北海道大学 1996年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) は問題の指示通り、数学的帰納法を用いて証明する。$n=m$ のときの仮定から $n=m+1$ のときの式を導く際、増える項の数が $2^{m+1} - 2^m = 2^m$ 個であることに着目し、それぞれの項を最小の分数で下から評価する。
(2) は(1)の不等式が誘導となっている。「隣り合う項の差が $0$ に収束する」からといって「数列自体が収束する」とは限らないことを示す。調和級数や、増加のペースが徐々に遅くなる関数($\sqrt{n}$ や $\log n$ など)を用いて反例を構成する。
解法1
(1)
証明すべき不等式を次のように定める。
$$ \sum_{k=1}^{2^n} \frac{1}{k} \geqq \frac{n}{2} + 1 \cdots (\ast) $$
(i) $n = 1$ のとき
左辺は、
$$ \sum_{k=1}^{2^1} \frac{1}{k} = 1 + \frac{1}{2} = \frac{3}{2} $$
右辺は、
$$ \frac{1}{2} + 1 = \frac{3}{2} $$
よって、左辺 $\geqq$ 右辺が成り立ち、$n = 1$ のとき $(\ast)$ は成り立つ。
(ii) $n = m$ ($m$ は自然数) のとき、$(\ast)$ が成り立つと仮定する。
すなわち、
$$ \sum_{k=1}^{2^m} \frac{1}{k} \geqq \frac{m}{2} + 1 $$
が成り立つと仮定する。$n = m+1$ のときの $(\ast)$ の左辺を考えると、
$$ \sum_{k=1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} = \sum_{k=1}^{2^m} \frac{1}{k} + \sum_{k=2^m+1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} $$
仮定より、
$$ \sum_{k=1}^{2^m} \frac{1}{k} + \sum_{k=2^m+1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} \geqq \frac{m}{2} + 1 + \sum_{k=2^m+1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} $$
ここで、$\sum_{k=2^m+1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k}$ の各項について考える。$k$ は $2^m+1 \leqq k \leqq 2^{m+1}$ の範囲の整数をとるので、それぞれの項において $\frac{1}{k} \geqq \frac{1}{2^{m+1}}$ が成り立つ。
また、このシグマの項数は $2^{m+1} - 2^m = 2^m (2 - 1) = 2^m$ 個であるから、
$$ \sum_{k=2^m+1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} \geqq 2^m \times \frac{1}{2^{m+1}} = \frac{1}{2} $$
したがって、
$$ \frac{m}{2} + 1 + \sum_{k=2^m+1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} \geqq \frac{m}{2} + 1 + \frac{1}{2} = \frac{m+1}{2} + 1 $$
以上より、
$$ \sum_{k=1}^{2^{m+1}} \frac{1}{k} \geqq \frac{m+1}{2} + 1 $$
となり、$n = m+1$ のときも $(\ast)$ は成り立つ。
(i), (ii) より、数学的帰納法によって、すべての自然数 $n$ について与えられた不等式は成り立つ。(証明終)
(2)
与えられた命題は偽である。
反例として、数列 $\{a_n\}$ を $a_n = \sum_{k=1}^n \frac{1}{k}$ とする。
このとき、
$$ a_{n+1} - a_n = \sum_{k=1}^{n+1} \frac{1}{k} - \sum_{k=1}^n \frac{1}{k} = \frac{1}{n+1} $$
よって、
$$ \lim_{n \to \infty} (a_{n+1} - a_n) = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n+1} = 0 $$
となり、命題の仮定を満たす。
一方で、(1) で証明した不等式より、すべての自然数 $n$ について $a_{2^n} \geqq \frac{n}{2} + 1$ が成り立つ。
$n \to \infty$ のとき、$\frac{n}{2} + 1 \to \infty$ となるため、部分列 $\{a_{2^n}\}$ は正の無限大に発散する。
部分列が発散するので、数列 $\{a_n\}$ 自身も正の無限大に発散し、収束しない。
したがって、命題は偽である。
解法2
(2) の別の反例による解法
与えられた命題は偽である。
反例として、数列 $\{a_n\}$ を $a_n = \sqrt{n}$ とする。
このとき、
$$ a_{n+1} - a_n = \sqrt{n+1} - \sqrt{n} $$
分子の有理化を行うと、
$$ \sqrt{n+1} - \sqrt{n} = \frac{(\sqrt{n+1} - \sqrt{n})(\sqrt{n+1} + \sqrt{n})}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} = \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} $$
よって、
$$ \lim_{n \to \infty} (a_{n+1} - a_n) = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{\sqrt{n+1} + \sqrt{n}} = 0 $$
となり、命題の仮定を満たす。
一方で、
$$ \lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} \sqrt{n} = \infty $$
となるため、数列 $\{a_n\}$ は収束せず、正の無限大に発散する。
したがって、命題は偽である。
解説
(1) は調和級数($\sum \frac{1}{n}$)が発散することを示す有名な手法を、数学的帰納法の形に落とし込んだ問題である。項をグループ化し、各グループの和を下から評価して無限大に発散することを示すアイデアは、大学数学の級数の単元でも頻出する。
(2) は(1)の結論が大きなヒントになっている。直前の小問で扱った $a_n = \sum_{k=1}^n \frac{1}{k}$ を反例として挙げるのが出題者の意図として最も自然である。ただし、「隣接項の差が $0$ に近づくが、数列自体は無限大に発散する」という性質を持つ関数は他にも多数存在する。解法2で示した $a_n = \sqrt{n}$ や、$a_n = \log n$ などは、増加量が徐々に $0$ に近づきながらも無限に増加し続ける代表的な例であり、これらを用いても簡潔に反例を示すことができる。
答え
(1)
$$ \sum_{k=1}^{2^n}\frac{1}{k}\geqq \frac{n}{2}+1 $$
(2) 偽。(理由の例:数列 $a_n = \sum_{k=1}^n \frac{1}{k}$ や $a_n = \sqrt{n}$ は、$\lim_{n \to \infty} (a_{n+1} - a_n) = 0$ を満たすが、数列 $\{a_n\}$ は発散するため。)
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