数学2 三角関数 問題 88 解説

方針・初手
(1) は $\tan\frac{x}{2}$ から $\sin x, \cos x$ を表す有名公式の導出である。2倍角の公式と $\sin^2\theta+\cos^2\theta=1$ を活用し、分母・分子を $\cos^2\frac{x}{2}$ で割ることで $\tan\frac{x}{2}$ の形を作り出す。
(2) は (1) の誘導に従い、与えられた不等式の両辺を $m$ の式に書き換える。その際、$x$ の変域から $m$ の変域を正確に求めることが重要である。
解法1
(1)
$\tan\frac{x}{2} = m$ が定義されていることから $\cos\frac{x}{2} \neq 0$ である。
$\sin x$ について、2倍角の公式より以下のように変形できる。
$$\sin x = 2\sin\frac{x}{2}\cos\frac{x}{2} = \frac{2\sin\frac{x}{2}\cos\frac{x}{2}}{1} = \frac{2\sin\frac{x}{2}\cos\frac{x}{2}}{\cos^2\frac{x}{2}+\sin^2\frac{x}{2}}$$
分母・分子を $\cos^2\frac{x}{2}$ で割ると、
$$\sin x = \frac{2\frac{\sin\frac{x}{2}}{\cos\frac{x}{2}}}{1+\frac{\sin^2\frac{x}{2}}{\cos^2\frac{x}{2}}} = \frac{2\tan\frac{x}{2}}{1+\tan^2\frac{x}{2}} = \frac{2m}{1+m^2}$$
となり、示された。
$\cos x$ について、同様に2倍角の公式より以下のように変形できる。
$$\cos x = \cos^2\frac{x}{2} - \sin^2\frac{x}{2} = \frac{\cos^2\frac{x}{2} - \sin^2\frac{x}{2}}{1} = \frac{\cos^2\frac{x}{2} - \sin^2\frac{x}{2}}{\cos^2\frac{x}{2}+\sin^2\frac{x}{2}}$$
分母・分子を $\cos^2\frac{x}{2}$ で割ると、
$$\cos x = \frac{1 - \frac{\sin^2\frac{x}{2}}{\cos^2\frac{x}{2}}}{1+\frac{\sin^2\frac{x}{2}}{\cos^2\frac{x}{2}}} = \frac{1-\tan^2\frac{x}{2}}{1+\tan^2\frac{x}{2}} = \frac{1-m^2}{1+m^2}$$
となり、示された。
(2)
$m = \tan\frac{x}{2}$ とおく。 $-\pi < x < \frac{\pi}{2}$ のとき、各辺を2で割って、
$$-\frac{\pi}{2} < \frac{x}{2} < \frac{\pi}{4}$$
である。この範囲において正接関数を考えると、
$$m < 1$$
となる。
(1) の結果を用いると、示すべき不等式 $\sin x + \cos x \geqq \tan\frac{x}{2}$ は次のように変形できる。
$$\frac{2m}{1+m^2} + \frac{1-m^2}{1+m^2} \geqq m$$
移項して整理する。
$$\frac{2m + 1 - m^2 - m(1+m^2)}{1+m^2} \geqq 0$$
$$\frac{-m^3 - m^2 + m + 1}{1+m^2} \geqq 0$$
$$\frac{-(m^3 + m^2 - m - 1)}{1+m^2} \geqq 0$$
分子を因数分解する。
$$\frac{-\{m^2(m+1) - (m+1)\}}{1+m^2} \geqq 0$$
$$\frac{-(m+1)(m^2-1)}{1+m^2} \geqq 0$$
$$\frac{-(m-1)(m+1)^2}{1+m^2} \geqq 0$$
すべての実数 $m$ において $1+m^2 > 0$ であるため、分子について $-(m-1)(m+1)^2 \geqq 0$ が成り立てばよい。
ここで、先ほど求めた条件より $m < 1$ であるから $m-1 < 0$ であり、$-(m-1) > 0$ である。 また、実数の2乗は0以上であるため $(m+1)^2 \geqq 0$ である。
これらより、
$$-(m-1)(m+1)^2 \geqq 0$$
が常に成り立つ。 したがって、$-\pi < x < \frac{\pi}{2}$ のとき、不等式 $\sin x + \cos x \geqq \tan\frac{x}{2}$ は成り立つ。
解説
(1) は積分計算の置換積分法などでも頻出する変形公式の導出である。分母に暗黙的に存在する $1$ を $\cos^2\frac{x}{2}+\sin^2\frac{x}{2}$ に置き換える発想がポイントである。別解として、$\frac{1}{\cos^2\frac{x}{2}} = 1+\tan^2\frac{x}{2}$ を用いて $\cos^2\frac{x}{2}$ を $m$ で表し、そこから順次求めていく手法もある。
(2) は (1) の結果を利用して代数的不等式の証明に帰着させる。変数を置換した際は、新しい変数の定義域(値域)を必ず確認するという原則を守ることが重要である。本問では $m<1$ の条件が最後の符号判定で決定的な役割を果たす。
答え
(1) 題意の等式が成り立つことを示した。
(2) 題意の不等式が成り立つことを示した。
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