京都大学 1989年 文系 第2問 解説

方針・初手
与えられた文章の条件を数式で表す。 5つの変数をそのまま扱うと煩雑になるため、「5つの数の和」をひとつの文字で置く、または「5つの数のうちの最大値」に注目する、といった全体を俯瞰する視点を持つと見通しが良くなる。
解法1
5つの実数の和を $S = a_1 + a_2 + a_3 + a_4 + a_5$ とおく。 条件「どの $a_i$ も他の四つの相加平均より大きくはない」より、各 $i \ (1 \leqq i \leqq 5)$ について以下の不等式が成り立つ。
$$ a_i \leqq \frac{S - a_i}{4} $$
この式の両辺に $4$ を掛けて整理する。
$$ 4a_i \leqq S - a_i $$
$$ 5a_i \leqq S $$
これが $i = 1, 2, 3, 4, 5$ のすべてで成り立つので、辺々を足し合わせると、
$$ \sum_{i=1}^5 5a_i \leqq \sum_{i=1}^5 S $$
$$ 5(a_1 + a_2 + a_3 + a_4 + a_5) \leqq 5S $$
$$ 5S \leqq 5S $$
この結果は、元の5つの不等式 $5a_i \leqq S$ において、1つでも真の不等号($<$)が成り立つものがあれば、全体として $5S < 5S$ となり矛盾することを示している。 したがって、すべての $i$ において等号が成立しなければならない。 すなわち、
$$ 5a_1 = S, \quad 5a_2 = S, \quad 5a_3 = S, \quad 5a_4 = S, \quad 5a_5 = S $$
よって、
$$ a_1 = a_2 = a_3 = a_4 = a_5 $$
であることが必要である。 逆に、$a_1 = a_2 = a_3 = a_4 = a_5 = k$ ($k$ は実数)のとき、任意の $a_i$ は $k$ であり、他の4つの相加平均も $\frac{4k}{4} = k$ となるため、条件 $a_i \leqq k$ を常に満たす(等号成立)。
解法2
5つの実数 $a_1, a_2, a_3, a_4, a_5$ のうち、最大であるものを $M$ とする。 文字の対称性から、一般性を失うことなく $a_1 = M$ と仮定してよい。 このとき、最大値の定義から
$$ a_2 \leqq M, \quad a_3 \leqq M, \quad a_4 \leqq M, \quad a_5 \leqq M $$
が成り立つ。 問題の条件より、$a_1$ は他の4つの数の相加平均以下であるから、
$$ a_1 \leqq \frac{a_2 + a_3 + a_4 + a_5}{4} $$
が成り立つ。 右辺の分子に先ほどの最大値の不等式を適用すると、
$$ \frac{a_2 + a_3 + a_4 + a_5}{4} \leqq \frac{M + M + M + M}{4} = \frac{4M}{4} = M $$
となる。ここで $a_1 = M$ であるから、これらをまとめると、
$$ M \leqq \frac{a_2 + a_3 + a_4 + a_5}{4} \leqq M $$
両端が $M$ で一致するため、途中の不等号はすべて等号でなければならない。 よって、
$$ a_2 = a_3 = a_4 = a_5 = M $$
が導かれる。 したがって、5つの数はすべて等しくなければならない。 逆に、5つの数がすべて等しいとき、明らかに条件を満たす。
解説
対称な複数文字の不等式を扱う際の典型的なアプローチを問う問題である。 解法1の「和を一定とみる(全体を $S$ とおく)」手法や、解法2の「最大値(または最小値)に着目する」手法は、どちらも変数の数を実質的に減らし、条件を扱いやすくするための強力な考え方である。 必要条件から答えを絞り込んだ後は、必ずその答えが元の条件を満たすこと(十分性)の確認を忘れないようにしよう。
答え
$$ a_1 = a_2 = a_3 = a_4 = a_5 $$
(すべて等しい任意の実数)
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