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東京大学 2004年 理系 第4問 解説

数学2/微分法テーマ/数学的帰納法テーマ/場合分けテーマ/存在証明
東京大学 2004年 理系 第4問 解説

方針・初手

本問は、漸化式によって定義される関数 $f_n(x)$ についての方程式の実数解の個数を調べる問題である。 すべての基本となる $y = f_1(x)$ のグラフの概形をかき、値域と解の個数の関係を把握することが第一歩となる。 $f_{n+1}(x) = f_1(f_n(x))$ という合成関数の構造に気づけば、(2)は(1)の結果を2回用いることで求められる。 (3)は、解の個数が $n$ 回の合成でどのように増殖していくかを帰納的に示す方針か、$x = 2\cos\theta$ という巧みな置換を用いて一般項 $f_n(x)$ の形を具体的に求める方針(チェビシェフ多項式)が有効である。

解法1

与えられた関数の定義より、$f_1(x) = x^3 - 3x$ であり、$n \geqq 1$ に対して次が成り立つ。

$$ f_{n+1}(x) = \{f_n(x)\}^3 - 3f_n(x) = f_1(f_n(x)) $$

(1)

$f_1(x) = x^3 - 3x$ を微分すると、

$$ f_1'(x) = 3x^2 - 3 = 3(x+1)(x-1) $$

$f_1'(x) = 0$ となるのは $x = \pm 1$ のときである。 増減表は以下のようになる。

$$ \begin{array}{c|ccccc} x & \cdots & -1 & \cdots & 1 & \cdots \\ \hline f_1'(x) & + & 0 & - & 0 & + \\ \hline f_1(x) & \nearrow & 2 & \searrow & -2 & \nearrow \end{array} $$

極大値は $f_1(-1) = 2$、極小値は $f_1(1) = -2$ である。 方程式 $f_1(x) = a$ の実数解の個数は、曲線 $y = f_1(x)$ と直線 $y = a$ の共有点の個数に等しいため、グラフの概形から以下のように場合分けできる。

(i)

$a < -2$ または $a > 2$ のとき、1個 (ii)

$a = \pm 2$ のとき、2個 (iii)

$-2 < a < 2$ のとき、3個

(2)

方程式 $f_2(x) = a$ は $f_1(f_1(x)) = a$ と書ける。 $X = f_1(x)$ とおくと、$f_1(X) = a$ となる。 (1)の結果を利用して、$a$ の値によって場合分けを行う。

(i)

$a < -2$ または $a > 2$ のとき $f_1(X) = a$ を満たす実数 $X$ はただ1つ存在する。 $a > 2$ のとき、グラフより $X > 2$ である。このとき $f_1(x) = X > 2$ を満たす $x$ は1個である。 $a < -2$ のとき、グラフより $X < -2$ である。このとき $f_1(x) = X < -2$ を満たす $x$ は1個である。 よって、実数 $x$ の個数は1個。

(ii)

$a = 2$ のとき $f_1(X) = 2$ を満たす $X$ は $X = -1, 2$ の2個である。 $X = -1$ のとき、$f_1(x) = -1$ を満たす $x$ は $-2 < -1 < 2$ より3個存在する。 $X = 2$ のとき、$f_1(x) = 2$ を満たす $x$ は2個存在する。 これらを同時に満たす $x$ は存在しないため、実数 $x$ の個数は $3 + 2 = 5$ 個。

(iii)

$a = -2$ のとき $f_1(X) = -2$ を満たす $X$ は $X = 1, -2$ の2個である。 $X = 1$ のとき、$f_1(x) = 1$ を満たす $x$ は $-2 < 1 < 2$ より3個存在する。 $X = -2$ のとき、$f_1(x) = -2$ を満たす $x$ は2個存在する。 よって、実数 $x$ の個数は $3 + 2 = 5$ 個。

(iv)

$-2 < a < 2$ のとき $f_1(X) = a$ を満たす実数 $X$ は3個存在する。これらを $\alpha, \beta, \gamma$ とする。 グラフより、これらはすべて $-2 < X < 2$ の範囲に含まれる。 したがって、$f_1(x) = \alpha$, $f_1(x) = \beta$, $f_1(x) = \gamma$ を満たす実数 $x$ はそれぞれ3個ずつ存在する。 $\alpha, \beta, \gamma$ は互いに異なるため、対応する $x$ もすべて異なる。 よって、実数 $x$ の個数は $3 \times 3 = 9$ 個。

(3)

以下の命題 $P(n)$ がすべての自然数 $n$ で成り立つことを数学的帰納法で示す。

$P(n)$: 「$-2 < c < 2$ を満たす任意の実数 $c$ に対して、方程式 $f_n(x) = c$ は区間 $-2 < x < 2$ に相異なる $3^n$ 個の実数解をもつ」

[1] $n=1$ のとき (1)の結果より、$-2 < c < 2$ のとき $f_1(x) = c$ は3個の実数解をもつ。 $f_1(2) = 2, f_1(-2) = -2$ であり、$x \leqq -2$ や $x \geqq 2$ の範囲では $|f_1(x)| \geqq 2$ となるため、3個の解はすべて $-2 < x < 2$ の範囲にある。 よって $n=1$ のとき $P(1)$ は成り立つ。

[2] $n=k$ のとき $P(k)$ が成り立つと仮定する。 $n=k+1$ のときの方程式 $f_{k+1}(x) = c$ を考える。 $f_1(f_k(x)) = c$ であるから、$X = f_k(x)$ とおくと $f_1(X) = c$ となる。 $-2 < c < 2$ であるから、$P(1)$ よりこの方程式は $-2 < X < 2$ の範囲に相異なる3個の実数解 $X_1, X_2, X_3$ をもつ。 したがって、$f_{k+1}(x) = c$ は次と同値である。

$$ f_k(x) = X_1 \quad \text{または} \quad f_k(x) = X_2 \quad \text{または} \quad f_k(x) = X_3 $$

帰納法の仮定より、$-2 < X_i < 2$ ($i=1, 2, 3$) を満たす各 $X_i$ に対して、方程式 $f_k(x) = X_i$ は $-2 < x < 2$ の範囲に相異なる $3^k$ 個の実数解をもつ。 $X_1, X_2, X_3$ は互いに異なるため、それぞれの方程式の解に重複はない。 ゆえに、$f_{k+1}(x) = c$ は区間 $-2 < x < 2$ に相異なる $3 \times 3^k = 3^{k+1}$ 個の実数解をもつ。 よって $n=k+1$ のときも $P(k+1)$ は成り立つ。

[1], [2] より、すべての自然数 $n$ について $P(n)$ が成り立つ。 $n \geqq 3$ のとき、$c = 0$ は $-2 < 0 < 2$ を満たすため、$f_n(x) = 0$ は区間 $-2 < x < 2$ に $3^n$ 個の実数解をもつ。

最後に、$-2 < x < 2$ の範囲外に解を持たないことを示す。 $x \geqq 2$ のとき、$f_1(x) - x = x(x+2)(x-2) \geqq 0$ より $f_1(x) \geqq x \geqq 2$ である。 帰納的に $f_n(x) \geqq 2$ となり、$f_n(x) = 0$ にはならない。 $x \leqq -2$ のとき、$f_1(x) - x = x(x+2)(x-2) \leqq 0$ より $f_1(x) \leqq x \leqq -2$ である。 帰納的に $f_n(x) \leqq -2$ となり、$f_n(x) = 0$ にはならない。

以上より、$f_n(x) = 0$ をみたす実数 $x$ の個数は $3^n$ 個である。

解法2

(3) の別解

方程式 $f_n(x) = 0$ の解が区間 $[-2, 2]$ に存在すると予想し、$x = 2\cos\theta$ ($0 \leqq \theta \leqq \pi$) とおく。 この範囲において、$x$ と $\theta$ は1対1に対応し、$-2 \leqq x \leqq 2$ のすべての値を網羅する。

$n=1$ のとき、

$$ \begin{aligned} f_1(2\cos\theta) &= (2\cos\theta)^3 - 3(2\cos\theta) \\ &= 8\cos^3\theta - 6\cos\theta \\ &= 2(4\cos^3\theta - 3\cos\theta) \\ &= 2\cos 3\theta \end{aligned} $$

となる(3倍角の公式より)。

すべての自然数 $n$ について、$f_n(2\cos\theta) = 2\cos(3^n\theta)$ となることを数学的帰納法で示す。 $n=1$ のときはすでに示した。 $n=k$ のとき $f_k(2\cos\theta) = 2\cos(3^k\theta)$ と仮定すると、

$$ \begin{aligned} f_{k+1}(2\cos\theta) &= f_1(f_k(2\cos\theta)) \\ &= f_1(2\cos(3^k\theta)) \\ &= 2\cos(3 \cdot 3^k\theta) \\ &= 2\cos(3^{k+1}\theta) \end{aligned} $$

となり、$n=k+1$ のときも成り立つ。 したがって、すべての自然数 $n$ について $f_n(2\cos\theta) = 2\cos(3^n\theta)$ である。

方程式 $f_n(x) = 0$ の解のうち、$-2 \leqq x \leqq 2$ を満たすものを探す。 $2\cos(3^n\theta) = 0$ より、

$$ \cos(3^n\theta) = 0 $$

これを満たす $\theta$ は、$m$ を整数として、

$$ 3^n\theta = \frac{\pi}{2} + m\pi \iff \theta = \frac{2m+1}{2 \cdot 3^n}\pi $$

$0 \leqq \theta \leqq \pi$ の条件から、

$$ 0 \leqq \frac{2m+1}{2 \cdot 3^n}\pi \leqq \pi \iff 0 \leqq 2m+1 \leqq 2 \cdot 3^n \iff -\frac{1}{2} \leqq m \leqq \frac{2 \cdot 3^n - 1}{2} $$

$m$ は整数であるから、$m = 0, 1, 2, \cdots, 3^n - 1$ の $3^n$ 個の値をとる。 これら $3^n$ 個の $\theta$ はすべて区間 $[0, \pi]$ において異なる値であるため、対応する $x = 2\cos\theta$ もすべて異なる $3^n$ 個の実数値となる。

次に、$|x| > 2$ の範囲に解がないことを示す。 $x > 2$ のとき、$f_1(x) = x(x^2 - 3)$ であり、$x^2 - 3 > 1$ であるから $f_1(x) > x$ となる。 これを繰り返すと $f_n(x) > f_{n-1}(x) > \cdots > x > 2$ となり、$f_n(x) = 0$ にはならない。 $x < -2$ のとき、$x^2 - 3 > 1$ であるから $f_1(x) < x$ となる。 これを繰り返すと $f_n(x) < f_{n-1}(x) < \cdots < x < -2$ となり、$f_n(x) = 0$ にはならない。

以上より、$f_n(x) = 0$ をみたす実数 $x$ の個数は $3^n$ 個である。

解説

関数の再帰的な合成に関する典型問題である。 (1)のグラフを正しく描くことが、(2)以降のすべての場合分けの基礎となる。(2)では方程式 $f_2(x) = a$ を直接解こうとするのではなく、$f_1(X) = a$ と $f_1(x) = X$ の2段階に分けて考えることが重要である。 (3)の解法1は、極値と値域の関係から「解が1つの区間で3倍に増える」ことを論理的に示す方法であり、汎用性が高い。一方で解法2の $x = 2\cos\theta$ と置換する解法は、「チェビシェフ多項式」と呼ばれる背景知識に基づいたエレガントな手法である。$x^3 - 3x$ という形を見た瞬間に3倍角の公式を連想できるようになると、計算の見通しが劇的に良くなる。

答え

(1)

$a < -2, a > 2$ のとき 1個 $a = \pm 2$ のとき 2個 $-2 < a < 2$ のとき 3個

(2)

$a < -2, a > 2$ のとき 1個 $a = \pm 2$ のとき 5個 $-2 < a < 2$ のとき 9個

(3)

$-2<c<2$ のとき、方程式 $f_n(x)=c$ は相異なる $3^n$ 個の実数解をもつ。

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