東京大学 1975年 理系 第5問 解説

方針・初手
(i) では、隣接する2つの球 $S_n$ と $S_{n+1}$ の位置関係を把握し、空間座標を導入して共通部分の体積を積分によって求める。$S_{n+1}$ の中心が $S_n$ の表面上にあるという条件から、中心間の距離とそれぞれの半径が確定する。球の共通部分は、中心同士を結ぶ直線を軸とする回転体になるため、交面の座標を求めて $x$ 軸周りの回転体として積分する。
(ii) は、(i) で求めた体積 $v_n$ の無限級数を計算する問題である。$v_n$ が等比数列になることに着目し、極限を求める。
解法1
(i)
球 $S_n$ の半径を $r_n$ とする。与えられた条件より $r_n = \frac{a}{2^n}$ である。
$S_{n+1}$ の中心 $O_{n+1}$ は $S_n$ の表面上にあるため、中心間の距離は $O_n O_{n+1} = r_n$ である。また、$S_{n+1}$ の半径は $r_{n+1} = \frac{1}{2} r_n$ となる。
空間座標を導入し、$S_n$ の中心 $O_n$ を原点 $(0, 0, 0)$ にとり、直線 $O_n O_{n+1}$ を $x$ 軸の正の向きとする。このとき、$O_{n+1}$ の座標は $(r_n, 0, 0)$ と表せる。
$S_n$ と $S_{n+1}$ が表す領域の不等式は、それぞれ以下のように表される。
$$ S_n : x^2 + y^2 + z^2 \leqq r_n^2 $$
$$ S_{n+1} : (x - r_n)^2 + y^2 + z^2 \leqq \frac{1}{4} r_n^2 $$
$S_n$ と $S_{n+1}$ の表面が交わる曲線の $x$ 座標を求める。両方の球面の方程式から $y^2 + z^2$ を消去すると、以下のようになる。
$$ r_n^2 - x^2 = \frac{1}{4} r_n^2 - (x - r_n)^2 $$
これを $x$ について解く。
$$ r_n^2 - x^2 = \frac{1}{4} r_n^2 - (x^2 - 2r_n x + r_n^2) $$
$$ r_n^2 = -\frac{3}{4} r_n^2 + 2r_n x $$
$$ 2r_n x = \frac{7}{4} r_n^2 $$
$$ x = \frac{7}{8} r_n $$
求める体積 $v_n$ は、この平面 $x = \frac{7}{8} r_n$ を境に、$x$ 軸の周りの回転体として計算できる。積分区間は $S_{n+1}$ の左端である $x = r_n - \frac{1}{2}r_n = \frac{1}{2}r_n$ から、$S_n$ の右端である $x = r_n$ までとなる。体積 $v_n$ は次のように2つの積分に分割される。
$$ v_n = \int_{\frac{1}{2}r_n}^{\frac{7}{8}r_n} \pi \left\{ \frac{1}{4} r_n^2 - (x - r_n)^2 \right\} dx + \int_{\frac{7}{8}r_n}^{r_n} \pi (r_n^2 - x^2) dx $$
第1項の積分を $V_1$、第2項の積分を $V_2$ とおく。
$V_1$ の計算において $t = x - r_n$ と置換すると、$dt = dx$ であり、積分区間は $-\frac{1}{2}r_n$ から $-\frac{1}{8}r_n$ となる。
$$ \begin{aligned} V_1 &= \pi \int_{-\frac{1}{2}r_n}^{-\frac{1}{8}r_n} \left( \frac{1}{4} r_n^2 - t^2 \right) dt \\ &= \pi \left[ \frac{1}{4} r_n^2 t - \frac{1}{3} t^3 \right]_{-\frac{1}{2}r_n}^{-\frac{1}{8}r_n} \\ &= \pi \left\{ \left( -\frac{1}{32} r_n^3 + \frac{1}{3 \cdot 512} r_n^3 \right) - \left( -\frac{1}{8} r_n^3 + \frac{1}{3 \cdot 8} r_n^3 \right) \right\} \\ &= \pi r_n^3 \left( -\frac{1}{32} + \frac{1}{1536} + \frac{1}{8} - \frac{1}{24} \right) \\ &= \pi r_n^3 \left( \frac{-48 + 1 + 192 - 64}{1536} \right) \\ &= \frac{81}{1536} \pi r_n^3 = \frac{27}{512} \pi r_n^3 \end{aligned} $$
続いて $V_2$ を計算する。
$$ \begin{aligned} V_2 &= \pi \int_{\frac{7}{8}r_n}^{r_n} (r_n^2 - x^2) dx \\ &= \pi \left[ r_n^2 x - \frac{1}{3} x^3 \right]_{\frac{7}{8}r_n}^{r_n} \\ &= \pi \left\{ \left( r_n^3 - \frac{1}{3} r_n^3 \right) - \left( \frac{7}{8} r_n^3 - \frac{343}{3 \cdot 512} r_n^3 \right) \right\} \\ &= \pi r_n^3 \left( \frac{2}{3} - \frac{7}{8} + \frac{343}{1536} \right) \\ &= \pi r_n^3 \left( \frac{1024 - 1344 + 343}{1536} \right) \\ &= \frac{23}{1536} \pi r_n^3 \end{aligned} $$
よって、$v_n$ は次のように求まる。
$$ \begin{aligned} v_n &= V_1 + V_2 \\ &= \frac{81}{1536} \pi r_n^3 + \frac{23}{1536} \pi r_n^3 \\ &= \frac{104}{1536} \pi r_n^3 \\ &= \frac{13}{192} \pi r_n^3 \end{aligned} $$
ここで $r_n = \frac{a}{2^n}$ を代入する。
$$ v_n = \frac{13\pi}{192} \left( \frac{a}{2^n} \right)^3 = \frac{13\pi a^3}{192 \cdot 8^n} $$
(ii)
$V_m = \sum_{n=1}^m v_n$ を求める。これは初項が $v_1 = \frac{13\pi a^3}{1536}$、公比が $\frac{1}{8}$ の等比数列の和である。
$$ \begin{aligned} V_m &= \sum_{n=1}^m \frac{13\pi a^3}{192} \left( \frac{1}{8} \right)^n \\ &= \frac{13\pi a^3}{192} \cdot \frac{\frac{1}{8} \left\{ 1 - \left( \frac{1}{8} \right)^m \right\}}{1 - \frac{1}{8}} \\ &= \frac{13\pi a^3}{192} \cdot \frac{1}{7} \left\{ 1 - \left( \frac{1}{8} \right)^m \right\} \\ &= \frac{13\pi a^3}{1344} \left\{ 1 - \left( \frac{1}{8} \right)^m \right\} \end{aligned} $$
求める極限 $V$ は、$m \to \infty$ のとき $\left( \frac{1}{8} \right)^m \to 0$ となるから、次のようになる。
$$ V = \lim_{m \to \infty} V_m = \frac{13\pi a^3}{1344} $$
解法2
(i) について、相似を利用して計算量を減らす別解を示す。
球の列 $S_n$ と $S_{n+1}$ の組がつくる立体は、すべての $n$ に対して互いに相似である。
それぞれの球の半径は $r_n = \frac{a}{2^n}$ であり、相似比は $r_n : r_{n+1} = 1 : \frac{1}{2}$ と一定である。したがって、$S_n$ と $S_{n+1}$ の共通部分の体積 $v_n$ は、ある定数 $k$ を用いて $v_n = k \cdot r_n^3$ と表すことができる。
定数 $k$ を求めるために、半径が $R$ の球 $A$(中心を原点)と、その表面上に中心をもつ半径 $\frac{1}{2}R$ の球 $B$(中心を $(R, 0, 0)$)の共通部分の体積 $V(R)$ を計算する。
両者の交面は $x = \frac{7}{8}R$ であり、体積 $V(R)$ は回転体の体積として以下のように計算できる。
$$ V(R) = \int_{\frac{1}{2}R}^{\frac{7}{8}R} \pi \left\{ \frac{1}{4} R^2 - (x - R)^2 \right\} dx + \int_{\frac{7}{8}R}^{R} \pi (R^2 - x^2) dx $$
解法1と同様に積分を実行すると、
$$ V(R) = \frac{27}{512} \pi R^3 + \frac{23}{1536} \pi R^3 = \frac{13}{192} \pi R^3 $$
となる。したがって $v_n = V(r_n)$ であるから、
$$ v_n = \frac{13\pi}{192} r_n^3 = \frac{13\pi}{192} \left( \frac{a}{2^n} \right)^3 = \frac{13\pi a^3}{192 \cdot 8^n} $$
解説
空間図形の体積は、適切な座標軸を設定して回転体として捉えるのが定石である。本問では球の中心同士を結ぶ直線を $x$ 軸に取ることで、見通しよく計算できる。
解法2で示したように、立体が相似であることに気づけば、「体積比は相似比の3乗」という性質を用いて計算量を減らすことができる。これにより、$v_n$ が公比 $\frac{1}{8}$ の等比数列になることが直ちにわかる。
なお、問題文にある「この平面上において $O_{n+2}$ と $O_n$ は直線 $OO_{n+1}$ に関して互いに反対側にある」という条件は、球の列が重なりすぎずにジグザグに内接していく幾何学的な構成を一つに定めるためのものであり、共通部分の体積 $v_n$ やその級数の値には影響しない。
答え
(i)
$$ v_n = \frac{13\pi a^3}{192 \cdot 8^n} $$
(ii)
$$ V = \frac{13\pi a^3}{1344} $$
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