数学3 接線・不等式 問題 11 解説

方針・初手
対数関数の差 $\log(1+x) - \log x$ の大きさを評価する不等式の証明問題である。
問題文に $x$ の変域は明記されていないが、自然対数の真数条件より $x>0$ および $1+x>0$、すなわち $x>0$ であることが大前提となる。
不等式を証明するための有効なアプローチとして、主に以下の3つが考えられる。どの手法を選択しても正答に至るが、式の形から平均値の定理や定積分を連想できると見通しが良い。
- 平均値の定理を利用する。
- 関数 $y=\frac{1}{t}$ の定積分(面積)を利用する。
- 差を関数でおき、微分を用いて増減を調べる。
解法1
関数 $f(t) = \log t$ について考える。
$x>0$ を満たす任意の $x$ に対して、関数 $f(t)$ は閉区間 $[x, x+1]$ において連続であり、開区間 $(x, x+1)$ において微分可能である。
導関数は $f'(t) = \frac{1}{t}$ であるから、区間 $[x, x+1]$ において平均値の定理を用いると、
$$ \frac{\log(x+1) - \log x}{(x+1) - x} = \frac{1}{c} $$
を満たす実数 $c$ が $x < c < x+1$ の範囲に存在する。
分母は $(x+1) - x = 1$ であるから、上の式は次のように整理できる。
$$ \log(x+1) - \log x = \frac{1}{c} $$
ここで、$x>0$ より $x$, $c$, $x+1$ はすべて正であるため、不等式 $x < c < x+1$ の各辺の逆数をとると大小関係が反転し、次の不等式を得る。
$$ \frac{1}{x+1} < \frac{1}{c} < \frac{1}{x} $$
この不等式の中辺に $\frac{1}{c} = \log(x+1) - \log x$ を代入すると、
$$ \frac{1}{1+x} < \log(1+x) - \log x < \frac{1}{x} $$
となり、与式が示された。
解法2
$x>0$ とし、関数 $y = \frac{1}{t}$ の区間 $[x, x+1]$ における定積分を考える。
定積分を計算すると、次のようになる。
$$ \int_x^{x+1} \frac{1}{t} dt = \Big[ \log t \Big]_x^{x+1} = \log(x+1) - \log x $$
一方、区間 $x \le t \le x+1$ において、関数 $y = \frac{1}{t}$ は単調に減少するため、次の不等式が成り立つ。
$$ \frac{1}{x+1} \le \frac{1}{t} \le \frac{1}{x} $$
この区間で等号は常には成り立たないため、各辺を $t$ について $x$ から $x+1$ まで定積分すると、狭義の不等式となる。
$$ \int_x^{x+1} \frac{1}{x+1} dt < \int_x^{x+1} \frac{1}{t} dt < \int_x^{x+1} \frac{1}{x} dt $$
左辺と右辺の定積分を計算すると、
$$ \frac{1}{x+1} \Big[ t \Big]_x^{x+1} < \log(x+1) - \log x < \frac{1}{x} \Big[ t \Big]_x^{x+1} $$
$$ \frac{1}{x+1} < \log(x+1) - \log x < \frac{1}{x} $$
となり、与式が示された。
解法3
$x>0$ を前提とし、左側の不等式と右側の不等式をそれぞれ独立に示す。
(i) 左側の不等式の証明
$f(x) = \log(1+x) - \log x - \frac{1}{1+x}$ とおく。
$x>0$ において $f(x)$ を微分すると、
$$ f'(x) = \frac{1}{1+x} - \frac{1}{x} + \frac{1}{(1+x)^2} $$
通分して整理すると、
$$ f'(x) = \frac{x(1+x) - (1+x)^2 + x}{x(1+x)^2} = -\frac{1}{x(1+x)^2} $$
$x>0$ のとき $f'(x) < 0$ であるから、$f(x)$ は単調に減少する。
ここで、$x \to \infty$ のときの極限を調べると、
$$ \lim_{x \to \infty} f(x) = \lim_{x \to \infty} \left( \log\left(1 + \frac{1}{x}\right) - \frac{1}{1+x} \right) = \log 1 - 0 = 0 $$
関数は単調減少し、かつ極限値が $0$ に収束するため、$x>0$ において常に $f(x) > 0$ が成り立つ。
よって、$\frac{1}{1+x} < \log(1+x) - \log x$ が示された。
(ii) 右側の不等式の証明
$g(x) = \frac{1}{x} - \log(1+x) + \log x$ とおく。
$x>0$ において $g(x)$ を微分すると、
$$ g'(x) = -\frac{1}{x^2} - \frac{1}{1+x} + \frac{1}{x} $$
通分して整理すると、
$$ g'(x) = \frac{-(1+x) - x^2 + x(1+x)}{x^2(1+x)} = -\frac{1}{x^2(1+x)} $$
$x>0$ のとき $g'(x) < 0$ であるから、$g(x)$ は単調に減少する。
ここで、$x \to \infty$ のときの極限を調べると、
$$ \lim_{x \to \infty} g(x) = \lim_{x \to \infty} \left( \frac{1}{x} - \log\left(1 + \frac{1}{x}\right) \right) = 0 - \log 1 = 0 $$
関数は単調減少し、かつ極限値が $0$ に収束するため、$x>0$ において常に $g(x) > 0$ が成り立つ。
よって、$\log(1+x) - \log x < \frac{1}{x}$ が示された。
(i) および (ii) より、$\frac{1}{1+x} < \log(1+x) - \log x < \frac{1}{x}$ が示された。
解説
$\log(x+1) - \log x$ のような関数値の差の形を見たときに、「平均値の定理」や「定積分(面積)」を連想できるかが本問の鍵である。
微分して関数の増減を調べる方法(解法3)は汎用性が高く確実な手法であるが、漸近線の評価を含める必要があるためやや手間がかかる。一方、解法1や解法2のような視点を持てると、記述量が大幅に削減され、計算ミスを防ぎやすくなる。特に解法2の面積比較は、視覚的にも納得しやすく応用範囲が広い定石である。
答え
指定された不等式 $\frac{1}{1+x} < \log(1+x) - \log x < \frac{1}{x}$ が成り立つことが証明された。
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