北海道大学 1964年 文系 第4問 解説

方針・初手
与えられた不等式の分母に根号が含まれているため、まず定義域(根号内が正かつ分母が $0$ でない条件)を確認する。
その後、左辺および右辺をそれぞれ変形して根号をまとめることで、代数的に処理しやすい形に持ち込む。また、パラメータを変数とみなして関数の増減からアプローチすることも有効である。
解法1
まず、不等式が定義されるための条件を求める。 分母に根号があり、かつ分母は $0$ になってはならないため、根号の中身は正である。
$$ a^2 - x^2 > 0 \quad \text{かつ} \quad b^2 - x^2 > 0 $$
$a > 0, b > 0$ であるから、この条件は次のように表される。
$$ -a < x < a \quad \text{かつ} \quad -b < x < b $$
この定義域のもとで、与式の左辺を変形する。 $a - x > 0, a + x > 0$ であることに注意すると、以下のようになる。
$$ \frac{x-a}{\sqrt{a^2-x^2}} = \frac{-(a-x)}{\sqrt{(a-x)(a+x)}} = -\frac{\sqrt{a-x}}{\sqrt{a+x}} = -\sqrt{\frac{a-x}{a+x}} $$
同様に、右辺も変形する。
$$ \frac{x-b}{\sqrt{b^2-x^2}} = -\sqrt{\frac{b-x}{b+x}} $$
したがって、与えられた不等式は次のように書き換えられる。
$$ -\sqrt{\frac{a-x}{a+x}} \geqq -\sqrt{\frac{b-x}{b+x}} $$
両辺に $-1$ を掛けて不等号の向きを反転させる。
$$ \sqrt{\frac{a-x}{a+x}} \leqq \sqrt{\frac{b-x}{b+x}} $$
両辺ともに $0$ 以上であるため、両辺を2乗しても同値性は保たれる。
$$ \frac{a-x}{a+x} \leqq \frac{b-x}{b+x} $$
右辺を左辺に移項して通分する。
$$ \frac{a-x}{a+x} - \frac{b-x}{b+x} \leqq 0 $$
$$ \frac{(a-x)(b+x) - (b-x)(a+x)}{(a+x)(b+x)} \leqq 0 $$
分子を展開して整理する。
$$ (ab + ax - bx - x^2) - (ab - ax + bx - x^2) = 2(a-b)x $$
よって、不等式は次のようになる。
$$ \frac{2(a-b)x}{(a+x)(b+x)} \leqq 0 $$
定義域より $a+x > 0$ かつ $b+x > 0$ であるため、分母は常に正である。したがって、この不等式が成り立つ条件は分子の符号が $0$ 以下になることである。
$$ (a-b)x \leqq 0 $$
ここで、$a$ と $b$ の大小によって場合分けを行う。
(i) $a > b$ のとき
$a - b > 0$ であるから、$x \leqq 0$ となる。 定義域は $-b < x < b$ であるため、これとの共通範囲をとる。
$$ -b < x \leqq 0 $$
(ii) $a < b$ のとき
$a - b < 0$ であるから、$x \geqq 0$ となる。 定義域は $-a < x < a$ であるため、これとの共通範囲をとる。
$$ 0 \leqq x < a $$
解法2
不等式が定義される条件は、解法1と同様に $-a < x < a$ かつ $-b < x < b$ である。 この $x$ を固定し、$t > |x|$ を満たす変数 $t$ についての関数 $f(t)$ を次のように定義する。
$$ f(t) = \frac{x-t}{\sqrt{t^2-x^2}} $$
与えられた不等式は $f(a) \geqq f(b)$ と表すことができる。 関数 $f(t)$ の増減を調べるため、式を変形する。
$$ f(t) = \frac{-(t-x)}{\sqrt{(t-x)(t+x)}} = -\sqrt{\frac{t-x}{t+x}} = -\sqrt{1 - \frac{2x}{t+x}} $$
$t$ が増加するとき、$t+x$ は正の値をとりながら増加するため、$\frac{1}{t+x}$ は減少する。 ここから、$x$ の符号によって $f(t)$ の増減が以下のように変わる。
- $x > 0$ のとき、$-\frac{2x}{t+x}$ は増加する。よって根号内は増加し、$f(t)$ 全体としては単調減少する。
- $x = 0$ のとき、$f(t) = -1$ (定数)となる。
- $x < 0$ のとき、$-\frac{2x}{t+x}$ は減少する。よって根号内は減少し、$f(t)$ 全体としては単調増加する。
これを用いて不等式 $f(a) \geqq f(b)$ を解く。
(i) $a > b$ のとき
$a > b$ において $f(a) \geqq f(b)$ を満たすには、関数 $f(t)$ が単調増加であるか定数でなければならない。 よって $x \leqq 0$ が条件となる。 定義域 $-b < x < b$ と合わせて、$-b < x \leqq 0$ を得る。
(ii) $a < b$ のとき
$a < b$ において $f(a) \geqq f(b)$ を満たすには、関数 $f(t)$ が単調減少であるか定数でなければならない。 よって $x \geqq 0$ が条件となる。 定義域 $-a < x < a$ と合わせて、$0 \leqq x < a$ を得る。
解説
分母に文字を含む不等式を解く際の基本である「定義域の確認」が最大のポイントとなる。安易に分母を払うと同値性が崩れるため、根号をまとめて比の形に持ち込む解法1が堅実な手法である。
また、解法2のように式の形が同じであることに着目し、パラメータを独立変数とみなして関数の増減に帰着させる手法は、計算量を大幅に減らすことができる強力なアプローチである。
答え
$$ \begin{cases} a > b \text{ のとき} & -b < x \leqq 0 \\ a < b \text{ のとき} & 0 \leqq x < a \end{cases} $$
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