北海道大学 1964年 文系 第3問 解説

方針・初手
与えられた二次方程式の左辺が因数分解できないかを確認する。 定数項 $a^3 - 1$ を因数分解した式と、$x$ の係数 $-a(a+2)$ との関連に気付けば、2つの根を $a$ の式で具体的に表すことができる。因数分解に気付けない場合は、二次関数のグラフ(解の配置)を利用して条件を絞る方針をとる。
解法1
与えられた二次方程式は、定数項を因数分解すると次のように変形できる。
$$ x^2 - a(a+2)x + (a-1)(a^2+a+1) = 0 $$
ここで、2つの因数の和を計算すると、
$$ (a-1) + (a^2+a+1) = a^2+2a = a(a+2) $$
となり、$x$ の係数の符号を反転させたものと一致する。したがって、方程式の左辺は次のように因数分解される。
$$ \{x - (a-1)\}\{x - (a^2+a+1)\} = 0 $$
これより、方程式の2つの根は $x = a-1, a^2+a+1$ である。 ここで、2つの根の大小関係を調べるために差をとる。
$$ (a^2+a+1) - (a-1) = a^2+2 $$
$a$ は実数であるから、常に $a^2+2 > 0$ が成り立つ。 よって、2つの根の間には常に $a-1 < a^2+a+1$ の大小関係があり、重解をもつことはない。
(1) 方程式が「ただ1つの正根をもつ」ための条件は、異なる2つの根のうち大きい方が正であり、小さい方が正でない($0$ 以下である)ことである。 すなわち、次の2つの不等式が同時に成り立つことである。
$$ a^2+a+1 > 0 $$
$$ a-1 \le 0 $$
1つ目の不等式について、平方完成すると、
$$ a^2+a+1 = \left(a+\frac{1}{2}\right)^2 + \frac{3}{4} > 0 $$
となり、これはすべての実数 $a$ に対して成り立つ。 したがって、2つ目の不等式のみを考えればよく、これを解いて $a \le 1$ となる。
(2) 方程式の2つの根がともに $4$ より小さいための条件は、大きい方の根が $4$ より小さいことである。
$$ a^2+a+1 < 4 $$
これを整理して、
$$ a^2+a-3 < 0 $$
$a^2+a-3 = 0$ の解は $a = \frac{-1 \pm \sqrt{13}}{2}$ であるから、求める $a$ の範囲は、
$$ \frac{-1-\sqrt{13}}{2} < a < \frac{-1+\sqrt{13}}{2} $$
解法2
因数分解を用いず、解の配置として考える。 $f(x) = x^2 - a(a+2)x + a^3 - 1$ とおく。 放物線 $y = f(x)$ は下に凸であり、その軸の方程式は $x = \frac{a(a+2)}{2}$ である。 方程式 $f(x)=0$ の判別式を $D$ とすると、
$$ \begin{aligned} D &= \{-a(a+2)\}^2 - 4(a^3-1) \\ &= a^4 + 4a^3 + 4a^2 - 4a^3 + 4 \\ &= a^4 + 4a^2 + 4 \\ &= (a^2+2)^2 \end{aligned} $$
すべての実数 $a$ に対して $(a^2+2)^2 > 0$ であるため、$D > 0$ となり、方程式は常に異なる2つの実数解をもつ。
(1) 「ただ1つの正根をもつ」のは、異なる2つの実数解について、以下のいずれかの場合である。
(i) 1つの根が正で、もう1つの根が負の場合 条件は $f(0) < 0$ となることである。
$$ f(0) = a^3 - 1 < 0 $$
実数全体において $a^3 < 1$ を解いて $a < 1$ を得る。
(ii) 1つの根が正で、もう1つの根が $0$ の場合 条件は $f(0) = 0$ かつ「軸が正」となることである。 $f(0) = a^3 - 1 = 0$ より、実数 $a$ は $a = 1$ である。 このとき、軸は $x = \frac{1 \cdot (1+2)}{2} = \frac{3}{2} > 0$ となり、適する。
(i), (ii) を合わせて、求める範囲は $a \le 1$ となる。
(2) 異なる2つの根がともに $4$ より小さい条件は、以下の3つをすべて満たすことである。 (判別式 $D > 0$ はすでに確認済みであるため省略する。)
条件1: 軸が $4$ より小さい
$$ \frac{a(a+2)}{2} < 4 $$
これを整理して $a^2+2a-8 < 0$ となり、$(a+4)(a-2) < 0$ より $-4 < a < 2$ となる。
条件2: $f(4) > 0$
$$ \begin{aligned} f(4) &= 16 - 4a(a+2) + a^3 - 1 \\ &= a^3 - 4a^2 - 8a + 15 > 0 \end{aligned} $$
左辺を $P(a) = a^3 - 4a^2 - 8a + 15$ とおくと、$P(5) = 125 - 100 - 40 + 15 = 0$ であるから、因数定理より $P(a)$ は $a-5$ を因数にもつ。 割り算を行うと、
$$ (a-5)(a^2+a-3) > 0 $$
ここで、$a^2+a-3=0$ の解は $a = \frac{-1 \pm \sqrt{13}}{2}$ である。 $3 < \sqrt{13} < 4$ であることから、$\frac{-1-\sqrt{13}}{2} \approx -2.3$、$\frac{-1+\sqrt{13}}{2} \approx 1.3$ である。 したがって、不等式の解は、
$$ \frac{-1-\sqrt{13}}{2} < a < \frac{-1+\sqrt{13}}{2} \quad \text{または} \quad 5 < a $$
これと、条件1の $-4 < a < 2$ との共通範囲をとる。 大小関係 $-4 < \frac{-1-\sqrt{13}}{2}$ および $\frac{-1+\sqrt{13}}{2} < 2 < 5$ に注意すると、求める範囲は、
$$ \frac{-1-\sqrt{13}}{2} < a < \frac{-1+\sqrt{13}}{2} $$
解説
文字係数の二次方程式において、まずは「因数分解できないか」を疑うことが重要である。本問のように定数項が $a^3-1$ となっている場合、これを $(a-1)(a^2+a+1)$ と分解し、一次の係数との関係を調べると解が明確に求まる。 解法2のように解の配置として処理することも可能であるが、高次不等式の処理が要求されるため計算量が格段に増えてしまう。解を直接求められる場合には、その性質を調べる方針をとる方が圧倒的に見通しが良い。
答え
(1) $a \le 1$ (2) $\frac{-1-\sqrt{13}}{2} < a < \frac{-1+\sqrt{13}}{2}$
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