東京工業大学 2009年 理系 第3問 解説

方針・初手
2次方程式の解の配置問題としてアプローチする。放物線 $y = x^2 - nx + m$ の軸の位置が条件 $n \le 2N$ によって制限されていることに着目し、グラフの概形から条件を絞り込む方法(解法1)と、解の公式を用いて代数的に条件を同値変形していく方法(解法2)が考えられる。
解法1
関数 $f(x) = x^2 - nx + m$ とおく。放物線 $y = f(x)$ は下に凸であり、その軸は $x = \frac{n}{2}$ である。
問題の条件より、$m, n$ は $2N$ 以下の正の整数であるため、軸について以下の不等式が成り立つ。
$$ \frac{n}{2} \le \frac{2N}{2} = N $$
方程式 $f(x) = 0$ が実数解をもつとき、それらを $\alpha, \beta$ ($\alpha \le \beta$) とおく。 軸が $x \le N$ の範囲にあるため、大きい方の解 $\beta$ が $N$ 以上($\beta \ge N$)であるならば、もう一つの解 $\alpha$ は $\alpha \le N$ となる。 したがって $\alpha \le N \le \beta$ となり、放物線が下に凸であることから、この条件は $f(N) \le 0$ と同値である。 逆に $f(N) \le 0$ のとき、区間 $[N, \infty)$ において少なくとも1つの実数解が存在することが保証される。 よって、$f(x) = 0$ が $N$ 以上の実数解をもつための必要十分条件は $f(N) \le 0$ である。
$$ N^2 - nN + m \le 0 $$
これを $m$ について解くと、
$$ m \le nN - N^2 $$
これと $m \le 2N$ より、$m$ の取り得る値の範囲は以下のようになる。
$$ 1 \le m \le \min(2N, nN - N^2) $$
また、$m \ge 1$ であるから $nN - N^2 \ge 1$ が必要であり、これを解くと $n > N$ となる。 $n$ は整数であるから、$n \ge N+1$ である。 次に、$nN - N^2$ と $2N$ の大小を比較する。
$$ nN - N^2 \ge 2N \iff nN \ge N^2 + 2N \iff n \ge N+2 $$
これに従って、$n$ の範囲を分ける。
(i) $N \ge 2$ の場合
$N+2 \le 2N$ が成り立つため、$n$ は $n=N+1$ の場合と $N+2 \le n \le 2N$ の場合に分けられる。
・$n = N+1$ のとき $nN - N^2 = (N+1)N - N^2 = N$ であり、$N \le 2N$ であるから、$1 \le m \le N$ となる。 条件を満たす $m$ は $N$ 個である。
・$N+2 \le n \le 2N$ のとき $nN - N^2 \ge 2N$ であるから、$m$ の上限は $2N$ となり、$1 \le m \le 2N$ を満たす。 このような $n$ は $(2N) - (N+2) + 1 = N-1$ 個あり、それぞれに対して $m$ は $2N$ 個ある。 したがって、条件を満たす組は全部で
$$ N + 2N(N-1) = 2N^2 - N \text{ (組)} $$
(ii) $N = 1$ の場合
$n \le 2N = 2$ であり、$n \ge N+1 = 2$ と合わせて $n=2$ のみとなる。 $n=2$ のとき、$nN - N^2 = 1$ であり、$1 \le m \le 1$ より $m=1$ である。 よって $(m, n) = (1, 2)$ の $1$ 組のみ存在する。 これは (i) の結果 $2N^2 - N$ に $N=1$ を代入した値と一致する。
以上より、すべての正の整数 $N$ に対して、条件を満たす組の数は $2N^2 - N$ 組となる。
解法2
2次方程式の解の公式より、実数解をもつ条件は判別式 $D = n^2 - 4m \ge 0$ であり、このとき解は以下で与えられる。
$$ x = \frac{n \pm \sqrt{n^2 - 4m}}{2} $$
大きい方の解が $N$ 以上であればよいので、
$$ \frac{n + \sqrt{n^2 - 4m}}{2} \ge N $$
これを変形して、
$$ \sqrt{n^2 - 4m} \ge 2N - n $$
ここで、問題の条件から $n \le 2N$ であるため、右辺について $2N - n \ge 0$ が成り立つ。 両辺はともに非負であるから、2乗しても同値性は保たれる。
$$ n^2 - 4m \ge (2N - n)^2 $$
$$ n^2 - 4m \ge 4N^2 - 4Nn + n^2 $$
$$ -4m \ge 4N^2 - 4Nn $$
$$ m \le nN - N^2 $$
なお、この不等式を満たすとき、
$$ n^2 - 4m \ge n^2 - 4(nN - N^2) = n^2 - 4Nn + 4N^2 = (n - 2N)^2 \ge 0 $$
となり、実数解をもつ条件 $D \ge 0$ も自動的に満たされることがわかる。 したがって、求める条件は $m \le nN - N^2$ となり、解法1と全く同じ不等式が得られる。 これ以降の $(m, n)$ の組の数え上げは解法1と同様に行い、$2N^2 - N$ 組を得る。
解説
解の配置として視覚的に捉える方法と、解の公式から代数的に処理する方法の2つが有力な解法となる。どちらのアプローチでも、「軸の位置」や「右辺が非負であること」など、$n \le 2N$ という条件を上手く活用できるかが論理の同値性を保つ鍵になる。 また、数え上げにおいては $nN - N^2$ と $2N$ の大小関係が変わる境界($n = N+2$)を見極め、適切に場合分けを行う処理能力が問われている。
答え
$2N^2 - N$ 組
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