数学3 接線・不等式 問題 3 解説

方針・初手
不等式 $a^x \geqq ax$ が $x>0$ で常に成り立つ条件を考える。 $x=1$ を代入すると、両辺ともに $a$ となり等号が成立する。したがって、関数 $y=a^x$ のグラフと直線 $y=ax$ は $x=1$ で共有点をもつ。常に $a^x \geqq ax$ が成り立つためには、この $x=1$ の共有点においてグラフが接していなければならない、という点に着目して必要条件から絞り込む方針がわかりやすい。 また、両辺が正であることを利用して自然対数をとり、定数 $a$ を分離する方針も有効である。
解法1
$$ f(x) = a^x - ax $$
とおく。題意を満たすためには、すべての $x > 0$ に対して $f(x) \geqq 0$ が成り立つことが必要十分である。
$f(1) = a^1 - a \cdot 1 = 0$ であるから、すべての $x > 0$ で $f(x) \geqq 0$ となるためには、$x=1$ において $f(x)$ が最小値(極小値)をとることが必要である。 関数 $f(x)$ は $x>0$ で微分可能であるから、$x=1$ で極値をとるための必要条件は $f'(1) = 0$ となることである。
導関数は $f'(x) = a^x \log a - a$ であるから、
$$ f'(1) = a \log a - a = a(\log a - 1) $$
$f'(1) = 0$ と $a > 0$ より、
$$ \log a - 1 = 0 $$
すなわち $a = e$ が必要である。
次に、$a = e$ のとき、これが十分条件であることを示す。 $a = e$ のとき、$f(x) = e^x - ex$ となる。
$$ f'(x) = e^x - e $$
$f'(x) = 0$ とすると、$e^x = e$ より $x = 1$ である。 $x > 0$ における $f(x)$ の増減を調べる。
$0 < x < 1$ のとき $f'(x) < 0$ $x > 1$ のとき $f'(x) > 0$
したがって、$f(x)$ は $x=1$ で単調に減少し、その後単調に増加するため、$x=1$ で最小値 $f(1) = 0$ をとる。 ゆえに、すべての $x > 0$ に対して $f(x) \geqq 0$、すなわち $e^x \geqq ex$ が成り立つ。
以上より、求める $a$ は $a = e$ である。
解法2
$a > 0$ かつ $x > 0$ であるから、$a^x > 0$ および $ax > 0$ である。 与えられた不等式 $a^x \geqq ax$ の両辺の自然対数をとると、底が $e > 1$ より大小関係は保存されるため、
$$ \log a^x \geqq \log (ax) $$
$$ x \log a \geqq \log a + \log x $$
$$ (x - 1) \log a \geqq \log x $$
となる。これを $x$ の範囲で場合分けして考える。
(i) $x > 1$ のとき 両辺を $x-1 (>0)$ で割ると、
$$ \log a \geqq \frac{\log x}{x - 1} $$
(ii) $0 < x < 1$ のとき 両辺を $x-1 (<0)$ で割ると、不等号の向きが変わり、
$$ \log a \leqq \frac{\log x}{x - 1} $$
(iii) $x = 1$ のとき $(1-1)\log a \geqq \log 1$ より $0 \geqq 0$ となり、定数 $a$ の値によらず常に成り立つ。
ここで、$g(x) = \frac{\log x}{x - 1}$ ($x > 0, x \neq 1$) とおく。導関数 $g'(x)$ を計算すると、
$$ g'(x) = \frac{\frac{1}{x}(x - 1) - \log x \cdot 1}{(x - 1)^2} = \frac{x - 1 - x \log x}{x(x - 1)^2} $$
分子を $h(x) = x - 1 - x \log x$ とおくと、
$$ h'(x) = 1 - \left( 1 \cdot \log x + x \cdot \frac{1}{x} \right) = -\log x $$
$0 < x < 1$ のとき $h'(x) > 0$ より $h(x)$ は単調増加する。 $x > 1$ のとき $h'(x) < 0$ より $h(x)$ は単調減少する。 $h(1) = 0$ であるから、$x > 0, x \neq 1$ のいずれにおいても $h(x) < 0$ となる。 したがって、$x > 0, x \neq 1$ において $g'(x) < 0$ となり、$g(x)$ は単調減少関数である。
また、$x \to 1$ のときの $g(x)$ の極限は、関数 $y = \log x$ の $x=1$ における微分係数の定義式に一致する。
$$ \lim_{x \to 1} g(x) = \lim_{x \to 1} \frac{\log x - \log 1}{x - 1} = \left. (\log x)' \right|_{x=1} = 1 $$
$g(x)$ は単調減少であるから、すべての $x > 1$ において (i) が成り立つための条件は、
$$ \log a \geqq \lim_{x \to 1+0} g(x) = 1 $$
同様に、すべての $0 < x < 1$ において (ii) が成り立つための条件は、
$$ \log a \leqq \lim_{x \to 1-0} g(x) = 1 $$
これらを同時に満たすのは $\log a = 1$ すなわち $a = e$ のみである。
解説
不等式が常に成り立つ条件を求める問題において、「常に成り立つなら、特定の点でも成り立つはずだ」と考え、必要条件から未知数の範囲を絞り込む手法(解法1)は非常に強力である。本問では $x=1$ で等号が成立することを見抜ければ、$x=1$ で極小値 $0$ をとるという条件から直ちに $a$ の値を特定できる。 解法2のように対数をとって定数分離を行う手法も標準的である。極限 $\lim_{x \to 1} \frac{\log x}{x-1}$ を微分の定義式と見なして処理する式変形は、難関大で頻出のテクニックである。
答え
$a = e$
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