北海道大学 1988年 文系 第1問 解説

方針・初手
(1) 与えられた連立不等式を $y$ について解き、各境界線を図示して領域 $D$ を特定する。境界線の交点を求めておくことで、領域の形状が明確になる。 (2) $k = y + x^2 - 4x$ とおき、$y$ について解いた $y = -x^2 + 4x + k$ が表す放物線と領域 $D$ が共有点をもつような $k$ の範囲を視覚的に捉える方法(図形的手法)と、$k$ を $x, y$ の関数とみなし、領域内の各 $x$ に対して $y$ を動かして最大・最小を考える方法(変数消去・解析的手法)が考えられる。
解法1
(1) 与えられた連立不等式は、以下のように変形できる。
$$ \begin{cases} y \leqq 3 \\ y \geqq -x + 4 \\ y \leqq -2x + 8 \end{cases} $$
境界線となる3直線 $l_1: y = 3$、$l_2: y = -x + 4$、$l_3: y = -2x + 8$ の交点を求める。 $l_1$ と $l_2$ の交点は、$-x + 4 = 3$ より $x = 1$ であるから、点 $(1, 3)$ である。 $l_1$ と $l_3$ の交点は、$-2x + 8 = 3$ より $x = \frac{5}{2}$ であるから、点 $(\frac{5}{2}, 3)$ である。 $l_2$ と $l_3$ の交点は、$-x + 4 = -2x + 8$ より $x = 4$ であるから、点 $(4, 0)$ である。
したがって、領域 $D$ はこれら3点 $(1, 3)$、$(\frac{5}{2}, 3)$、$(4, 0)$ を頂点とする三角形の周および内部である。
(2) $k = y + x^2 - 4x$ とおくと、次のように変形できる。
$$ y = -x^2 + 4x + k = -(x - 2)^2 + 4 + k $$
これを曲線 $C$ とする。曲線 $C$ は上に凸の放物線であり、軸は直線 $x = 2$、頂点は点 $(2, k+4)$ である。 $y$ 切片が $k$ であることから、$k$ の値が増減すると、放物線 $C$ は形を変えずに $y$ 軸方向に平行移動する。 問題は、この放物線 $C$ が領域 $D$ と少なくとも1つの共有点をもつときの $k$ の最大値および最小値を求めることに帰着される。
最大値について
放物線 $C$ を上に平行移動していく($k$ を大きくしていく)とき、領域 $D$ と最後に共有点をもつのは、$C$ が $D$ の上側の境界線または頂点と交わるときである。 領域 $D$ は下に凸の多角形(三角形)であり、放物線 $C$ は上に凸であるから、$C$ が最も上にある状態で $D$ と共有点をもつのは、$D$ の頂点を通るときである。 各頂点を通るときの $k$ の値は、次のように計算できる。 点 $(1, 3)$ を通るとき、$3 = -1 + 4 + k$ より $k = 0$ 点 $(\frac{5}{2}, 3)$ を通るとき、$3 = -\frac{25}{4} + 10 + k$ より $k = -\frac{3}{4}$ 点 $(4, 0)$ を通るとき、$0 = -16 + 16 + k$ より $k = 0$
したがって、$k$ の最大値は $0$ である。
最小値について
放物線 $C$ を下に平行移動していく($k$ を小さくしていく)とき、領域 $D$ と最後に共有点をもつのは、$C$ が $D$ の下側の境界線と接するときである。 $D$ の下側の境界は、直線 $y = -x + 4$ の $1 \leqq x \leqq 4$ の部分である。 放物線 $C$ が直線 $y = -x + 4$ と接する条件は、方程式 $-x^2 + 4x + k = -x + 4$ が重解をもつことである。 整理すると、以下の2次方程式を得る。
$$ x^2 - 5x + 4 - k = 0 $$
この方程式の判別式を $E$ とすると、$E = 0$ となればよい。
$$ E = (-5)^2 - 4(1)(4 - k) = 9 + 4k = 0 $$
これを解くと、$k = -\frac{9}{4}$ となる。 このときの接点の $x$ 座標は、重解 $x = \frac{5}{2}$ となり、これは線分の範囲 $1 \leqq x \leqq 4$ に含まれる。 したがって、接点 $(\frac{5}{2}, \frac{3}{2})$ は領域 $D$ の境界上に存在し、接するときに $k$ は最小となる。 よって、最小値は $-\frac{9}{4}$ である。
解法2
(1) は解法1と同様であるため省略する。
(2) 点 $(x, y)$ が領域 $D$ 内を動くときの $k(x, y) = y + x^2 - 4x$ の最大値と最小値を考える。 領域 $D$ を $x$ についての不等式で表すと、$1 \leqq x \leqq 4$ であり、各 $x$ に対する $y$ のとり得る範囲は、境界線の上下関係から次のようになる。
$$ \begin{cases} -x + 4 \leqq y \leqq 3 & (1 \leqq x \leqq \frac{5}{2} \text{のとき}) \\ -x + 4 \leqq y \leqq -2x + 8 & (\frac{5}{2} \leqq x \leqq 4 \text{のとき}) \end{cases} $$
$x$ を固定して考えると、$k(x, y)$ は $y$ について単調増加(傾き1の1次関数)である。 したがって、$k$ が最大・最小となるのは、それぞれ $y$ が領域内で最大・最小となるときである。
最小値について
$y$ は全区間 $1 \leqq x \leqq 4$ において、下側の境界線 $y = -x + 4$ 上にあるときに最小となる。 このとき、$k$ の値は $x$ のみの関数として次のように表せる。
$$ k = (-x + 4) + x^2 - 4x = x^2 - 5x + 4 = \left( x - \frac{5}{2} \right)^2 - \frac{9}{4} $$
区間 $1 \leqq x \leqq 4$ において、この2次関数は $x = \frac{5}{2}$ のとき頂点となり、最小値 $-\frac{9}{4}$ をとる。
最大値について
$y$ は上側の境界線上にあるときに最大となる。場合分けして $k$ の最大値を調べる。
(i) $1 \leqq x \leqq \frac{5}{2}$ のとき
$y$ は $y = 3$ で最大となる。 このとき、$k = 3 + x^2 - 4x = (x - 2)^2 - 1$ となる。 区間 $1 \leqq x \leqq \frac{5}{2}$ において、この関数は $x = 1$ のとき最大値 $0$ をとる。
(ii) $\frac{5}{2} \leqq x \leqq 4$ のとき
$y$ は $y = -2x + 8$ で最大となる。 このとき、$k = (-2x + 8) + x^2 - 4x = x^2 - 6x + 8 = (x - 3)^2 - 1$ となる。 区間 $\frac{5}{2} \leqq x \leqq 4$ において、この関数は $x = 4$ のとき最大値 $0$ をとる。
(i), (ii) より、$k$ の最大値は $0$ である。
以上より、最大値は $0$、最小値は $-\frac{9}{4}$ である。
解説
本問は「領域における関数の最大・最小」を問う典型問題である。 (1) で不等式が表す領域を正確に図示し、境界の交点を求めることが全ての基礎となる。 (2) のアプローチとしては、大きく分けて2通りの定石が存在する。 1つは、解法1のように求める式を $= k$ とおき、それを $xy$ 平面上の図形(本問では放物線)とみなして領域と共有点をもつ条件を視覚的に調べる方法である。放物線が領域の下側境界と接するときや、頂点を通るときに極値をとるという図形的直感が有効である。 もう1つは、解法2のように $x$ を固定して $y$ の関数として最大・最小を考え、次に残った $x$ についての最大・最小を考える「1文字消去」のアプローチである。この方法は計算と論理で確実に答えに辿り着けるため、図形的直感に自信がない場合や、接点の存在範囲の確認が複雑になる場合に非常に有力な手段となる。
答え
(1) 3点 $(1, 3)$、$(\frac{5}{2}, 3)$、$(4, 0)$ を頂点とする三角形の周および内部。(図は省略) (2) 最大値 $0$、最小値 $-\frac{9}{4}$
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