北海道大学 1976年 文系 第3問 解説

方針・初手
(1) 絶対値を含む不等式の証明である。両辺が正であることを確認した上で2乗の差をとる方針か、絶対値の性質 $-A < X < A$ を用いて因数分解の形に持ち込む方針が有効である。
(2) 与式から $z$ について解き、(1) の結果を利用して $|z|$ のとり得る値の範囲の絞り込み(必要条件)を行う。さらに、その範囲のすべての値を実際に取り得るか(十分条件)を調べる。
解法1
(1) $|x| < 1, |y| < 1$ より、
$$ |xy| = |x||y| < 1 $$
であるから、$-1 < xy < 1$ となり、$xy + 1 > 0$ である。
証明すべき不等式 $|x+y| < xy+1$ の両辺はともに正であるため、両辺を2乗した不等式 $(x+y)^2 < (xy+1)^2$ を示せばよい。 右辺と左辺の2乗の差をとると、
$$ \begin{aligned} (xy+1)^2 - (x+y)^2 &= x^2 y^2 + 2xy + 1 - (x^2 + 2xy + y^2) \\ &= x^2 y^2 - x^2 - y^2 + 1 \\ &= x^2(y^2 - 1) - (y^2 - 1) \\ &= (x^2 - 1)(y^2 - 1) \end{aligned} $$
ここで、条件 $|x| < 1, |y| < 1$ より $x^2 < 1, y^2 < 1$ であるから、
$$ x^2 - 1 < 0, \quad y^2 - 1 < 0 $$
したがって、
$$ (x^2 - 1)(y^2 - 1) > 0 $$
となり、$(x+y)^2 < (xy+1)^2$ が成り立つ。 $|x+y| \geqq 0$、$xy+1 > 0$ であるから、
$$ |x+y| < xy+1 $$
が成り立つ。(証明終わり)
(2) 与えられた等式 $xyz + x + y + z = 0$ を $z$ について整理すると、
$$ z(xy + 1) = -(x + y) $$
(1) の前半で示した通り、与条件のもとでは $xy + 1 > 0$ であり、$xy + 1 \neq 0$ であるから、両辺を $xy+1$ で割ることができ、
$$ z = - \frac{x+y}{xy+1} $$
となる。この両辺の絶対値をとると、
$$ |z| = \frac{|-(x+y)|}{|xy+1|} = \frac{|x+y|}{xy+1} $$
(1) で証明した不等式 $|x+y| < xy+1$ を用いると、分子よりも分母のほうが真に大きいため、
$$ |z| < 1 $$
を得る。また、絶対値は $0$ 以上の値をとるため、$|z| \geqq 0$ である。したがって、
$$ 0 \leqq |z| < 1 $$
が $|z|$ のとり得る値の範囲の候補となる。
次に、この範囲にある任意の $k$ ($0 \leqq k < 1$) に対して、$|z| = k$ となるような実数 $x, y$ ($|x| < 1, |y| < 1$) が存在することを示す。 $y = 0$ とすると、明らかに $|y| < 1$ を満たし、このとき与えられた等式は $x + z = 0$、すなわち $z = -x$ となる。 $|z| = k$ を満たすには、$x = -k$ (または $x = k$)とすればよい。 $0 \leqq k < 1$ より $|x| = |-k| = k < 1$ となり、$x$ の条件も満たす。
よって、$0 \leqq |z| < 1$ を満たす全ての実数に対して条件を満たす $x, y$ が存在するため、これが求める存在範囲である。
解法2
(1) の別解 $|xy| < 1$ より $xy + 1 > 0$ である。 絶対値の性質より、$|x+y| < xy+1$ を示すには、
$$ -(xy+1) < x+y < xy+1 $$
を示せばよい。 左側の不等式 $-(xy+1) < x+y$ について、
$$ (x+y) + (xy+1) = x+y+xy+1 = (x+1)(y+1) $$
条件 $|x| < 1, |y| < 1$ より $x > -1$ かつ $y > -1$ であるから、$x+1 > 0, y+1 > 0$。 ゆえに $(x+1)(y+1) > 0$ となり、左側の不等式は成り立つ。
右側の不等式 $x+y < xy+1$ について、
$$ (xy+1) - (x+y) = xy-x-y+1 = x(y-1) - (y-1) = (x-1)(y-1) $$
条件より $x < 1$ かつ $y < 1$ であるから、$x-1 < 0, y-1 < 0$。 ゆえに $(x-1)(y-1) > 0$ となり、右側の不等式も成り立つ。
以上より、$-(xy+1) < x+y < xy+1$ が示されたため、$|x+y| < xy+1$ が成り立つ。(証明終わり)
解説
(1) は条件付きの絶対値不等式の典型問題である。両辺が正であることを確認して2乗の差をとる解法1や、絶対値を外して因数分解の形を作る解法2など、基本的な処理を正しく行えるかが問われている。
(2) は (1) の誘導に乗ることで容易に $|z| < 1$ を導くことができるが、ここで終わらせてはならない。「範囲を求めよ」という要求に対しては、値の範囲の限界(必要条件)を求めるだけでなく、その間の値をすべて取り得るか(存在性・十分条件)を確認する必要がある。変数が複数ある場合は、今回のように $y=0$ などと固定して一変数の問題に帰着させることで、存在性の証明がシンプルになる。
答え
(1) (解法1、または解法2のとおり証明される)
(2)
$$ 0 \leqq |z| < 1 $$
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