東京工業大学 2012年 理系 第6問 解説

方針・初手
求める立体は、四面体 $PABC$ のうち円柱 $x^2 + y^2 \geqq 1$ の外部(境界を含む)にある部分である。
四面体 $PABC$ の頂点の座標を確認すると、$A, B, C$ は $xy$ 平面上にあり、重心が原点に一致する正三角形をなしている。点 $P$ は $z$ 軸上にあるため、この四面体は $z$ 軸周りに $120^\circ$ の回転対称性をもつ。
体積を求める方針として、以下の2つが考えられる。 1つは、$z$ 軸に垂直な平面 $z=t$ で立体を切断し、その断面積を $t$ で積分する方針である。 もう1つは、回転対称性を利用し、極座標(円柱座標)を用いて領域を立式し、直接重積分を行う方針である。
解法1
$xy$ 平面上の $\triangle ABC$ は、重心が原点 $(0,0,0)$ である正三角形である。外接円の半径は $2$、内接円の半径は $1$ である。 点 $P$ は $P(0, 0, 2)$ であるから、四面体 $PABC$ を平面 $z=t$ ($0 \leqq t \leqq 2$)で切断した切り口の図形 $T_t$ は、原点を中心とする正三角形となる。 $T_t$ は底面 $\triangle ABC$ と相似であり、相似比は $(2-t) : 2$ である。 したがって、$T_t$ の内接円の半径 $r(t)$ は以下のようになる。
$$ r(t) = 1 \times \frac{2-t}{2} = 1 - \frac{t}{2} $$
求める体積を構成する平面 $z=t$ における断面積 $S(t)$ は、正三角形 $T_t$ のうち、単位円 $x^2 + y^2 \geqq 1$ に含まれる部分の面積である。
(i) $1 \leqq t \leqq 2$ のとき
$r(t) \leqq \frac{1}{2}$ であり、$T_t$ の外接円の半径は $2 r(t) \leqq 1$ となる。 すなわち、$T_t$ は完全に単位円 $x^2 + y^2 \leqq 1$ の内部に含まれるため、$S(t) = 0$ である。
(ii) $0 \leqq t \leqq 1$ のとき
$\frac{1}{2} \leqq r(t) \leqq 1$ となり、$T_t$ の外接円の半径は $1$ 以上となるため、$T_t$ の3つの頂点付近が単位円の外側にはみ出す。 このはみ出した部分は合同な3つの領域からなる。そのうち1つの面積を求める。
原点 $O$、ある頂点 $A_t$、および $T_t$ の辺と単位円の交点を $P_1, P_2$ とし、$O$ から辺への垂線の足を $H_1$ とする。 $\triangle O A_t H_1$ は辺の比が $1:2:\sqrt{3}$ の直角三角形であり、$OH_1 = r(t)$ である。 単位円の半径は $1$ であるから、$\triangle O P_1 H_1$ において三平方の定理より $P_1 H_1 = \sqrt{1 - r(t)^2}$ となる。
はみ出した部分1つ分の面積は、四角形 $O P_1 A_t P_2$ の面積から扇形 $O P_1 P_2$ の面積を引いたものである。 四角形 $O P_1 A_t P_2$ の面積は、直角三角形 $\triangle O A_t H_1$ の面積の2倍から、直角三角形 $\triangle O P_1 H_1$ の面積の2倍を引いたものに等しい。
$$ \text{四角形の面積} = 2 \times \frac{1}{2} \cdot r(t) \cdot \sqrt{3} r(t) - 2 \times \frac{1}{2} \cdot r(t) \cdot \sqrt{1 - r(t)^2} = \sqrt{3} r(t)^2 - r(t) \sqrt{1 - r(t)^2} $$
扇形 $O P_1 P_2$ の中心角は $2 \left( \frac{\pi}{3} - \arccos r(t) \right)$ であるため、その面積は以下のようになる。
$$ \text{扇形の面積} = \frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot 2 \left( \frac{\pi}{3} - \arccos r(t) \right) = \frac{\pi}{3} - \arccos r(t) $$
これらを引いて3倍することで、$S(t)$ を得る。
$$ S(t) = 3 \left( \sqrt{3} r(t)^2 - r(t) \sqrt{1 - r(t)^2} - \frac{\pi}{3} + \arccos r(t) \right) $$
求める体積 $V$ は $S(t)$ を $t$ について $0$ から $1$ まで積分したものである。 $r = 1 - \frac{t}{2}$ と置換すると、$dt = -2 dr$ であり、積分区間は $1$ から $\frac{1}{2}$ となる。
$$ V = \int_0^1 S(t) dt = 2 \int_{1/2}^1 3 \left( \sqrt{3} r^2 - r \sqrt{1 - r^2} - \frac{\pi}{3} + \arccos r \right) dr $$
各項の積分を実行する。
$$ \int 3 \sqrt{3} r^2 dr = \sqrt{3} r^3 $$
$$ \int -3 r \sqrt{1 - r^2} dr = (1 - r^2)^{3/2} $$
$$ \int -\pi dr = -\pi r $$
$$ \int 3 \arccos r dr = 3 \left( r \arccos r - \sqrt{1 - r^2} \right) $$
これらの和を $F(r)$ とおく。
$$ F(r) = \sqrt{3} r^3 + (1 - r^2)^{3/2} - \pi r + 3 r \arccos r - 3 \sqrt{1 - r^2} $$
上端 $r=1$ と下端 $r=\frac{1}{2}$ を代入する。
$$ F(1) = \sqrt{3} + 0 - \pi + 0 - 0 = \sqrt{3} - \pi $$
$$ F\left(\frac{1}{2}\right) = \frac{\sqrt{3}}{8} + \frac{3\sqrt{3}}{8} - \frac{\pi}{2} + \frac{3}{2} \cdot \frac{\pi}{3} - \frac{3\sqrt{3}}{2} = -\sqrt{3} $$
したがって、求める体積 $V$ は以下のように計算される。
$$ V = 2 \left( F(1) - F\left(\frac{1}{2}\right) \right) = 2 \left( \sqrt{3} - \pi - (-\sqrt{3}) \right) = 4\sqrt{3} - 2\pi $$
解法2
四面体 $PABC$ は $z$ 軸周りに $120^\circ$ の回転対称性をもつため、平面 $PAB$ と $xy$ 平面に囲まれた領域における体積を計算し、それを3倍する。
3点 $P(0, 0, 2), A(0, 2, 0), B(\sqrt{3}, -1, 0)$ を通る平面の方程式を求める。 $y, z$ 切片が $2$ であることから、$\frac{y}{2} + \frac{z}{2} + cx = 1$ とおける。 点 $B$ の座標を代入して $c$ を求めると、$c = \frac{\sqrt{3}}{2}$ となるため、平面 $PAB$ の方程式は以下のようになる。
$$ \sqrt{3}x + y + z = 2 \implies z = 2 - \sqrt{3}x - y $$
平面 $PAB$ の下側かつ $z \geqq 0$ の領域は、底面において $\sqrt{3}x + y \leqq 2$ をみたす。 ここで極座標 $x = r \cos \theta, y = r \sin \theta$ を導入する。条件は以下のようになる。
$$ r (\sqrt{3} \cos \theta + \sin \theta) \leqq 2 \implies 2 r \sin\left(\theta + \frac{\pi}{3}\right) \leqq 2 \implies r \sin\left(\theta + \frac{\pi}{3}\right) \leqq 1 $$
求める体積は $x^2 + y^2 \geqq 1$ をみたす部分なので、$r \geqq 1$ である。 点 $A$ と点 $B$ の偏角を考慮すると、積分する $\theta$ の範囲は $-\frac{\pi}{6} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2}$ である。 これらを統合すると、積分領域は $1 \leqq r \leqq \frac{1}{\sin\left(\theta + \frac{\pi}{3}\right)}$ となる。
求める体積 $V$ は以下の重積分で表される。
$$ V = 3 \int_{-\pi/6}^{\pi/2} d\theta \int_1^{1/\sin(\theta+\pi/3)} (2 - \sqrt{3} r \cos \theta - r \sin \theta) r dr $$
被積分関数は $(2 - 2 r \sin(\theta + \pi/3)) r$ である。 ここで $\phi = \theta + \frac{\pi}{3}$ と置換すると、$d\theta = d\phi$ であり、積分区間は $\frac{\pi}{6} \leqq \phi \leqq \frac{5\pi}{6}$ となる。
$$ V = 3 \int_{\pi/6}^{5\pi/6} d\phi \int_1^{1/\sin\phi} (2r - 2r^2 \sin\phi) dr $$
まず内側の $r$ についての積分を実行する。
$$ \int_1^{1/\sin\phi} (2r - 2r^2 \sin\phi) dr = \left[ r^2 - \frac{2}{3} r^3 \sin\phi \right]_1^{1/\sin\phi} $$
$$ = \left( \frac{1}{\sin^2\phi} - \frac{2}{3} \cdot \frac{1}{\sin^2\phi} \right) - \left( 1 - \frac{2}{3} \sin\phi \right) = \frac{1}{3\sin^2\phi} - 1 + \frac{2}{3} \sin\phi $$
次に $\phi$ についての積分を実行する。被積分関数は $\phi = \frac{\pi}{2}$ に関して対称であるため、$\frac{\pi}{6}$ から $\frac{\pi}{2}$ までの積分を2倍すればよい。
$$ V = 6 \int_{\pi/6}^{\pi/2} \left( \frac{1}{3\sin^2\phi} - 1 + \frac{2}{3} \sin\phi \right) d\phi $$
不定積分は以下のようになる。
$$ \int \left( \frac{1}{3\sin^2\phi} - 1 + \frac{2}{3} \sin\phi \right) d\phi = -\frac{1}{3} \frac{\cos\phi}{\sin\phi} - \phi - \frac{2}{3} \cos\phi $$
上端 $\phi = \frac{\pi}{2}$ と下端 $\phi = \frac{\pi}{6}$ を代入して計算する。
$$ \phi = \frac{\pi}{2} \text{ のとき: } 0 - \frac{\pi}{2} - 0 = -\frac{\pi}{2} $$
$$ \phi = \frac{\pi}{6} \text{ のとき: } -\frac{1}{3} \cdot \sqrt{3} - \frac{\pi}{6} - \frac{2}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = -\frac{2\sqrt{3}}{3} - \frac{\pi}{6} $$
これらを差し引く。
$$ V = 6 \left( -\frac{\pi}{2} - \left( -\frac{2\sqrt{3}}{3} - \frac{\pi}{6} \right) \right) = 6 \left( \frac{2\sqrt{3}}{3} - \frac{\pi}{3} \right) = 4\sqrt{3} - 2\pi $$
解説
空間図形の体積を求める典型的な問題であるが、円柱によるくり抜きが含まれるため、積分の立式が問われる。 解法1のように $z$ 軸に垂直な平面で切断する方針は最も自然なアプローチであるが、切り口の正三角形と円の共通部分の面積を求める図形的な考察が必要となり、計算量がやや多くなる。 一方で、解法2のように極座標(円柱座標)を用いて重積分を行う方針をとると、図形の対称性がそのまま積分区間に反映され、複雑な図形考察を回避して機械的な計算で答えに辿り着くことができる。空間における対称性の高い図形の体積計算では、極座標の利用が非常に強力な武器となる。
答え
$$ 4\sqrt{3} - 2\pi $$
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