数学3 接線・不等式 問題 8 解説

方針・初手
(1) および (2) は、関数を定めてその導関数の符号を調べることで不等式を証明する、微分法の典型的な問題である。(1) の結果を (2) の導関数の評価に利用する構造となっている。 (3) は、3辺の長さが与えられた三角形の幾何学的な性質から $\cos \theta$ の値を求め、それを (1) と (2) で証明した不等式に代入して代数的に解く。得られた $\theta^2$ の2次不等式を解き、$\theta$ の取り得る値の範囲から不適な解を排除する。
解法1
(1)
$$f(x) = \cos x - \left( 1 - \frac{x^2}{2} \right)$$
とおく。$x > 0$ において $f(x) > 0$ であることを示せばよい。 $f(x)$ を $x$ で微分すると、
$$f'(x) = -\sin x + x$$
さらに微分すると、
$$f''(x) = -\cos x + 1$$
となる。$x > 0$ において $\cos x \le 1$ であるから、$f''(x) \ge 0$ が成り立つ。 したがって、$f'(x)$ は $x \ge 0$ において単調に増加する。 $f'(0) = 0$ であるから、$x > 0$ において $f'(x) > 0$ となる。 これにより、$f(x)$ は $x \ge 0$ において単調に増加する。 $f(0) = 0$ であるから、$x > 0$ において $f(x) > 0$ が成り立つ。 よって、$x > 0$ のとき不等式 $1 - \frac{x^2}{2} < \cos x$ が成り立つことが示された。
(2)
$$h(x) = 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} - \cos x$$
とおく。$x > 0$ において $h(x) > 0$ であることを示せばよい。 $h(x)$ を $x$ で微分すると、
$$h'(x) = -x + \frac{x^3}{6} + \sin x$$
さらに微分すると、
$$h''(x) = -1 + \frac{x^2}{2} + \cos x$$
となる。(1) の結果より、$x > 0$ のとき $\cos x > 1 - \frac{x^2}{2}$ であるから、移項して $\cos x - 1 + \frac{x^2}{2} > 0$、すなわち $h''(x) > 0$ が成り立つ。 したがって、$h'(x)$ は $x \ge 0$ において単調に増加する。 $h'(0) = 0$ であるから、$x > 0$ において $h'(x) > 0$ となる。 これにより、$h(x)$ は $x \ge 0$ において単調に増加する。 $h(0) = 0$ であるから、$x > 0$ において $h(x) > 0$ が成り立つ。 よって、$x > 0$ のとき不等式 $\cos x < 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24}$ が成り立つことが示された。
(3)
3辺の長さが $3, 4, 5$ である三角形は、$3^2 + 4^2 = 5^2$ が成り立つため、長さ $5$ の辺を斜辺とする直角三角形である。 最小の内角 $\theta$ は、最も短い長さ $3$ の辺の対角であるから、
$$\cos \theta = \frac{4}{5}, \quad \sin \theta = \frac{3}{5}$$
を満たす。$\theta$ は直角三角形の鋭角であるから $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ であり、特に $\theta > 0$ である。 (1) と (2) で示した不等式において $x = \theta$ とおくと、
$$1 - \frac{\theta^2}{2} < \cos \theta < 1 - \frac{\theta^2}{2} + \frac{\theta^4}{24}$$
が成り立つ。これに $\cos \theta = \frac{4}{5}$ を代入すると、
$$1 - \frac{\theta^2}{2} < \frac{4}{5} < 1 - \frac{\theta^2}{2} + \frac{\theta^4}{24}$$
となる。左側の不等式 $1 - \frac{\theta^2}{2} < \frac{4}{5}$ を整理すると、
$$\frac{\theta^2}{2} > 1 - \frac{4}{5} = \frac{1}{5}$$
$$\theta^2 > \frac{2}{5}$$
となり、求める不等式の左側が示された。
次に、右側の不等式 $\frac{4}{5} < 1 - \frac{\theta^2}{2} + \frac{\theta^4}{24}$ を整理すると、
$$\frac{\theta^4}{24} - \frac{\theta^2}{2} + \frac{1}{5} > 0$$
両辺に $120$ を掛けて分母を払うと、
$$5\theta^4 - 60\theta^2 + 24 > 0$$
ここで $t = \theta^2$ とおくと、不等式は $5t^2 - 60t + 24 > 0$ となる。 2次方程式 $5t^2 - 60t + 24 = 0$ の解は、解の公式より
$$t = \frac{30 \pm \sqrt{30^2 - 5 \cdot 24}}{5} = \frac{30 \pm \sqrt{900 - 120}}{5} = \frac{30 \pm \sqrt{780}}{5} = \frac{30 \pm 2\sqrt{195}}{5}$$
であるから、不等式 $5t^2 - 60t + 24 > 0$ の解は
$$t < \frac{30 - 2\sqrt{195}}{5}, \quad \frac{30 + 2\sqrt{195}}{5} < t$$
となる。ここで、$t = \theta^2$ の取り得る値の範囲を考える。 $\tan \theta = \frac{3}{4} < 1$ であり、$\tan \frac{\pi}{4} = 1$ であるから、$0 < \theta < \frac{\pi}{4}$ が成り立つ。 したがって、$t = \theta^2 < \left(\frac{\pi}{4}\right)^2 = \frac{\pi^2}{16} < \frac{10}{16} < 1$ である。 一方で、$\sqrt{195} > 0$ より $\frac{30 + 2\sqrt{195}}{5} > \frac{30}{5} = 6 > 1$ であるから、$t > \frac{30 + 2\sqrt{195}}{5}$ は不適である。 よって、条件を満たすのは
$$t < \frac{30 - 2\sqrt{195}}{5}$$
すなわち
$$\theta^2 < \frac{30 - 2\sqrt{195}}{5}$$
のみである。これにより求める不等式の右側も示された。 以上より、
$$\frac{2}{5} < \theta^2 < \frac{30 - 2\sqrt{195}}{5}$$
が成り立つことが示された。
解説
テイラー展開(マクローリン展開)を背景とする関数と多項式の大小比較の典型問題である。(1) と (2) の不等式は、$\cos x$ のマクローリン展開の有限項での打ち切り誤差の評価そのものである。 この種の不等式の証明では、右辺と左辺の差をとった関数を $f(x)$ とおき、$f'(x)$、$f''(x)$ と順次微分して符号を調べていく手法が定石である。前の小問の結果が次の小問の導関数の符号決定に利用される連鎖的な構造に気づくことが重要である。 (3) では、不等式を解いた後に出現する $2$ つの範囲のうち、不適なものを論理的に排除するステップが求められる。$\theta < \frac{\pi}{4}$ などの荒い評価でも十分排除できることに気づければ容易である。
答え
(1) 導関数の符号を調べることにより示された。
(2) 導関数の符号と (1) の結果を用いることにより示された。
(3) $\cos \theta = \frac{4}{5}$ を (1), (2) の不等式に代入し、$\theta$ の変域から条件を絞り込むことにより示された。
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