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北海道大学 2010年 理系 第2問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/式と証明テーマ/存在証明テーマ/整式の証明
北海道大学 2010年 理系 第2問 解説

方針・初手

(1) は与えられた等式を変形し、逆行列の定義である $AX = XA = E$ を満たす行列 $X$ を見つけることを目指す。

(2) はケーリー・ハミルトンの定理から得られる式と、与えられた等式を見比べて次数を下げる定石を用いる。その際、$A$ が単位行列の定数倍($A = kE$)となる場合について、成分が実数であるという条件を用いて矛盾を導く論理構成に注意する。

(3)(1) で求めた逆行列の表式と、問題で与えられた逆行列の成分表示を等置して各成分の条件を出し、(2) の結果と連立して解く。

解法1

(1)

与えられた等式 $A^2 - A + E = O$ を変形すると、

$$ A - A^2 = E $$

$$ A(E - A) = E $$

となる。また、同じ等式から、

$$ (E - A)A = E - A^2 = E $$

も成り立つ。したがって、

$$ A(E - A) = (E - A)A = E $$

が成り立つので、$A$ は逆行列をもち、その逆行列は $A^{-1} = E - A$ であることが示された。

(2)

ケーリー・ハミルトンの定理より、

$$ A^2 - (a+d)A + (ad-bc)E = O $$

が成り立つ。一方、与えられた条件より、

$$ A^2 - A + E = O $$

である。この2つの式の辺々を引くと、

$$ (1 - a - d)A + (ad - bc - 1)E = O $$

となる。

ここで、$1 - a - d \neq 0$ であると仮定する。このとき、$A$ は

$$ A = - \frac{ad - bc - 1}{1 - a - d} E $$

と表すことができ、$A = kE$ ($k$ は実数)の形になる。これを与えられた等式 $A^2 - A + E = O$ に代入すると、

$$ k^2E - kE + E = O $$

$$ (k^2 - k + 1)E = O $$

となる。$E \neq O$ であるから、

$$ k^2 - k + 1 = 0 $$

でなければならない。しかし、

$$ k^2 - k + 1 = \left( k - \frac{1}{2} \right)^2 + \frac{3}{4} > 0 $$

であり、これを満たす実数 $k$ は存在しない。これは行列 $A$ の成分が実数であることに矛盾する。

したがって、$1 - a - d = 0$ でなければならない。このとき、先の式は

$$ (ad - bc - 1)E = O $$

となるので、$ad - bc - 1 = 0$ も成り立つ。以上より、

$$ a+d = 1, \quad ad-bc = 1 $$

である。

(3)

(1) の結果より $A^{-1} = E - A$ である。これを成分で計算すると、

$$ E - A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1-a & -b \\ -c & 1-d \end{pmatrix} $$

となる。問題の条件より $A^{-1} = \begin{pmatrix} a & c \\ b & d \end{pmatrix}$ であるから、

$$ \begin{pmatrix} 1-a & -b \\ -c & 1-d \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & c \\ b & d \end{pmatrix} $$

が成り立つ。各成分を比較して、以下の関係式を得る。

$$ \begin{aligned} 1-a &= a \\ -b &= c \\ -c &= b \\ 1-d &= d \end{aligned} $$

これらを解くと、$a = \frac{1}{2}$、$d = \frac{1}{2}$、$c = -b$ となる。

次に、(2) の結果である $ad - bc = 1$ にこれらを代入すると、

$$ \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2} - b(-b) = 1 $$

$$ \frac{1}{4} + b^2 = 1 $$

$$ b^2 = \frac{3}{4} $$

となる。条件より $b > 0$ であるから、

$$ b = \frac{\sqrt{3}}{2} $$

である。このとき、$c = -b = -\frac{\sqrt{3}}{2}$ となる。

したがって、求める行列 $A$ は、

$$ A = \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix} $$

である。

解説

(1) は、多項式で表された行列の等式から逆行列の存在を示す典型問題である。$A$ をくくり出して $AX = XA = E$ の形を作る操作は確実におさえておきたい。

(2) は、ケーリー・ハミルトンの定理を用いて次数を下げる標準的な手法を用いるが、$A$ と $E$ が一次独立であるかどうか($A$ が単位行列の定数倍にならないこと)を、実数条件を利用して厳密に論証する手順がポイントとなる。ここで論理の飛躍がないように注意して記述する必要がある。

(3) は、導出した条件を成分比較によって連立方程式に落とし込む素直な計算問題である。求まった行列 $A$ が原点回りの $-60^{\circ}$ の回転行列を表していることも、幾何学的な背景として興味深い。

答え

(1) $A$ は逆行列をもつ。

(2) $a+d = 1, \quad ad-bc = 1$

(3) $A = \begin{pmatrix} \frac{1}{2} & \frac{\sqrt{3}}{2} \\ -\frac{\sqrt{3}}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix}$

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