x > y$ の場合は $[y, x]$)において平均値の定理を適用すると、
$$ \frac{f(x) - f(y)}{x - y} = f'(c) $$
を満たす実数 $c$ が $x$ と $y$ の間に存在する。両辺の絶対値をとると、
$$ \left| \frac{f(x) - f(y)}{x - y} \right| = |f'(c)| $$
先ほどの評価より $|f'(c)| < 1$ であるから、
$$ \frac{|f(x) - f(y)|}{|x - y|} < 1 $$
すなわち、
$$ |f(x) - f(y)| < |x - y| $$
となる。仮定より $|x-y| < k$ であるから、
$$ |f(x) - f(y)| < k $$
となり、$\left| \frac{1}{x^2+1} - \frac{1}{y^2+1} \right| < k$ が示された。
(i), (ii) より、すべての実数 $x, y$ について題意は示された。
解説
差の絶対値の評価を行う証明問題である。 関数 $f(t)$ を定めて微積分学の定理を利用する解法(解法2)は、解析における定石である。$|f(x) - f(y)| \leqq M|x-y|$ を示すために、導関数の絶対値 $|f'(t)|$ の上限 $M$ を求めるという強力なアプローチであり、適用範囲が広い。 一方で、式変形による代数的な解法(解法1)をとる場合、因数分解したあとに残る式が $1$ 未満であることを示すための不等式評価を自力で構築する必要がある。$|x| \leqq x^2 + \frac{1}{4}$ のような評価式をうまく見つけ出せるかが鍵となる。
答え
題意は示された。
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