北海道大学 1979年 文系 第1問 解説

方針・初手
原点を中心とする半径 $r$ の円周上の点をパラメータを用いて表し、行列 $A$ による変換後の点の座標を計算してその軌跡を求める。あるいは、行列 $A$ を基本的な1次変換を表す行列の積に分解し、図形全体がどのように変換されるかを幾何学的に考察する。
解法1
原点を中心とする半径 $r$ の円周上の点 $(x, y)$ は、パラメータ $\phi$ ($0 \leqq \phi < 2\pi$)を用いて、次のように表すことができる。
$$ \begin{cases} x = r \cos \phi \\ y = r \sin \phi \end{cases} $$
この点 $(x, y)$ が行列 $A$ による1次変換で点 $(X, Y)$ にうつるとする。
$$ \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ t \sin \theta & t \cos \theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} r \cos \phi \\ r \sin \phi \end{pmatrix} $$
行列の積を計算し、三角関数の加法定理を用いると、
$$ \begin{aligned} X &= r \cos \theta \cos \phi - r \sin \theta \sin \phi \\ &= r \cos(\theta + \phi) \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} Y &= t r \sin \theta \cos \phi + t r \cos \theta \sin \phi \\ &= t r \sin(\theta + \phi) \end{aligned} $$
ここで、$\alpha = \theta + \phi$ とおくと、$\phi$ が $0 \leqq \phi < 2\pi$ の範囲を動くとき、$\alpha$ も長さ $2\pi$ の区間を動く。したがって、変換後の点 $(X, Y)$ の座標は次のように表される。
$$ \begin{cases} X = r \cos \alpha \\ Y = t r \sin \alpha \end{cases} $$
実数 $t$ の値によって場合分けを行う。
(i) $t \neq 0$ のとき
上の連立方程式から $\alpha$ を消去するために変形する。
$$ \frac{X}{r} = \cos \alpha, \quad \frac{Y}{tr} = \sin \alpha $$
$\cos^2 \alpha + \sin^2 \alpha = 1$ に代入して、
$$ \left( \frac{X}{r} \right)^2 + \left( \frac{Y}{tr} \right)^2 = 1 $$
すなわち、
$$ \frac{X^2}{r^2} + \frac{Y^2}{t^2 r^2} = 1 $$
これは、$x$ 軸上に頂点 $(\pm r, 0)$、$y$ 軸上に頂点 $(0, \pm |t|r)$ をもつ楕円($t = \pm 1$ のときは半径 $r$ の円)を表す。
(ii) $t = 0$ のとき
$X = r \cos \alpha$、$Y = 0$ となる。 $\alpha$ が動くとき、$\cos \alpha$ は $-1 \leqq \cos \alpha \leqq 1$ の値をとるため、$X$ のとり得る範囲は $-r \leqq X \leqq r$ となる。 したがって、これは $x$ 軸上の2点 $(-r, 0)$、$(r, 0)$ を結ぶ線分を表す。
解法2
行列 $A$ は次のように2つの行列の積に分解できる。
$$ A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & t \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{pmatrix} $$
右側の行列は「原点を中心とする角 $\theta$ の回転」を表す1次変換であり、左側の行列は「$x$ 座標を変えずに、$y$ 座標を $t$ 倍する」という $y$ 軸方向の拡大・縮小を表す1次変換である。
原点を中心とする半径 $r$ の円周を $C$ とし、その方程式を $x^2 + y^2 = r^2$ とする。 円 $C$ は原点中心の回転移動に対して不変であるため、右側の行列による変換によって $C$ は $C$ 自身にうつる。
次に、この円 $C$ を左側の行列によって変換する。すなわち、円 $C$ 上の各点の $y$ 座標を $t$ 倍する。
(i) $t \neq 0$ のとき
変換後の点を $(X, Y)$ とすると、$X = x$、$Y = ty$ より $x = X$、$y = \frac{Y}{t}$ となる。これを $C$ の方程式に代入すると、
$$ X^2 + \left( \frac{Y}{t} \right)^2 = r^2 $$
両辺を $r^2$ で割って、
$$ \frac{X^2}{r^2} + \frac{Y^2}{t^2 r^2} = 1 $$
これは楕円($t = \pm 1$ のときは円)を表す。
(ii) $t = 0$ のとき
円 $C$ 上のすべての点は $x$ 座標がそのまま($-r \leqq x \leqq r$)、$y$ 座標が $0$ になる。 したがって、$-r \leqq x \leqq r$ かつ $y=0$ を満たす $x$ 軸上の線分となる。
解説
行列が表す1次変換の幾何学的な意味を問う典型的な問題である。解法2のように、複雑な行列を「回転」と「軸方向の拡大・縮小」という直感的に分かりやすい基本的な行列の積に分解する手法は、変換の全体像を把握するうえで非常に強力である。また、パラメータ表示を用いて軌跡を計算する解法1は、どのような変換に対しても機械的に適用できる汎用性がある。いずれの解法においても、$t=0$ の場合が例外的な図形(線分)になることを見落とさないように注意が必要である。
答え
行列 $A$ による変換によってうつされる図形は以下の通りである。
$t \neq 0$ のとき 方程式 $\frac{x^2}{r^2} + \frac{y^2}{t^2 r^2} = 1$ で表される楕円(ただし、$t = \pm 1$ のときは円)。 図を描く際は、原点を中心とし、$x$ 軸との交点が $(r, 0)$、 $(-r, 0)$、$y$ 軸との交点が $(0, |t|r)$、 $(0, -|t|r)$ となる楕円を作図する。
$t = 0$ のとき 方程式 $y = 0 \ (-r \leqq x \leqq r)$ で表される線分。 図を描く際は、$x$ 軸上の点 $(-r, 0)$ から点 $(r, 0)$ までを結ぶ太い実線を作図する。
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