東京大学 2009年 理系 第4問 解説

方針・初手
空間図形の体積は、軸に垂直な平面による断面積を積分して求めるのが定石である。今回は円板 $D_1$ を $y$ 軸の回りに回転させるため、$y=k$ ($-1 \leqq k \leqq 1$) の平面で切断し、その切り口の線分が $xz$ 平面内で回転してできる領域(掃過領域)の面積を考える。回転の軌跡を正確に把握するため、点ごとに極座標を用いて条件を処理する。
解法1
$D_1$ を平面 $y=k$ ($-1 \leqq k \leqq 1$) で切断したときの切り口を $L_k$ とする。 $D_1$ の定義より、$L_k$ は $y=k, z=a$ かつ $x^2 \leqq 1-k^2$ を満たす線分である。 ここで、$R = \sqrt{1-k^2}$ とおく。$xz$ 平面において、$L_k$ は $z=a$ 上の $-R \leqq x \leqq R$ の部分となる。
$z$ 軸の正の部分を $x$ 軸の正の方向に傾ける向きの回転を、回転角 $t$ ($0 \leqq t \leqq \pi$) を用いて表す。$L_k$ 上の点 $(u, a)$ ($-R \leqq u \leqq R$) は、この回転によって点 $(x, z)$ へ移動するとし、その座標は次のように表される。
$$ \begin{cases} x = u \cos t + a \sin t \\ z = -u \sin t + a \cos t \end{cases} $$
この点 $(x, z)$ が $0 \leqq t \leqq \pi$ かつ $-R \leqq u \leqq R$ の範囲で動く領域が、$y=k$ における通過領域 $E$ の断面 $S_k$ である。 上の関係式から $u, a$ を消去すると $x^2 + z^2 = u^2 + a^2$ が得られ、$-R \leqq u \leqq R$ より $S_k$ に含まれる点はすべて $a^2 \leqq x^2 + z^2 \leqq a^2 + R^2$ を満たす。
(1) $W(a)$ は $E$ と $\{(x,y,z) \mid x \geqq 0\}$ の共通部分の体積である。$y=k$ の断面において、$S_k$ の $x \geqq 0$ の部分の面積 $S_k^+$ を求める。 $x \geqq 0$ を満たす任意の点 $(x, z)$ を極座標で $x = r \sin\phi, z = r \cos\phi$ ($r \geqq 0, 0 \leqq \phi \leqq \pi$) と表す。
点 $(x, z)$ が線分 $L_k$ の通過領域に含まれる条件は、直線 $x \sin t + z \cos t = a$ 上にあり、かつ接点 $(a \sin t, a \cos t)$ との距離 $\sqrt{r^2-a^2}$ が $R$ 以下となるような時刻 $t \in [0, \pi]$ が存在することである。 これを式にすると、$r \cos(t-\phi) = a$ より $\cos(t-\phi) = \frac{a}{r}$。 ここで $\alpha = \arccos \frac{a}{r}$ ($0 \leqq \alpha < \frac{\pi}{2}$) とおくと、$t = \phi + \alpha$ または $t = \phi - \alpha$ である。 $0 \leqq \phi \leqq \pi$ のとき、以下のように場合分けできる。
(i)
$0 \leqq \phi < \alpha$ のとき $t = \phi + \alpha$ とすると、$0 < t < 2\alpha < \pi$ より $t \in [0, \pi]$ となる。
(ii)
$\alpha \leqq \phi \leqq \pi-\alpha$ のとき $t = \phi + \alpha$ とすると、$\alpha \leqq t \leqq \pi$ より $t \in [0, \pi]$ となる。
(iii)
$\pi-\alpha < \phi \leqq \pi$ のとき $t = \phi - \alpha$ とすると、$0 < \pi-2\alpha < t \leqq \pi$ より $t \in [0, \pi]$ となる。
すべての場合において、条件を満たす $t \in [0, \pi]$ が存在する。 したがって、接点との距離条件 $r \leqq \sqrt{a^2+R^2}$ さえ満たせば点は通過されるため、$S_k^+$ は半円環 $a^2 \leqq x^2+z^2 \leqq a^2+R^2$ ($x \geqq 0$) に完全に一致する。 この半円環の面積 $S_k^+$ は定数 $a$ に依存せず、次のように定まる。
$$ S_k^+ = \frac{1}{2} \pi \{ (a^2+R^2) - a^2 \} = \frac{1}{2} \pi R^2 = \frac{1}{2} \pi (1-k^2) $$
よって、$W(a)$ はこれを $-1 \leqq k \leqq 1$ で積分して求められる。
$$ W(a) = \int_{-1}^{1} \frac{1}{2} \pi (1-k^2) dk = \pi \int_{0}^{1} (1-k^2) dk = \pi \left[ k - \frac{k^3}{3} \right]_0^1 = \frac{2}{3}\pi $$
(2) $E$ 全体の $y=k$ における断面積 $A(k)$ は、$A(k) = S_k^+ + S_k^-$ と表せる。ここで $S_k^-$ は $S_k$ の $x < 0$ の部分の面積である。 (1)と同様の考察を $\phi \in (-\pi, 0)$ において行う。 $t = \phi + \alpha \in [0, \pi]$ となる条件は $0 \leqq \phi + \alpha \leqq \pi$ すなわち $-\alpha \leqq \phi \leqq \pi - \alpha$ である。 $\phi < 0$ より $-\alpha \leqq \phi < 0$ となり、これは $r \cos\phi \geqq a \iff z \geqq a$ と同値である。また $t = \phi - \alpha$ は負となり条件を満たさない。 端点の軌跡も考慮した領域の対称性から、$x < 0$ の通過領域は $x^2+z^2 \leqq a^2+R^2$ のうち $z \geqq a$ の部分(上部)と $z \leqq -a$ の部分(下部)のみとなる。 したがって、この2つの領域の合計面積 $S_k^-$ は以下のように表せる。
$$ S_k^- = 2 \int_{0}^{R} (\sqrt{a^2+R^2-x^2} - a) dx $$
ここで被積分関数を有理化して評価する。$0 \leqq x \leqq R$ において、
$$ \sqrt{a^2+R^2-x^2} - a = \frac{R^2-x^2}{\sqrt{a^2+R^2-x^2} + a} \leqq \frac{R^2-x^2}{2a} $$
これより $S_k^-$ を上から評価すると、
$$ 0 \leqq S_k^- \leqq 2 \int_{0}^{R} \frac{R^2-x^2}{2a} dx = \frac{1}{a} \left[ R^2 x - \frac{x^3}{3} \right]_0^R = \frac{2R^3}{3a} $$
全体の体積 $V(a)$ は $V(a) = W(a) + \int_{-1}^{1} S_k^- dk$ であり、はさみうちの原理より右辺の積分の極限を考える。
$$ 0 \leqq \int_{-1}^{1} S_k^- dk \leqq \int_{-1}^{1} \frac{2(1-k^2)^{\frac{3}{2}}}{3a} dk $$
積分 $\int_{-1}^{1} \frac{2}{3}(1-k^2)^{\frac{3}{2}} dk$ は $a$ に依存しない定数であるため、$a \to \infty$ のとき上の式は $0$ に収束する。 したがって、求める極限は以下のようになる。
$$ \lim_{a \to \infty} V(a) = \lim_{a \to \infty} W(a) = \frac{2}{3}\pi $$
解説
空間図形の回転体の体積を求める問題である。回転軸に垂直な平面による切断面を考え、断面内での線分の回転軌跡を正しく評価できるかが問われている。 本問の最大のポイントは、回転する線分が $x \geqq 0$ 側に描く軌跡が、定数 $a$ の大きさに関わらず常にきれいな半円環になることを見抜けるかである。これを極座標表示から数式で厳密に裏付けることで論理の飛躍を防ぐことができる。 また(2)の極限計算においては、左側にはみ出す部分の面積が $a$ の増大とともに $1/a$ のオーダーで潰れていくことを、有理化を用いた不等式評価で簡潔に示すのが最もスマートな処理である。
答え
(1)
$$ W(a) = \frac{2}{3}\pi $$
(2)
$$ \lim_{a \to \infty} V(a) = \frac{2}{3}\pi $$
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