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北海道大学 2011年 理系 第2問 解説

旧課程/行列・一次変換テーマ/存在証明テーマ/整式の証明
北海道大学 2011年 理系 第2問 解説

方針・初手

行列の累乗に関する証明問題である。2次正方行列であるため、ケーリー・ハミルトンの定理を基本として考察を進める。また、行列の積の行列式について $\det(X^k) = (\det(X))^k$ が成り立つという性質を利用する。

解法1

(1)

任意の2次正方行列 $A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ に対して、ケーリー・ハミルトンの定理より以下が成り立つ。

$$ A^2 - (a+d)A + (ad-bc)E = O $$

条件 (i) より $a+d = 0$ かつ $ad-bc = 0$ である。これらを上式に代入すると、以下の式を得る。

$$ A^2 - 0 \cdot A + 0 \cdot E = O $$

すなわち、$A^2 = O$ となる。 したがって、(i) ならば (ii) である。

(2)

条件 (iii) を仮定する。すなわち、ある自然数 $n$ に対して $A^n = O$ が成り立つ。

この両辺の行列式をとると、以下のようになる。

$$ \det(A^n) = \det(O) $$

零行列の行列式は $0$ であり、また行列式の性質より $\det(A^n) = (\det(A))^n$ であるため、次が成り立つ。

$$ (\det(A))^n = 0 $$

これを満たす実数 $\det(A)$ は $\det(A) = 0$ のみである。 $\det(A) = ad-bc$ であるから、以下が成り立つ。

$$ ad-bc = 0 $$

したがって、(iii) ならば $ad-bc = 0$ である。

(3)

条件 (iii) を仮定する。このとき、(2) の結果より $ad-bc = 0$ が成り立つ。

これをケーリー・ハミルトンの定理の式に代入すると、以下の式を得る。

$$ A^2 - (a+d)A = O $$

すなわち、次のように変形できる。

$$ A^2 = (a+d)A $$

この関係式を用いて、帰納的に $A^k$ を求める。すべての自然数 $k \ge 2$ に対して、以下の式が成り立つことが推測できる。

$$ A^k = (a+d)^{k-1} A $$

(数学的帰納法による確認:$k=2$ のときは成り立ち、$A^m = (a+d)^{m-1} A$ を仮定すると $A^{m+1} = A \cdot A^m = (a+d)^{m-1} A^2 = (a+d)^{m-1}(a+d)A = (a+d)^m A$ となり、すべての自然数 $k \ge 2$ で成立する。)

ここで、条件 (iii) で与えられた自然数 $n$ の値によって場合分けを行う。

(ア) $n = 1$ の場合

$A^1 = O$ より $A = O$ である。 このとき、成分はすべて $0$($a=b=c=d=0$)となるため、$a+d = 0$ が成り立つ。 $ad-bc = 0$ も満たされるため、$a+d = ad-bc = 0$ となり、(i) が成り立つ。

(イ) $n \ge 2$ の場合

先ほど導出した式より、以下が成り立つ。

$$ A^n = (a+d)^{n-1} A $$

条件 (iii) より $A^n = O$ であるから、次の式を得る。

$$ (a+d)^{n-1} A = O $$

ここで、さらに $A$ が零行列かどうかで場合分けをする。

$A = O$ のとき、(ア) と同様に $a=b=c=d=0$ より $a+d = 0$ となる。

$A \neq O$ のとき、行列のスカラー倍が零行列になるためには、スカラー部分が $0$ でなければならない。すなわち、次が成り立つ。

$$ (a+d)^{n-1} = 0 $$

これを解くと、$a+d = 0$ となる。

いずれの場合においても $a+d = 0$ であり、すでに $ad-bc = 0$ が示されているため、以下が成り立つ。

$$ a+d = ad-bc = 0 $$

したがって、(iii) ならば (i) である。

解説

2次正方行列における「べき零行列」(何乗かすると零行列になる行列)の性質を扱う、標準的で重要な問題である。本問の (1) と (3) を合わせると、「$A^n = O$ となる自然数 $n$ が存在するならば、$A^2 = O$ が成り立つ」という事実が示されたことになる。

(2) では行列式の性質 $\det(XY) = \det(X)\det(Y)$ を用いると簡潔に示せる。(3) ではケーリー・ハミルトンの定理を用いて次数下げを行い、$A^n$ を $A$ の1次式で表すという定石の処理が要求される。その際、$n=1$ の場合や $A=O$ となる場合などの例外処理を落とさないよう注意が必要である。

答え

(1) 条件 (i) ならば $A^2=O$ である。

(2) 条件 (iii) ならば $ad-bc=0$ である。

(3) 条件 (iii) ならば $a+d=ad-bc=0$ である。

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