東北大学 1987年 文系 第1問 解説

方針・初手
面積が一次変換でどのように変わるかは行列式で決まる。したがって、まず $\det A$ を求めればよい。
つぎに (2) では、(1) の条件のもとで $(2,-1)$ の像の $x$ 座標を式で表し、制約 $a^2+b^2=1$ のもとで最大化する。
(3) では、(2) で得た $a,b$ に対する行列が回転行列になっていることを用い、正方形の各頂点の像を求めれば図形が分かる。
解法1
(1)
一次変換 $f$ を表す行列は
$$ A=\begin{pmatrix} a & -b\ b & a \end{pmatrix} $$
である。
原点 $O$ を頂点にもつ三角形 $OPQ$ の面積は、ベクトル $\overrightarrow{OP},\overrightarrow{OQ}$ を並べた行列の行列式の絶対値の半分である。したがって、一次変換 $f$ によって三角形の面積は一般に $|\det A|$ 倍される。
よって、任意の三角形 $OPQ$ が面積の等しい三角形にうつるための必要十分条件は
$$ |\det A|=1 $$
である。
ここで
$$ \det A=a^2+b^2 $$
であり、これは常に $0$ 以上であるから、
$$ a^2+b^2=1 $$
が求める条件である。
(2)
点 $(2,-1)$ の像を求めると、
$$ A\begin{pmatrix} 2\ -1 \end{pmatrix} ============= \begin{pmatrix} 2a+b\ 2b-a \end{pmatrix} $$
となる。したがって、求める $x$ 座標は $2a+b$ である。
(1) より制約条件は
$$ a^2+b^2=1 $$
であるから、$2a+b$ の最大値を求めればよい。
Cauchy-Schwarz の不等式より、
$$ (2a+b)^2 \le (2^2+1^2)(a^2+b^2)=5 $$
である。よって
$$ 2a+b \le \sqrt{5} $$
となる。
等号成立は $(a,b)$ が $(2,1)$ に比例するとき、すなわち
$$ (a,b)=\left(\frac{2}{\sqrt{5}},\frac{1}{\sqrt{5}}\right) $$
のときである。
したがって、$x$ 座標が最大となるのは
$$ a=\frac{2}{\sqrt{5}},\quad b=\frac{1}{\sqrt{5}} $$
のときである。
(3)
(2) の結果より、
$$ A= \begin{pmatrix} \frac{2}{\sqrt{5}} & -\frac{1}{\sqrt{5}}\ \frac{1}{\sqrt{5}} & \frac{2}{\sqrt{5}} \end{pmatrix} $$
である。
これは
$$ \cos\theta=\frac{2}{\sqrt{5}},\quad \sin\theta=\frac{1}{\sqrt{5}} $$
をみたす角 $\theta$ に対する回転行列である。したがって、$f$ は原点を中心とする反時計回りの回転である。
各頂点の像を求めると、
$$ f(O)=O=(0,0) $$
$$ f(E_1)=f(1,0)=\left(\frac{2}{\sqrt{5}},\frac{1}{\sqrt{5}}\right) $$
$$ f(E_2)=f(1,1)=\left(\frac{1}{\sqrt{5}},\frac{3}{\sqrt{5}}\right) $$
$$ f(E_3)=f(0,1)=\left(-\frac{1}{\sqrt{5}},\frac{2}{\sqrt{5}}\right) $$
となる。
したがって、正方形 $OE_1E_2E_3$ は、頂点
$$ O,\quad \left(\frac{2}{\sqrt{5}},\frac{1}{\sqrt{5}}\right),\quad \left(\frac{1}{\sqrt{5}},\frac{3}{\sqrt{5}}\right),\quad \left(-\frac{1}{\sqrt{5}},\frac{2}{\sqrt{5}}\right) $$
をもつ正方形にうつる。
すなわち、もとの正方形を原点を中心として反時計回りに $\theta=\tan^{-1}!\left(\frac{1}{2}\right)$ だけ回転した図形である。
解説
この問題の要点は、行列
$$ \begin{pmatrix} a & -b\ b & a \end{pmatrix} $$
が「回転と拡大縮小を同時に表す形」になっていることである。
実際、$\det A=a^2+b^2$ は面積の倍率を表し、これが $1$ なら面積保存である。さらに (2) で得られた $a,b$ は $a^2+b^2=1$ をみたすので、このとき $A$ は純粋な回転行列になる。そのため (3) では図形の形は変わらず、頂点の座標だけ計算すればよい。
答え
$$ \text{**(1)**}\quad a^2+b^2=1 $$
$$ \text{**(2)**}\quad a=\frac{2}{\sqrt{5}},\quad b=\frac{1}{\sqrt{5}} $$
$$ \text{**(3)**}\quad \text{正方形 }OE_1E_2E_3\text{ は、頂点 } O,\ \left(\frac{2}{\sqrt{5}},\frac{1}{\sqrt{5}}\right),\ \left(\frac{1}{\sqrt{5}},\frac{3}{\sqrt{5}}\right),\ \left(-\frac{1}{\sqrt{5}},\frac{2}{\sqrt{5}}\right) \text{ をもつ正方形にうつる。} $$
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