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東京工業大学 1970年 理系 第3問 解説

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東京工業大学 1970年 理系 第3問 解説

方針・初手

条件 (ii) の式 $z - 2w\cos\theta$ を、$z$ と $w$ のみの式で表すことを目指す。$\theta$ は $\frac{z}{w}$ の偏角であるため、極形式を用いて $\frac{z}{w} = \cos\theta + i\sin\theta$ の関係から式変形を行うことが第一歩となる。その結果得られる簡潔な条件を用いて、要素数が $4$ 以下の集合 $S$ の候補を絞り込んでいく。

解法1

$z, w \in S$ とする。$S$ は絶対値 $1$ の複素数の集合であるから、$|z|=|w|=1$ であり、$\left|\frac{z}{w}\right|=1$ となる。

$\theta$ は $\frac{z}{w}$ の偏角であるため、極形式で次のように表せる。

$$ \frac{z}{w} = \cos\theta + i\sin\theta $$

両辺に $w$ を掛けると、

$$ z = w\cos\theta + iw\sin\theta $$

となる。これを用いて、条件 (ii) にある $z - 2w\cos\theta$ を変形する。

$$ \begin{aligned} z - 2w\cos\theta &= (w\cos\theta + iw\sin\theta) - 2w\cos\theta \\ &= -w\cos\theta + iw\sin\theta \\ &= -w(\cos\theta - i\sin\theta) \end{aligned} $$

ここで、$\cos\theta - i\sin\theta = \cos(-\theta) + i\sin(-\theta)$ であり、これは $\frac{z}{w}$ の逆数(あるいは共役複素数)に等しい。すなわち、

$$ \cos\theta - i\sin\theta = \left(\frac{z}{w}\right)^{-1} = \frac{w}{z} $$

したがって、

$$ z - 2w\cos\theta = -w \cdot \frac{w}{z} = -\frac{w^2}{z} $$

以上より、条件 (ii) は次の条件 (ii)' と同値であることがわかる。

(ii)' $z, w \in S$ ならば $-\frac{w^2}{z} \in S$ である。

次に、この条件を満たす要素数 $n$ ($n \leqq 4$)の集合 $S$ を求める。

条件 (i) より $1 \in S$ である。 (ii)' において $z=1, w=1$ とすると、$-\frac{1^2}{1} = -1 \in S$ となる。 よって、$S$ は少なくとも $1$ と $-1$ を要素に持つため、$n \geqq 2$ である。

(1) $n=2$ のとき

$S = \{1, -1\}$ である。 任意の $z, w \in \{1, -1\}$ について、$w^2 = 1$、$z \in \{1, -1\}$ より $-\frac{w^2}{z} = -\frac{1}{\pm 1} = \mp 1 \in S$ となる。 よって、これは条件を満たす。

(2) $n=3$ のとき

$S = \{1, -1, a\}$ (ただし $a$ は $|a|=1$ を満たす $\pm 1$ 以外の複素数)と表せる。 (ii)' において $z=a, w=a$ とすると、$-\frac{a^2}{a} = -a \in S$ となる。 しかし、$S$ の要素数は $3$ なので、$-a$ は $1, -1, a$ のいずれかと等しくなければならない。

よって、$n=3$ となる集合 $S$ は存在しない。

(3) $n=4$ のとき

$n=3$ の議論から、任意の要素 $a \in S$ に対して必ず $-a \in S$ となることがわかる。 したがって、$S = \{1, -1, a, -a\}$ (ただし $a$ は $|a|=1$ を満たす $\pm 1$ 以外の複素数)と表せる。 (ii)' において $z=1, w=a$ とすると、$-\frac{a^2}{1} = -a^2 \in S$ となる。 したがって、$-a^2$ は $1, -1, a, -a$ のいずれかである。

ゆえに $a = \pm i$ のみが適し、集合の候補は $S = \{1, -1, i, -i\}$ と定まる。 これが条件を満たすか確認する。 $S$ の要素は $i^k$ ($k=0,1,2,3$)の形で表せる。 任意の $z=i^p, w=i^q$ ($p, q \in \mathbb{Z}$)について、

$$ -\frac{w^2}{z} = -\frac{(i^q)^2}{i^p} = -i^{2q-p} = i^2 \cdot i^{2q-p} = i^{2q-p+2} $$

$2q-p+2$ は整数なので、この値も $i$ の整数乗となり、$S$ に属する。 よって、この $S$ は条件を満たす。

以上から、$n \leqq 4$ を満たす集合 $S$ は $\{1, -1\}$ と $\{1, -1, i, -i\}$ である。

解説

本問の最大のポイントは、条件 (ii) に現れる式 $z - 2w\cos\theta$ が $-\frac{w^2}{z}$ と等しいことを見抜けるかどうかにあります。$\theta$ の定義から $z = w(\cos\theta + i\sin\theta)$ を導き出し、代入して計算を進めることでシンプルな形に変形できます。

幾何学的には、$z - 2w\cos\theta$ は複素数平面において「点 $z$ を、原点と $w$ を結ぶ直線に関して対称移動した点($\frac{w^2}{z}$)を、さらに原点に関して対称移動($180^\circ$ 回転)した点」を意味しています。

この同値変形さえできれば、あとは $S$ の要素数が少ないことを利用してしらみつぶしに候補を絞るだけです。$w \in S$ ならば $-w \in S$ が導かれるため、集合の要素数 $n$ が奇数になることはなく、$n=2, 4$ のみに絞られることも、解答の見通しを良くしています。

答え

$S = \{1, -1\}, \quad \{1, -1, i, -i\}$

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