北海道大学 1988年 文系 第2問 解説

方針・初手
(1) では、変換前の円上の点 $(X, Y)$ と変換後の点 $(x, y)$ の関係式を立てます。行列 $A$ は条件 $a^2+b^2 \neq 0$ より逆行列をもつため、$(X, Y)$ を $(x, y)$ で表して元の円の方程式に代入する方針が基本です。また、行列 $A$ がどのような幾何学的変換(回転と相似拡大)を表すかに着目すると、計算を省略して図形的に導くことも可能です。
(2) では、(1) の結果から曲線 $C$ が円であることがわかるため、その面積 $S$ を $a, b$ の式で表します。与えられた条件 $a+b=2$ を用いて1文字を消去し、2次関数の最小値問題として処理します。
解法1
(1)
円 $x^2+y^2=1$ 上の任意の点を $(X, Y)$ とし、これが行列 $A$ によって点 $(x, y)$ にうつるとする。
$$ \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} $$
条件 $a^2+b^2 \neq 0$ より、行列 $A$ の行列式は $|A| = a^2+b^2 \neq 0$ であるため、逆行列 $A^{-1}$ が存在する。両辺に左から $A^{-1}$ を掛けると、
$$ \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \frac{1}{a^2+b^2} \begin{pmatrix} a & b \\ -b & a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} $$
これより、$X, Y$ はそれぞれ以下のように表される。
$$ \begin{cases} X = \frac{ax+by}{a^2+b^2} \\ Y = \frac{-bx+ay}{a^2+b^2} \end{cases} $$
点 $(X, Y)$ は円 $X^2+Y^2=1$ 上の点であるから、$X^2+Y^2=1$ にこれらを代入して整理する。
$$ \left( \frac{ax+by}{a^2+b^2} \right)^2 + \left( \frac{-bx+ay}{a^2+b^2} \right)^2 = 1 $$
$$ \frac{a^2x^2 + 2abxy + b^2y^2 + b^2x^2 - 2abxy + a^2y^2}{(a^2+b^2)^2} = 1 $$
$$ \frac{(a^2+b^2)(x^2+y^2)}{(a^2+b^2)^2} = 1 $$
$a^2+b^2 \neq 0$ であるから、左辺を約分すると次の方程式を得る。
$$ \frac{x^2+y^2}{a^2+b^2} = 1 $$
$$ x^2+y^2 = a^2+b^2 $$
(2)
(1) の結果より、曲線 $C$ は原点を中心とする半径 $\sqrt{a^2+b^2}$ の円である。よって、その面積 $S$ は次のように表される。
$$ S = \pi (\sqrt{a^2+b^2})^2 = \pi(a^2+b^2) $$
条件 $a+b=2$ より $b = 2-a$ である。これを代入して $S$ を $a$ の関数として表す。
$$ S = \pi \{a^2 + (2-a)^2\} $$
$$ S = \pi (2a^2 - 4a + 4) $$
$$ S = 2\pi (a-1)^2 + 2\pi $$
$a$ は実数全体を動くことができる($a=1$ のとき $b=1$ となり、$a^2+b^2 = 2 \neq 0$ の条件も満たす)。 ゆえに、$S$ は $a=1$ のとき最小値 $2\pi$ をとる。
解法2
(1)
与えられた行列 $A$ は、原点を中心とする相似拡大と回転の合成変換を表す。
$$ A = \sqrt{a^2+b^2} \begin{pmatrix} \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} & \frac{-b}{\sqrt{a^2+b^2}} \\ \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} & \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} \end{pmatrix} $$
ここで、$\cos\theta = \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}$、$\sin\theta = \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}$ を満たす角 $\theta$ をとると、
$$ A = \sqrt{a^2+b^2} \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix} $$
と表せる。すなわち、行列 $A$ が表す1次変換は「原点を中心とする角 $\theta$ の回転」と「原点を中心とする $\sqrt{a^2+b^2}$ 倍の相似拡大」の合成である。
変換前の図形は原点を中心とする半径 $1$ の円 $x^2+y^2=1$ である。円は原点中心の回転によって不変であるため、相似拡大の操作のみが円の大きさの変化に影響を与える。
したがって、変換後の曲線 $C$ は、原点を中心とする半径 $1 \times \sqrt{a^2+b^2} = \sqrt{a^2+b^2}$ の円となる。 その方程式は、
$$ x^2+y^2 = a^2+b^2 $$
(2)
(1) と同様に $S = \pi(a^2+b^2)$ となる。 $a^2+b^2$ の最小値を求めるために、コーシー・シュワルツの不等式を用いる。 実数 $a, b, x, y$ について、不等式 $(x^2+y^2)(a^2+b^2) \geqq (ax+by)^2$ が成り立つ。 ここで $x=1, y=1$ とすると、
$$ (1^2+1^2)(a^2+b^2) \geqq (a \cdot 1 + b \cdot 1)^2 $$
$$ 2(a^2+b^2) \geqq (a+b)^2 $$
条件 $a+b=2$ を右辺に代入すると、
$$ 2(a^2+b^2) \geqq 2^2 = 4 $$
$$ a^2+b^2 \geqq 2 $$
等号成立は $a : b = 1 : 1$ かつ $a+b=2$、すなわち $a=b=1$ のときであり、このとき $a^2+b^2 \neq 0$ も満たす。 よって、$a^2+b^2$ の最小値は $2$ であるから、面積 $S$ の最小値は、
$$ S = \pi \times 2 = 2\pi $$
解説
行列 $\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}$ は、複素数平面における複素数 $a+bi$ の積に対応しており、回転と相似拡大を同時に行う典型的な行列です。この図形的な性質を理解していると、(1) は複雑な計算を回避して直感的に結果を導くことができます(解法2)。
(2) は、条件式を伴う2変数の最小値問題です。条件式 $a+b=2$ が1次式であるため、文字を消去して1変数の2次関数に帰着させるのが最も自然で確実な解法です(解法1)。また、コーシー・シュワルツの不等式や図形的意味($ab$ 平面における直線 $a+b=2$ と原点との距離)を利用するアプローチも有用であり、見通しよく解くことができます。
答え
(1)
$$ x^2+y^2 = a^2+b^2 $$
(2)
$$ 2\pi $$
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