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東北大学 1974年 理系 第5問 解説

数学A/確率数学B/確率分布・統計的推測数学A/場合の数テーマ/最大・最小
東北大学 1974年 理系 第5問 解説

方針・初手

(1) は、最も小さい数の組合せと最も大きい数の組合せを考えることで、$S$ の最小値と最大値を求めます。また、$S$ がその間のすべての整数値をとりうる理由を簡潔に示します。 (2) は、各カードの番号 $x$ に対して、$N+1-x$ を対応させる写像を考えることで、和が $m+k$ となる選び方と $M-k$ となる選び方が1対1に対応すること(対称性)を示します。 (3) は、(2) で示した確率の対称性を利用して期待値の定義式を変形するか、またはそれぞれのカードが選ばれる確率(期待値の線形性)を利用します。

解法1

(1)

$N$ 枚のカードから $n$ 枚を取り出したときの和 $S$ の最小値を $m$、最大値を $M$ とする。 最小値 $m$ は、1から $n$ までの最も小さい $n$ 枚を選んだときの和であるから、

$$ m = \sum_{i=1}^{n} i = \frac{1}{2}n(n+1) $$

最大値 $M$ は、$N-n+1$ から $N$ までの最も大きい $n$ 枚を選んだときの和であるから、

$$ M = \sum_{i=1}^{n} (N-n+i) = n(N-n) + \frac{1}{2}n(n+1) = \frac{1}{2}n(2N-n+1) $$

また、$S < M$ であるような任意の選び方において、選ばれたカードのうち $x$ があり、かつ $x+1$ が選ばれていないような $x$ が必ず存在する。このカード $x$ をカード $x+1$ と交換することで、和をちょうど $1$ だけ増やすことができる。 したがって、$S$ は $m$ から $M$ までのすべての整数値をとりうる。 よって、$S$ がとりうる値の範囲は、

$$ \frac{1}{2}n(n+1) \leqq S \leqq \frac{1}{2}n(2N-n+1) \quad (S \text{ は整数}) $$

(2)

1から $N$ までのカード全体からなる集合を $U$ とする。 $U$ から $n$ 枚を選ぶ組合せの1つを $A$ $(A \subset U, |A|=n)$ とし、$A$ に含まれるカードに書かれている数の和を $S(A)$ とする。

各カードの番号 $x \in A$ に対して、番号 $N+1-x$ のカードを対応させる。 $1 \leqq x \leqq N$ のとき $1 \leqq N+1-x \leqq N$ であり、この対応は $U$ から $U$ への全単射(1対1対応)である。 したがって、$A$ の各要素 $x$ を $N+1-x$ に置き換えて得られる集合を $A'$ とすると、$A'$ も $U$ の要素数 $n$ の部分集合となる。 このとき、$A'$ に含まれる数の和 $S(A')$ は、

$$ S(A') = \sum_{x \in A} (N+1-x) = n(N+1) - \sum_{x \in A} x = n(N+1) - S(A) $$

ここで、$n(N+1)$ について調べると、

$$ m + M = \frac{1}{2}n(n+1) + \frac{1}{2}n(2N-n+1) = \frac{1}{2}n(2N+2) = n(N+1) $$

であることがわかる。ゆえに、次が成り立つ。

$$ S(A') = (m+M) - S(A) $$

この関係式より、$S(A) = m+k$ となる集合 $A$ に対して、$S(A') = M-k$ となる集合 $A'$ が1対1に対応する。 したがって、$S = m+k$ となる選び方の総数と、$S = M-k$ となる選び方の総数は等しい。 $N$ 枚から $n$ 枚を選ぶ全事象の数は ${}_N \mathrm{C}_{n}$ で等しいから、それぞれの事象が起こる確率は等しい。 よって、$p_k = q_k$ が成り立つ。(証明終)

(3)

$S$ の期待値 $E(S)$ を求める。(2) の結果より、確率は $p_k = q_k$ である。 期待値の定義より、

$$ E(S) = \sum_{k=0}^{M-m} (m+k) p_k $$

また、$p_k = q_k$ を用いて順序を逆から足し合わせると、

$$ E(S) = \sum_{k=0}^{M-m} (M-k) q_k = \sum_{k=0}^{M-m} (M-k) p_k $$

これら2つの式を辺々足し合わせると、

$$ \begin{aligned} 2E(S) &= \sum_{k=0}^{M-m} (m+k) p_k + \sum_{k=0}^{M-m} (M-k) p_k \\ &= \sum_{k=0}^{M-m} (m+k+M-k) p_k \\ &= \sum_{k=0}^{M-m} (m+M) p_k \\ &= (m+M) \sum_{k=0}^{M-m} p_k \end{aligned} $$

ここで、$\sum_{k=0}^{M-m} p_k$ はすべての事象の確率の和であるから $1$ に等しい。 したがって、

$$ 2E(S) = m+M = n(N+1) $$

よって、

$$ E(S) = \frac{n(N+1)}{2} $$

解法2

(3) の別解

期待値の線形性を利用する。 カードを1枚ずつ順番に $n$ 回引く試行を考え(非復元抽出)、$i$ 番目に引いたカードの数字を確率変数 $X_i$ とする。 引く順番に関わらず、各回の試行で1から $N$ までのどのカードが引かれる確率も等しく $\frac{1}{N}$ である。 したがって、$X_i$ の期待値は、

$$ E(X_i) = \sum_{j=1}^{N} j \cdot \frac{1}{N} = \frac{1}{N} \cdot \frac{1}{2}N(N+1) = \frac{N+1}{2} $$

求める和 $S$ は $n$ 回引いたカードの数の和であるから、期待値の線形性より、

$$ \begin{aligned} E(S) &= E(X_1 + X_2 + \cdots + X_n) \\ &= E(X_1) + E(X_2) + \cdots + E(X_n) \\ &= \sum_{i=1}^{n} \frac{N+1}{2} \\ &= \frac{n(N+1)}{2} \end{aligned} $$

解説

場合の数・確率における「対称性」と「期待値の線形性(和の期待値は期待値の和)」という、大学入試で頻出かつ非常に重要な考え方を問う良問です。 (2) は、集合の各要素 $x$ を $N+1-x$ に変換する全単射写像を作ることで、和の分布が中央の値に対して対称であることを示す典型的な手法です。 (3) は、(2) で示した確率の対称性を用いて、等差数列の和の公式を導くときと同じ要領で式変形を行う解法1が問題の誘導に則った自然なアプローチです。一方で、指示変数や各回の期待値を考える解法2(期待値の線形性)は、確率分布の全体像に依存せずに計算できる強力な手法であり、(2) を解けなくても独立して答えを導き出すことができます。

答え

(1) $\frac{1}{2}n(n+1) \leqq S \leqq \frac{1}{2}n(2N-n+1)$ ($S$ は整数)

(2) 和が $S(A)$ となる $n$ 枚のカードの組合せに対して、各カードの数字 $x$ を $N+1-x$ に置き換えた $n$ 枚の組合せの和は $(m+M)-S(A)$ となり、これらは1対1に対応する。このことから $S = m+k$ となる場合の数と $S = M-k$ となる場合の数は等しく、全事象の数も等しいため $p_k = q_k$ が成り立つ。(証明の詳細は本文参照)

(3) $E(S) = \frac{n(N+1)}{2}$

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