数学3 接線・不等式 問題 57 解説

方針・初手
(1)は、示したい不等式を移項し、差の関数 $F(x) \geqq 0$ を証明する。$F(x)$ を微分し、平均値の定理を適用して導関数の符号を調べることで増減表の概形を捉える。 (2)は、(1)の誘導に乗るために、関数 $f(x) = \sin x - \sin^3 x$ について、与えられた区間で $f''(x) \leqq 0$ となることを確認し、(1)で示した不等式に代入する。 (3)は、被積分関数が複雑で直接積分できないため、(2)の不等式を用いて積分しやすい関数で上から評価し、はさみうちの原理を利用して極限を求める。
解法1
(1)
示したい不等式の右辺を移項した関数を $F(x)$ とおく。
$$F(x) = f(x) - \left\{ \frac{f(b) - f(a)}{b - a}(x - a) + f(a) \right\}$$
閉区間 $[a, b]$ において常に $F(x) \geqq 0$ であることを示せばよい。 $F(x)$ を $x$ について微分すると、
$$F'(x) = f'(x) - \frac{f(b) - f(a)}{b - a}$$
関数 $f(x)$ は閉区間 $[a, b]$ で連続、開区間 $(a, b)$ で微分可能であるから、平均値の定理より、
$$\frac{f(b) - f(a)}{b - a} = f'(c) \quad (a < c < b)$$
を満たす実数 $c$ が存在する。これを用いると、導関数は以下のように表せる。
$$F'(x) = f'(x) - f'(c)$$
また、仮定より閉区間 $[a, b]$ において常に $f''(x) \leqq 0$ であるため、$f'(x)$ は単調減少する関数である。 したがって、$x$ と $c$ の大小関係から $F'(x)$ の符号が分かる。 $a \leqq x < c$ のとき、$f'(x) \geqq f'(c)$ より $F'(x) \geqq 0$ となり、$F(x)$ は単調増加する。 $c < x \leqq b$ のとき、$f'(x) \leqq f'(c)$ より $F'(x) \leqq 0$ となり、$F(x)$ は単調減少する。 さらに、区間の両端 $x=a$ および $x=b$ における $F(x)$ の値を調べると、
$$F(a) = f(a) - f(a) = 0$$
$$F(b) = f(b) - f(b) = 0$$
である。以上より、$F(x)$ は区間 $[a, c]$ で $0$ から単調に増加し、区間 $[c, b]$ で単調に減少して $0$ になる。 よって、閉区間 $[a, b]$ 全体において常に $F(x) \geqq 0$ が成り立つ。 すなわち、
$$\frac{f(b) - f(a)}{b - a}(x - a) + f(a) \leqq f(x)$$
が示された。
(2)
$f(x) = \sin x - \sin^3 x$ とおく。 $0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{4}$ において $f''(x)$ を計算する。
$$f'(x) = \cos x - 3\sin^2 x \cos x$$
$$f''(x) = -\sin x - \left( 6\sin x \cos^2 x - 3\sin^3 x \right)$$
$\cos^2 x = 1 - \sin^2 x$ を代入して整理すると、
$$f''(x) = -\sin x - 6\sin x(1 - \sin^2 x) + 3\sin^3 x$$
$$f''(x) = 9\sin^3 x - 7\sin x = \sin x (9\sin^2 x - 7)$$
ここで、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{4}$ において、$0 \leqq \sin x \leqq \frac{1}{\sqrt{2}}$ であるから、
$$0 \leqq \sin^2 x \leqq \frac{1}{2}$$
よって、かっこの中は $9\sin^2 x - 7 \leqq \frac{9}{2} - 7 = -\frac{5}{2} < 0$ となる。 また $\sin x \geqq 0$ であるから、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{4}$ の範囲で常に $f''(x) \leqq 0$ が成り立つ。 したがって、閉区間 $\left[0, \frac{\pi}{4}\right]$ において(1)の結果を適用できる。 $a = 0, b = \frac{\pi}{4}$ とすると、
$$\frac{f(\frac{\pi}{4}) - f(0)}{\frac{\pi}{4} - 0}(x - 0) + f(0) \leqq f(x)$$
ここで、
$$f(0) = 0$$
$$f\left(\frac{\pi}{4}\right) = \sin\frac{\pi}{4} - \sin^3\frac{\pi}{4} = \frac{1}{\sqrt{2}} - \left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^3 = \frac{1}{\sqrt{2}} - \frac{1}{2\sqrt{2}} = \frac{1}{2\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{4}$$
であるから、左辺の1次式の傾きは
$$\frac{f(\frac{\pi}{4}) - f(0)}{\frac{\pi}{4} - 0} = \frac{\frac{\sqrt{2}}{4}}{\frac{\pi}{4}} = \frac{\sqrt{2}}{\pi}$$
となる。これらを不等式に代入すると、
$$\frac{\sqrt{2}}{\pi} x \leqq \sin x - \sin^3 x$$
が示された。
(3)
求める極限の定積分を $I_n$ とする。
$$I_n = \int_0^{\frac{\pi}{4}} x e^{-n(\sin x - \sin^3 x)} dx$$
(2)で示した不等式 $\frac{\sqrt{2}}{\pi} x \leqq \sin x - \sin^3 x$ の両辺に $-n \ (n > 0)$ を掛けると、
$$-n(\sin x - \sin^3 x) \leqq -n \frac{\sqrt{2}}{\pi} x$$
底が $e \ (>1)$ の指数をとると、不等号の向きはそのまま保たれ、
$$e^{-n(\sin x - \sin^3 x)} \leqq e^{-n \frac{\sqrt{2}}{\pi} x}$$
$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{4}$ において $x \geqq 0$ であるから、両辺に $x$ を掛けると、
$$0 \leqq x e^{-n(\sin x - \sin^3 x)} \leqq x e^{-n \frac{\sqrt{2}}{\pi} x}$$
各辺を区間 $\left[0, \frac{\pi}{4}\right]$ で定積分すると、
$$0 \leqq I_n \leqq \int_0^{\frac{\pi}{4}} x e^{-n \frac{\sqrt{2}}{\pi} x} dx$$
右辺の積分を部分積分法を用いて計算する。式を簡略化するため $A = \frac{\sqrt{2}}{\pi}$ とおくと、
$$\int_0^{\frac{\pi}{4}} x e^{-n A x} dx = \left[ x \left( \frac{e^{-n A x}}{-n A} \right) \right]_0^{\frac{\pi}{4}} - \int_0^{\frac{\pi}{4}} 1 \cdot \left( \frac{e^{-n A x}}{-n A} \right) dx$$
$$= -\frac{\pi}{4 n A} e^{-n A \frac{\pi}{4}} + \frac{1}{n A} \int_0^{\frac{\pi}{4}} e^{-n A x} dx$$
$$= -\frac{\pi}{4 n A} e^{-n A \frac{\pi}{4}} + \frac{1}{n A} \left[ \frac{e^{-n A x}}{-n A} \right]_0^{\frac{\pi}{4}}$$
$$= -\frac{\pi}{4 n A} e^{-n A \frac{\pi}{4}} - \frac{1}{n^2 A^2} e^{-n A \frac{\pi}{4}} + \frac{1}{n^2 A^2}$$
ここで、$A = \frac{\sqrt{2}}{\pi}$ より $A \frac{\pi}{4} = \frac{\sqrt{2}}{4}$ である。これを代入して整理すると、右辺の式は以下のようになる。
$$-\frac{\pi^2}{4 \sqrt{2} n} e^{-\frac{\sqrt{2}}{4} n} - \frac{\pi^2}{2 n^2} e^{-\frac{\sqrt{2}}{4} n} + \frac{\pi^2}{2 n^2}$$
極限 $n \to \infty$ を考える。$e^{-\frac{\sqrt{2}}{4} n} \to 0$ であり、また $\frac{1}{n} \to 0$、$\frac{1}{n^2} \to 0$ であるから、右辺の極限は
$$0 - 0 + 0 = 0$$
となる。 したがって、はさみうちの原理より、
$$\lim_{n \to \infty} I_n = 0$$
すなわち、
$$\lim_{n \to \infty} \int_0^{\frac{\pi}{4}} x e^{-n(\sin x - \sin^3 x)} dx = 0$$
が示された。
解説
関数の凹凸(第2次導関数の符号)とグラフ上の2点を結ぶ線分の上下関係に関する性質の証明と、それを応用した定積分の極限の評価問題である。 (1)は一般に「上に凸な関数のグラフ上の2点を結ぶ線分は、常にグラフの下側(またはグラフ上)にある」という視覚的にも明らかな凸不等式を、平均値の定理を用いて厳密に証明する。差の関数を作り、導関数の符号変化を追うことが定石である。 (2)は、与えられた関数に対して(1)の条件 $f''(x) \leqq 0$ が成り立つ区間であることを自ら計算して確かめ、(1)の不等式に当てはめる標準的な誘導問題である。 (3)は、複雑な被積分関数を含むため直接積分できない定積分の極限において、(2)の不等式を利用して積分し易い関数($x e^{-cx}$ の形)で上から評価し、はさみうちの原理を適用する頻出の手法である。部分積分を確実に実行する計算力が問われる。
答え
(1)
解説の通り示された。
(2)
解説の通り示された。
(3)
解説の通り示された。
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