数学3 接線・不等式 問題 44 解説

方針・初手
(1) は、両辺の差をとって関数 $f(x) = x \log x - (x - 1) \log (x + 1)$ とおき、微分して増減を調べる方針が基本である。第1次導関数の符号が直ちには分からないため、第2次導関数まで求めて極限を利用する必要がある。あるいは、不等式を同値変形して扱いやすい関数の単調性の問題に帰着させる手法も有効である。
(2) は、自然数 $n$ に関する命題であるため、数学的帰納法の利用が有力である。(1) で証明した不等式が、帰納法のステップ $n=k \to k+1$ においてどのように利用できるかを見抜くことが鍵となる。
解法1
(1)
$$f(x) = x \log x - (x - 1) \log (x + 1)$$
とおき、$x \geqq 1$ における $f(x)$ の増減を調べる。$f(x)$ を $x$ で微分すると、
$$f'(x) = 1 \cdot \log x + x \cdot \frac{1}{x} - \left\{ 1 \cdot \log (x + 1) + (x - 1) \cdot \frac{1}{x + 1} \right\}$$
$$= \log x + 1 - \log (x + 1) - \frac{x + 1 - 2}{x + 1}$$
$$= \log x - \log (x + 1) + 1 - \left( 1 - \frac{2}{x + 1} \right)$$
$$= \log x - \log (x + 1) + \frac{2}{x + 1}$$
となる。さらに $f'(x)$ を $x$ で微分すると、
$$f''(x) = \frac{1}{x} - \frac{1}{x + 1} - \frac{2}{(x + 1)^2}$$
$$= \frac{x + 1 - x}{x(x + 1)} - \frac{2}{(x + 1)^2}$$
$$= \frac{1}{x(x + 1)} - \frac{2}{(x + 1)^2}$$
$$= \frac{x + 1 - 2x}{x(x + 1)^2}$$
$$= \frac{1 - x}{x(x + 1)^2}$$
となる。$x > 1$ において、$1 - x < 0$ かつ $x(x + 1)^2 > 0$ であるから、$f''(x) < 0$ である。 したがって、$f'(x)$ は $x \geqq 1$ において単調に減少する。
ここで、$x \to \infty$ のときの $f'(x)$ の極限を考えると、
$$\lim_{x \to \infty} f'(x) = \lim_{x \to \infty} \left\{ \log \frac{x}{x + 1} + \frac{2}{x + 1} \right\}$$
$$= \lim_{x \to \infty} \left\{ \log \frac{1}{1 + \frac{1}{x}} + \frac{2}{x + 1} \right\} = \log 1 + 0 = 0$$
となる。$f'(x)$ は $x \geqq 1$ で単調減少し、かつ $x \to \infty$ で $0$ に収束するため、$x \geqq 1$ において常に $f'(x) \geqq 0$(より正確には $f'(x) > 0$)が成り立つ。
よって、$f(x)$ は $x \geqq 1$ において単調に増加する。 また、$f(1) = 1 \cdot \log 1 - 0 \cdot \log 2 = 0$ であるから、$x \geqq 1$ において $f(x) \geqq f(1) = 0$ が成り立つ。 以上より、$x \log x - (x - 1) \log (x + 1) \geqq 0$ すなわち、
$$x \log x \geqq (x - 1) \log (x + 1)$$
が示された。
(2)
$(n!)^2 \geqq n^n$ を数学的帰納法により証明する。
(i) $n = 1$ のとき 左辺 $= (1!)^2 = 1$、右辺 $= 1^1 = 1$ となり、両辺が等しくなるため成立する。
(ii) $n = k$ ($k$ は自然数) のとき $(k!)^2 \geqq k^k$ が成り立つと仮定する。
$n = k + 1$ のときの左辺を考えると、
$$\{(k + 1)!\}^2 = (k + 1)^2 (k!)^2$$
帰納法の仮定 $(k!)^2 \geqq k^k$ を用いると、
$$(k + 1)^2 (k!)^2 \geqq (k + 1)^2 k^k$$
となる。ここで、(1) で示した不等式において $x = k \geqq 1$ とすると、
$$k \log k \geqq (k - 1) \log (k + 1)$$
$$\log k^k \geqq \log (k + 1)^{k - 1}$$
底の $e$ は $1$ より大きいので、真数の大小関係も一致し、
$$k^k \geqq (k + 1)^{k - 1}$$
が成り立つ。これを先ほどの式に適用すると、
$$(k + 1)^2 k^k \geqq (k + 1)^2 (k + 1)^{k - 1} = (k + 1)^{k + 1}$$
したがって、$\{(k + 1)!\}^2 \geqq (k + 1)^{k + 1}$ となり、$n = k + 1$ のときも不等式が成り立つ。
(i), (ii) より、すべての自然数 $n$ に対して $(n!)^2 \geqq n^n$ が成り立つ。
解法2
(1)の別解
$x = 1$ のとき、両辺はともに $0$ となり成立する。 $x > 1$ のとき、示すべき不等式の両辺を $x(x - 1) > 0$ で割ると、
$$\frac{\log x}{x - 1} \geqq \frac{\log (x + 1)}{x}$$
となる。したがって、関数 $g(x) = \frac{\log x}{x - 1}$ ($x > 1$) が単調減少であることを示せばよい。$g(x)$ を微分すると、
$$g'(x) = \frac{\frac{1}{x} \cdot (x - 1) - \log x \cdot 1}{(x - 1)^2} = \frac{x - 1 - x \log x}{x(x - 1)^2}$$
ここで、分子の関数を $h(x) = x - 1 - x \log x$ ($x > 1$) とおく。
$$h'(x) = 1 - \left( 1 \cdot \log x + x \cdot \frac{1}{x} \right) = - \log x$$
$x > 1$ のとき、$\log x > 0$ であるから $h'(x) < 0$ となり、$h(x)$ は単調に減少する。 さらに $h(1) = 0$ であるから、$x > 1$ において $h(x) < 0$ である。
これより、$g'(x) < 0$ となり、$g(x)$ は $x > 1$ において単調減少する。 したがって、$g(x) > g(x + 1)$ が成り立つので、
$$\frac{\log x}{x - 1} > \frac{\log (x + 1)}{x}$$
両辺に $x(x - 1) > 0$ を掛けて、
$$x \log x > (x - 1) \log (x + 1)$$
$x = 1$ のときと合わせて、$x \geqq 1$ において $x \log x \geqq (x - 1) \log (x + 1)$ が示された。
解説
(1) は不等式の証明の定石通りに関数の増減を調べる問題であるが、一度の微分では導関数の符号が判定できない。このような場合は、第2次導関数まで求めて導関数の増減を調べ、極限値などを手掛かりにして符号を確定させる手法が典型的なアプローチとなる。解法2のように、式を整理して規則性を見出し、単一の関数の単調性を示す形に帰着させると、計算の見通しが良くなる。
(2) は (1) の結果をどのように生かすかがポイントである。(1)の不等式から対数を外し $k^k \geqq (k+1)^{k-1}$ という関係を導くことができれば、数学的帰納法の仮定を適用した後の式変形がスムーズに行える。前の設問が次の設問のヒントになっているという、大学入試における誘導の基本構造を理解しておくことが重要である。
答え
(1) 略(解答中の通り示された)
(2) 略(解答中の通り示された)
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