東北大学 1962年 文系 第2問 解説

方針・初手
2つの円が点で接するという条件から、まずは接点における「共通接線」を引くことが定石である。共通接線を引き、それぞれの円に対して接弦定理を用いることで、線分 $BC$ と線分 $DE$ が平行($BC \parallel DE$)であることを導くのが第一歩となる。
その後、$BC \parallel DE$ の条件のもとで、2直線 $BE$ と $CD$ の交点 $P$ の位置を特定する。初等幾何(チェバの定理・メネラウスの定理)を用いる方法と、ベクトルを用いて交点の位置ベクトルを計算する方法が考えられる。
解法1
点 $A$ における円 $O$ と円 $O'$ の共通接線を引き、直線 $AB$ に関して点 $C$ と反対側に接線上の点 $T$ をとる。
円 $O$ において、弦 $AB$ と接線 $AT$ に対して接弦定理を用いると、次の等式が成り立つ。
$$ \angle TAB = \angle ACB $$
また、円 $O'$ は辺 $AB, AC$ とそれぞれ交わるため、円 $O$ に内接している。円 $O'$ において、弦 $AD$ と接線 $AT$ に対して接弦定理を用いると、点 $E$ は円 $O'$ 上にあることから、次の等式が成り立つ。
$$ \angle TAD = \angle AED $$
ここで、点 $D$ は辺 $AB$ 上の点であるため、半直線 $AD$ と半直線 $AB$ は一致する。したがって $\angle TAD = \angle TAB$ であり、上の2式から次が導かれる。
$$ \angle AED = \angle ACB $$
同位角が等しいことから、直線 $BC$ と直線 $DE$ は平行である($BC \parallel DE$)。
次に、直線 $AP$ と辺 $BC$ の交点を $M$ とする。$\triangle ABC$ について、3直線 $AM, BE, CD$ は点 $P$ で1点に交わるため、チェバの定理より次が成り立つ。
$$ \frac{BD}{DA} \cdot \frac{AE}{EC} \cdot \frac{CM}{MB} = 1 $$
$BC \parallel DE$ であるため、$AD : DB = AE : EC$、すなわち $\frac{BD}{DA} = \frac{EC}{AE}$ が成り立つ。これを上の式に代入する。
$$ \frac{EC}{AE} \cdot \frac{AE}{EC} \cdot \frac{CM}{MB} = 1 $$
これより $\frac{CM}{MB} = 1$ となり、$CM = MB$ が得られる。したがって、点 $M$ は辺 $BC$ の中点であり、点 $P$ は頂点 $A$ と中点 $M$ を結ぶ中線 $AM$ 上にあることがわかる。
続いて、点 $P$ の線分 $AM$ 上での位置を調べる。$AD : AB = k : 1$ とおくと、点 $D, E$ がそれぞれ辺 $AB, AC$ 上(端点を除く)にあることから、$0 < k < 1$ である。 $\triangle ABM$ と直線 $CD$ について、メネラウスの定理より次が成り立つ。
$$ \frac{AD}{DB} \cdot \frac{BC}{CM} \cdot \frac{MP}{PA} = 1 $$
$AD : DB = k : 1-k$ であり、また点 $M$ は辺 $BC$ の中点であるから $\frac{BC}{CM} = 2$ である。これらを代入する。
$$ \frac{k}{1-k} \cdot 2 \cdot \frac{MP}{PA} = 1 $$
$$ \frac{PA}{MP} = \frac{2k}{1-k} $$
したがって、$PA : MP = 2k : 1-k$ となる。点 $P$ は線分 $AM$ 上の点であるため、$AM = PA + MP$ より次のように表せる。
$$ AP = \frac{2k}{2k + (1-k)} AM = \frac{2k}{1+k} AM $$
円 $O'$ を動かすとき、$k$ は $0 < k < 1$ の範囲をすべて動く。 $f(k) = \frac{2k}{1+k} = 2 - \frac{2}{1+k}$ とおくと、$f(k)$ は $0 < k < 1$ において単調増加し、$0 < f(k) < 1$ の範囲のすべての値をとる。
ゆえに、点 $P$ は線分 $AM$ 上を、両端の点 $A, M$ を含まずにすべて動く。
解法2
解法1と同様にして、接弦定理から $BC \parallel DE$ であることを示す。 $\overrightarrow{AB} = \overrightarrow{b}$、$\overrightarrow{AC} = \overrightarrow{c}$ とする。
$BC \parallel DE$ であり、点 $D, E$ はそれぞれ辺 $AB, AC$ 上にあるため、実数 $k$($0 < k < 1$)を用いて次のように表せる。
$$ \overrightarrow{AD} = k\overrightarrow{b}, \quad \overrightarrow{AE} = k\overrightarrow{c} $$
点 $P$ は線分 $BE$ 上にあるため、実数 $s$($0 < s < 1$)を用いて次のように表せる。
$$ \overrightarrow{AP} = (1-s)\overrightarrow{AB} + s\overrightarrow{AE} = (1-s)\overrightarrow{b} + sk\overrightarrow{c} $$
また、点 $P$ は線分 $CD$ 上にあるため、実数 $t$($0 < t < 1$)を用いて次のように表せる。
$$ \overrightarrow{AP} = (1-t)\overrightarrow{AC} + t\overrightarrow{AD} = tk\overrightarrow{b} + (1-t)\overrightarrow{c} $$
$\overrightarrow{b}$ と $\overrightarrow{c}$ は1次独立であるから、係数を比較して次の連立方程式を得る。
$$ \begin{cases} 1 - s = tk \\ sk = 1 - t \end{cases} $$
第2式より $t = 1 - sk$ であるから、これを第1式に代入する。
$$ 1 - s = (1 - sk)k $$
$$ 1 - s = k - sk^2 $$
$$ s(1 - k^2) = 1 - k $$
$0 < k < 1$ より $1 - k^2 \neq 0$ であるため、両辺を割る。
$$ s = \frac{1 - k}{(1 - k)(1 + k)} = \frac{1}{1 + k} $$
これを $\overrightarrow{AP}$ の式に代入する。
$$ \begin{aligned} \overrightarrow{AP} &= \left( 1 - \frac{1}{1+k} \right)\overrightarrow{b} + \frac{k}{1+k}\overrightarrow{c} \\ &= \frac{k}{1+k}\overrightarrow{b} + \frac{k}{1+k}\overrightarrow{c} \\ &= \frac{k}{1+k} (\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c}) \end{aligned} $$
辺 $BC$ の中点を $M$ とすると、$\overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} = 2\overrightarrow{AM}$ であるから、次のように書き換えられる。
$$ \overrightarrow{AP} = \frac{2k}{1+k} \overrightarrow{AM} $$
この式は、点 $P$ が線分 $AM$ 上にあることを示している。 円 $O'$ が条件を満たしながら動くとき、$k$ は $0 < k < 1$ の範囲をすべて動く。 このとき、係数 $\frac{2k}{1+k}$ は $0$ から $1$ までの値をすべてとるため、点 $P$ の軌跡は線分 $AM$ から両端を除いた部分となる。
解説
2つの円が接するという設定が登場した際は、「接点における共通接線を引く」ことが極めて有効な補助線となる。本問ではこれにより、一見すると無関係に見える弦 $DE$ が底辺 $BC$ と平行になるという図形的な構造が明らかになる。
$BC \parallel DE$ が見抜ければ、あとは「台形の対角線の交点」や「相似な三角形」の定石処理に帰着できる。チェバの定理・メネラウスの定理といった初等幾何の手法を用いても、ベクトルを用いて計算を進めても、簡潔に結論までたどり着くことができる良問である。また、極限の状況(円 $O'$ が点になる場合、円 $O$ と一致する場合)を考えることで、軌跡の端点が含まれないことを忘れずに確認したい。
答え
三角形 $ABC$ の辺 $BC$ の中点を $M$ とするとき、線分 $AM$(ただし、両端の点 $A, M$ を除く)。
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