東京大学 2004年 理系 第5問 解説

方針・初手
球の和集合の体積を求めるため、中心間の距離 $r$ の値によって場合分けを行う。球の半径はともに $1$ であるため、$r \ge 2$ の場合は球が重ならず、$0 < r < 2$ の場合は球が交わる。交わる場合は、対称性を利用して共通部分の体積を積分により求め、全体の体積から引くことで $V$ を計算する。(2)は(1)で求めた関数を用いて方程式を立て、与えられた $\pi$ の範囲を用いて境界値($r=1.45$ および $r=1.5$ など)における体積を評価し、$r$ の範囲を絞り込む。
解法1
(1)
球 $A$ の半径は $1$、中心は $O(0,0,0)$ である。 球 $B$ の半径は $1$、中心は $P(r,0,0)$ である。 それぞれの球の体積は $\frac{4}{3}\pi$ である。
(i)
$r \ge 2$ のとき
中心間の距離が半径の和 $1+1=2$ 以上となるため、球 $A$ と球 $B$ は内部で交わらない。 したがって、和集合の体積 $V$ は2つの球の体積の和となる。
$$ V = \frac{4}{3}\pi \times 2 = \frac{8}{3}\pi $$
(ii)
$0 < r < 2$ のとき
球 $A$ と球 $B$ は交わり、共通部分をもつ。 $x$ 軸に垂直な平面 $x=t$ による切り口を考える。 球 $A$ と球 $B$ は平面 $x = \frac{r}{2}$ に関して対称であるから、共通部分は $\frac{r}{2} \le x \le 1$ の範囲にある球 $A$ の部分と、対称なもう半分の和として求められる。
球 $A$ を平面 $x=t$ で切った断面の円の半径の2乗は $1-t^2$ であるから、$\frac{r}{2} \le x \le 1$ における球 $A$ の体積 $W$ は、
$$ W = \int_{\frac{r}{2}}^1 \pi(1-t^2) dt = \pi \left[ t - \frac{t^3}{3} \right]_{\frac{r}{2}}^1 $$
$$ W = \pi \left( 1 - \frac{1}{3} - \frac{r}{2} + \frac{r^3}{24} \right) = \pi \left( \frac{2}{3} - \frac{r}{2} + \frac{r^3}{24} \right) $$
球 $A$ と球 $B$ の共通部分の体積は $2W$ である。 和集合の体積 $V$ は、2つの球の体積の和から共通部分の体積を引いたものであるから、
$$ V = \frac{8}{3}\pi - 2W $$
$$ V = \frac{8}{3}\pi - 2\pi \left( \frac{2}{3} - \frac{r}{2} + \frac{r^3}{24} \right) $$
$$ V = \pi \left( \frac{8}{3} - \frac{4}{3} + r - \frac{r^3}{12} \right) = \pi \left( -\frac{1}{12}r^3 + r + \frac{4}{3} \right) $$
以上より、$V$ を $r$ の関数として表すと、
$$ V(r) = \begin{cases} \pi \left( -\frac{1}{12}r^3 + r + \frac{4}{3} \right) & (0 < r < 2) \\ \frac{8}{3}\pi & (r \ge 2) \end{cases} $$
グラフの概形を描くために $0 < r < 2$ の範囲での関数の増減と凹凸を調べる。
$$ V'(r) = \pi \left( -\frac{1}{4}r^2 + 1 \right) = -\frac{\pi}{4}(r-2)(r+2) $$
$0 < r < 2$ においてつねに $V'(r) > 0$ であり、$V(r)$ は単調増加する。 さらに $V''(r) = -\frac{\pi}{2}r < 0$ より、曲線は上に凸である。 また、$r \to +0$ のとき $V(r) \to \frac{4}{3}\pi$ であり、$r \to 2-0$ のとき $V(r) \to \pi\left(-\frac{8}{12}+2+\frac{4}{3}\right) = \frac{8}{3}\pi$ となる。 $r=2$ において $\lim_{r \to 2-0} V'(r) = 0$ となり、定数関数部分 $V = \frac{8}{3}\pi$ と滑らかに接続される。 (概形の特徴は「答え」の項にまとめる)
(2)
$r \ge 2$ のとき、$V = \frac{8}{3}\pi$ である。 $\pi > 3.14$ より、
$$ V > \frac{8}{3} \times 3.14 = \frac{25.12}{3} = 8.373\dots > 8 $$
となるため、$V=8$ となる $r$ は $r \ge 2$ には存在しない。 したがって、$V=8$ となるのは $0 < r < 2$ のときであり、(1) より $V(r)$ はこの範囲で連続かつ単調増加する。
$$ \pi \left( -\frac{1}{12}r^3 + r + \frac{4}{3} \right) = 8 $$
を満たす $r$ を四捨五入して小数第1位まで求める。そのために、近似値の境界となる $r=1.45$ および $r=1.5$ のときの体積を評価する。 $g(r) = -\frac{1}{12}r^3 + r + \frac{4}{3}$ とおくと、$V(r) = \pi g(r)$ である。
$r=1.5 = \frac{3}{2}$ のとき、
$$ g(1.5) = -\frac{1}{12}\left(\frac{3}{2}\right)^3 + \frac{3}{2} + \frac{4}{3} = -\frac{9}{32} + \frac{48}{32} + \frac{128}{96} = \frac{245}{96} = 2.55208\dots $$
$\pi > 3.14$ であるから、
$$ V(1.5) > 3.14 \times \frac{245}{96} = \frac{769.3}{96} = 8.013\dots > 8 $$
よって、$V(1.5) > 8$ である。
次に $r=1.45 = \frac{29}{20}$ のとき、
$$ g(1.45) = -\frac{1}{12}\left(\frac{29}{20}\right)^3 + \frac{29}{20} + \frac{4}{3} = -\frac{24389}{96000} + \frac{139200}{96000} + \frac{128000}{96000} = \frac{242811}{96000} = 2.52928125 $$
$\pi < 3.15$ であるから、
$$ V(1.45) < 3.15 \times 2.52928125 = 7.9672359375 < 8 $$
よって、$V(1.45) < 8$ である。
$V(r)$ は $0 < r < 2$ で単調増加関数であるため、$V(1.45) < 8 < V(1.5)$ より、$V(r) = 8$ を満たす $r$ は
$$ 1.45 < r < 1.5 $$
の範囲に唯一存在する。 この範囲の数を四捨五入して小数第1位まで求めると、すべて $1.5$ となる。
解説
(1)は空間図形の共通部分の体積を求める典型問題である。2つの球の対称性に着目し、片方の球の切り口の円の面積を定積分して半分側の体積を求めると計算が早い。和集合の定義に従い、重なり部分の扱いを間違えないことが重要である。 (2)は高次方程式が代数的に解けないため、関数の単調増加性と中間値の定理を用いて解の存在範囲を絞り込む問題である。小数第1位まで求めるように指示されているので、小数第2位を四捨五入することを考慮して $r=1.45$ や $r=1.5$ のような境界値で体積を評価する発想が鍵となる。与えられた $\pi$ の不等式を適切に使い、上限・下限を評価して目的の大小関係を確定させる論証力が問われる。
答え
(1)
$$ V = \begin{cases} \pi \left( -\frac{1}{12}r^3 + r + \frac{4}{3} \right) & (0 < r < 2) \\ \frac{8}{3}\pi & (r \ge 2) \end{cases} $$
グラフの概形は、白丸となる点 $\left(0, \frac{4}{3}\pi\right)$ を出発し、$0 < r < 2$ の範囲で上に凸の単調増加曲線を描き、点 $\left(2, \frac{8}{3}\pi\right)$ に傾き $0$ で滑らかにつながる。$r \ge 2$ の範囲では $V = \frac{8}{3}\pi$ の水平な半直線となる。
(2)
$1.5$
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