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東京工業大学 1966年 理系 第5問 解説

数学C/複素数平面数学1/命題と集合数学A/整数問題テーマ/整数の証明テーマ/場合分け
東京工業大学 1966年 理系 第5問 解説

方針・初手

相異なる3つの複素数からなる集合を $S = \{a, b, c\}$ とおき、$S$ が積について閉じているという条件として定式化する。 複素数の中に $0$ が含まれるかどうかで積の振る舞いが大きく変わるため、$S$ が $0$ を含む場合と含まない場合で場合分けを行って調べる。

解法1

相異なる3つの複素数からなる集合を $S = \{a, b, c\}$ とする。 条件より、任意の $x, y \in S$ ($x = y$ も許す)について $xy \in S$ が成り立つ。 $a, b, c$ は相異なるため、$S$ の中に $0$ は高々1つしか存在しない。

(i) $S$ が $0$ を含む場合

$a = 0$ としても一般性を失わない。このとき $S = \{0, b, c\}$ であり、$b, c$ は $0$ でない相異なる複素数である。 条件より積 $bc$ も $S$ の要素であるから、$bc \in \{0, b, c\}$ である。

$b \neq 0$ かつ $c \neq 0$ より $bc \neq 0$ であるから、$bc = b$ または $bc = c$ のいずれかである。 $bc = b$ のとき、両辺を $b$ で割って $c = 1$ となる。 $bc = c$ のとき、両辺を $c$ で割って $b = 1$ となる。 対称性から $c = 1$ として一般性を失わない。このとき $S = \{0, b, 1\}$ ($b \neq 0, 1$)となる。

次に積 $b^2$ を考えると、$b^2 \in \{0, b, 1\}$ である。 $b^2 = 0$ のとき、$b = 0$ となり不適。 $b^2 = b$ のとき、$b(b - 1) = 0$ より $b = 0, 1$ となり不適。 よって $b^2 = 1$ であり、$b \neq 1$ であるから $b = -1$ である。 このとき $S = \{0, -1, 1\}$ となる。

実際にこの集合の要素同士の積をとると、

$$0^2 = 0, \quad (-1)^2 = 1, \quad 1^2 = 1$$

$$0 \cdot (-1) = 0, \quad 0 \cdot 1 = 0, \quad (-1) \cdot 1 = -1$$

となり、すべて $S$ に含まれるため条件を満たす。

(ii) $S$ が $0$ を含まない場合

$a, b, c$ はすべて $0$ ではない。 集合 $S$ の各要素に $a$ をかけた集合 $aS = \{a^2, ab, ac\}$ を考える。

条件より $a^2, ab, ac$ はすべて $S$ の要素であるから、$aS \subset S$ である。 また、$a \neq 0$ であるため、$a, b, c$ が相異なるならば、それに $a$ をかけた $a^2, ab, ac$ も互いに相異なる。 したがって、$aS$ は $S$ の要素を並べ替えただけの集合に等しい。 よって、両集合のすべての要素の積は等しくなるので、

$$a^2 \cdot ab \cdot ac = a \cdot b \cdot c$$

$$a^4 bc = abc$$

$abc \neq 0$ であるから、両辺を $abc$ で割ると

$$a^3 = 1$$

となる。同様にして、各要素に $b$ および $c$ をかけた集合を考えることで

$$b^3 = 1, \quad c^3 = 1$$

が得られる。 すなわち、$a, b, c$ は方程式 $z^3 = 1$ を満たす解である。 $z^3 = 1$ の解は $z = 1, \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$ の3個であり、$a, b, c$ は相異なるため、集合 $S$ はこの3つの解すべてからなる集合と完全に一致する。 よって

$$S = \left\{ 1, \frac{-1 + \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 - \sqrt{3}i}{2} \right\}$$

である。 これらは1の3乗根であり、任意の2つの1の3乗根の積もまた1の3乗根となるため、条件を満たす。

以上**(i)**, **(ii)**より、求める3数の組は $\{0, 1, -1\}$ と $\left\{ 1, \frac{-1 + \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 - \sqrt{3}i}{2} \right\}$ の2組である。

解法2

(ii) $S$ が $0$ を含まない場合の別解

$0$ を含まないとき、$a, b, c$ はすべて $0$ ではない。 $a \in S$ を1つ選び、その累乗 $a, a^2, a^3, \dots$ を考える。 これらは積について閉じているためすべて $S$ の要素であるが、$S$ は要素数3の有限集合である。 したがって、ある自然数 $k > l$ が存在して $a^k = a^l$ となる。 $a \neq 0$ より両辺を $a^l$ で割ると $a^{k-l} = 1$ となる。 ここで $a, a^2, \dots$ はすべて $S$ に属し、積も $S$ に属するため、$1 \in S$ であることがわかる。

$a = 1$ としても一般性を失わない。このとき $S = \{1, b, c\}$ ($b, c$ は $1$ でない相異なる複素数)となる。 積 $bc$ について、$bc \in \{1, b, c\}$ である。 $bc = b$ のとき $c = 1$ となり不適。$bc = c$ のとき $b = 1$ となり不適。 よって $bc = 1$ である。

次に積 $b^2$ について、$b^2 \in \{1, b, c\}$ を考える。 $b^2 = 1$ のとき $b = \pm 1$ となるが、$b \neq 1$ より $b = -1$。このとき $bc = 1$ より $c = -1$ となり相異なることに矛盾する。 $b^2 = b$ のとき $b(b - 1) = 0$ より $b = 0, 1$ となり不適。 よって $b^2 = c$ である。

これと $bc = 1$ より、$b \cdot b^2 = 1$ すなわち $b^3 = 1$ を得る。

$$b^3 - 1 = (b - 1)(b^2 + b + 1) = 0$$

であり、$b \neq 1$ であるから $b^2 + b + 1 = 0$。 これを解くと、$b = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$ を得る。 このとき $c = b^2 = \frac{-1 \mp \sqrt{3}i}{2}$ となる(複号同順)。

よって $S = \left\{ 1, \frac{-1 + \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 - \sqrt{3}i}{2} \right\}$ となり、これは条件を満たす。

解説

有限集合が積について閉じているという代数的な構造を問う問題である。 一般に、$0$ を含まない有限集合が積について閉じている場合、その集合は乗法群をなし、「1の $n$ 乗根」の集合に一致する。この背景知識があると、$0$ を含まない場合は即座に「1の3乗根だ」と予想がつく。

解法1では、「集合の各要素に同じ数を掛けても全体としては元の集合に一致する」という全単射性を利用して、鮮やかに $z^3 = 1$ を導いている。高校数学の範囲でも記述しやすく、非常に見通しが良い。 解法2は、有限集合の累乗には必ず循環が起こることを利用して単位元 $1$ の存在を示し、要素の条件を直接求めていく堅実な方法である。 どちらのアプローチでも、$0$ が含まれる場合の処理を見落とさないように注意したい。

答え

$$\{0, 1, -1\}, \quad \left\{ 1, \frac{-1 + \sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 - \sqrt{3}i}{2} \right\}$$

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